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読書85 『ロング・アフタヌーン』

   葉真中顕著

少女が保護犬を家に迎えるところから、物語は始まります。犬には虐待を受けたあとがあり、ひどく怯えていました。
少女と犬が心を通わせる話かと思っていたら、そこは近未来で、とんでもない展開になっていきます。

冒頭から圧倒されましたが、これは、五十歳の主婦、多恵が公募新人賞に応募した小説の内容です。
最終選考まで残ったのですが、結果は落選でした。

七年後、編集者の梨帆の元に原稿が届きます。「長い午後」というタイトルで、多恵が書いたものでした。
多恵が学生時代の友人と再会するところから物語ははじまっています。立場が違う、二人の会話はすれ違い、やがて殺意が募っていきます。「いっそのこと、最後にこの女を殺してやろうか」

「長い午後」を読んで、梨帆自身も自分の思いとシンクロしています。
物語の中と現実の話しが交差していきます。どこまでが事実なんだろう。次第に不自然な思考へと・・・。
架空の話と現実との境目がわからず、じわじわ嫌な感じでした。
時代の世相ともリンクしながら、現代女性への抑圧を訴えて、ミステリアスな内容になっています。

高圧的な夫には腹が立つしかありませんでした。
印象に残ったところは、鬱積したものが炸裂して、おそろしい方向にいくところ。現実か架空の話かがわかりません。じわじわと嫌な感じでこわいです。

梨帆の話は、自分が望んだことなのに、結局どうしてほしかったのかな。あんなにショックを受けていたし、梨帆自身、本当にそうしたかったのかな。

本作も、世相を反映しながら、抱える問題を訴えているようでした。
答えは難しいです。

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