緊急事態宣言中に新築戸建てを買ってみた話
私は緊急事態宣言終了2日前である2020年5月4日に新築戸建てを契約した。
つまり、緊急事態宣言中に物件を検討し、契約に至った。
この行為に賛否両論あるのは承知している。
ただ、このようなコロナ禍でマンション以上に戸建需要が高まっているようであるし、在宅ワークが増える中で、家での時間の過ごし方や在り方自体が見直されてきているのは事実である。
この記事は、実際の経験を体験談としてまとめることで、
このコロナ禍での戸建購入を検討している方
にとって、判断材料になることを目的としている。
なお、以前複数回にて体験記としてまとめた通り、大学で上京してから東京で約10年、その後埼玉で約4年の計15年弱を賃貸で住んでいた。
そのため賃貸の良さも経験上よく理解しているつもりであるし、その相違点も踏まえてお話出来ればと思う。
■ どうして緊急事態宣言中に買ったのか
理由①:安かったから
まずこれはきっかけであり、最大の理由になった。
2020年4月7日、東京・埼玉を含む7都道府県に緊急事態宣言が出された。この影響により、完成物件の住宅価格は大きな影響を与えていた。
私はというと、2019年に二人目の子供が産まれ、やや手狭になっていたこともあり、以前から物件購入を検討はしていた。
見学をした不動産屋曰く、ハウスメーカーは完成物件を売らない限りは仕入れも出来ず、それでいて先行不透明な状況の中、一刻も早く物件を手放したいのが実情とのこと。
2月末頃建てられたばかりだったので、まさにコロナの影響が本格化していく中で完成したのであろう。
恐ろしい値引額にそれは如実に表れていた。
ここまで値引されれば、土地の値段は落ちにくいので、最悪将来売っても損は少ないと踏み、検討に本腰を入れることにしたのを覚えている。
理由②:家庭時間を大切にしたいと思ったから
先程のがきっかけとしての理由であるならば、こちらは買うかどうかを検討している中で導き出された理由である。
まず、仕事を家ですることになったが、子供2人が自宅にいて仕事どころではない。
当然机や椅子等の設備充実もそうだが、やはりプライベートと仕事を物理的に区分する意味での仕事部屋は欲しくなった。
また、特に4月中は保育園も登園自粛となっていたので、とにかく家で家族4人で過ごす時間が増えた。
時代の要請もあり、これはしばらく続くことは比較的早い段階で予想していたため、こんな先行不透明な状況だからこそ家族が安心して帰れる場所を作ろうと思うようになった。
■ 購入して初めてわかった賃貸との違い
そんなこんなで購入を本気で検討し、悩み抜いた4月。
検討している物件の設備や金銭面だけでなく、将来のことについて妻と二人で様々な観点から考えた。
そして実際に契約し、住んでみていくつか賃貸と違う点を痛感することになる。
違い①:コストの観点
❶初期費用/イニシャルコスト
購入の場合、初期費用が予想以上にかかった。
初期費用でよく言われるのが頭金であるが、今は一昔前のように何10%も要求されることはないようである。形式上数十万入れただけで済ませた。
また、不動産購入に付随して発生する最低限必要な費用(火災保険、不動産仲介手数料、司法書士登記費用等)は、不動産購入費用とは別にローンを組むことで、一時的な出費を避けることができる。
ここら辺は、現在の貯蓄額とのバランスだろうが、戸建て購入のボリュームゾーンであろう30代の子育て世代なのであれば、手元資金を無理に捻出する必要はないと思う。超低金利時代であるし、住宅ローン控除も適用できる。
問題は、それ以外の設備費用が予想を超えてきた、という話である。
例えば、カーテン。そしてそのためのカーテンレール。
当たり前の話ではあるのだが、付いていない。
賃貸であればカーテンレールは付いていて、カーテンの長さだけ調整するくらいで済んでいたため、あまり気にしたことはなかった。
ある程度コストを抑えたかったので、我が家は基本的にブラインドカーテンで対応し、レールは2階の南向きで日当たりが気になる箇所だけにした。
また、照明関係。
なにせ部屋数が倍増するのであるから、ほっとくと夜真っ暗になる。
特に我が家の場合、1階の吹き抜けを上手く使いたかったため、ファンかライトのどちらを付けるかでかなり悩んだ(結果ライト付きのファンすることになった)。
さらに、空調関係。
部屋数が増えることは、エアコン等の空調を必要とする空間が増えることを意味する。室外機へのダクトは壁に穴を空ける大掛かりな工事になるため、それなりに費用もかさむ。
特に1階は広々としたリビングと吹き抜けの影響により、大型で強力なエアコンを必要することになった。
これに引越し代や棚などの備品がかかったので、合計するとざっと100万は超える金額になってしまった。
戸建てを購入する際は、賃貸では発生しえない設備関係に一時的な支出が出ることは考慮しなければならないと感じた。
❷月々/ランニングコスト
月々のコスト比較は、我が家の場合は月々の支払額では2万円程下がった(別で借りていた駐車場代1万を含む)。
ローンを組む総額や年数によるので一概に比較はできないが、面積が倍近くなったにも関わらず同額以下になったのは成果として大きいように思う。
一般的な例でみれば、同じ平米数であれば購入の方が月々の単純な支払額は低くなる場合が多いはずである。
❸総額/トータルコスト
賃貸と購入(新築+戸建て)のコストをざっと比較してみよう。
賃貸の場合
・初期投資/イニシャルコスト:敷金・礼金・仲介手数料
・月々/ランニングコスト:賃料・共益費
・総額/トータルコスト:【上記+更新料】を【死ぬまで】
購入(新築+戸建て)の場合
・初期投資/イニシャルコスト:設備費用、仲介手数料、不動産取得税
・月々/ランニングコスト:ローン返済+利息、固定資産税
・総額/トータルコスト:【上記+修繕費】を【ローン借入期間(35年等)】
賃貸の問題点は、何といっても総額が見えにくいということだろう。
賃貸で月10万の家賃+更新料(2年に一度1か月分)がかかると仮定すると、
10年:1250万円(=10万×12月×10年+10万×5回)
20年:2500万円(=10万×12月×20年+10万×10回)
50年:6,250万円(=10万×12月×50年+10万×25回)
70年:8,750万円(=10万×12月×70年+10万×35回)
ざっとこれくらいはかかる。
仮計算とはいえ総額が見えるとなかなかのインパクトである。
賃貸の家賃には日々の修繕費や保険代等のプレミアムを含んだ値段設計になっているのだと感じた。
その時々で家族構成に合わせて賃料を増減できるとはいえ、生活水準を下げることはなかなか難しいだろうし、死ぬまでという期間の定めがないことは、1つのリスクにもなるように思う。
これに対し、購入は、期間の限定がある。購入時に必然的に総額と向き合うこととなるため、修繕費のイレギュラー支出はあれど、返済期間と返済後の期間に切り分けて人生のキャッシュフローを考えられるのは1つのメリットだと思う。
なお、このコロナ禍で将来にわたる給料の保障がない中、ローンを組むのが不安という声もあるようであるが、どのみち居住費用は家計に占める割合が多い支出である。
上記のようにコストを3つにわけた上で賃貸と購入を比較し、自身の状況が購入有利と判断したのであればそちらを選択した方が良いように思う。
ちなみにこれは完全に余談であるが、自営業で法人をしている場合、社長自宅を社宅契約(賃貸)にするという節税手法がある。
これを使うと家賃の50%、場合によっては80%以上を会社経費で落とすことが出来るものであり、下手な節税より遥かに効果が大きいため、自分でビジネスをしている場合には賃貸の方が総額でも有利になる場合がある。
(※購入による社宅も可能であるが、金額的に大がかりであり、経験上、資金繰り等の観点から実行可能性が低いため省略させて頂く。)
違い②:家に対する向き合い方
❶賃貸は、その地域に囚われない自由が持てる
賃貸のメリットとしてよく言われるものとして、気軽さ、自由さが挙げられる。
以前の記事のように、各地域を転々とし、色々な街の良さを好きな期間享受できるのもあるし、飽きたら別の街を選ぶこともできる。いい意味で1つの地域に囚われない自由さが持てるように思う。
また、仕事や家庭の状況によって場所を変更する場合も、圧倒的に賃貸は購入に比べて楽だろう。
1点気を付けるとすれば、やはり子供がいる場合であろう。子供がいる場合は、学区の問題等、気軽に引越しは出来なくなる意味で、賃貸のメリットの気軽さは消えてしまいがちになる。
引越しの度に引越し代や棚や収納等の間取りの変更も大がかりになる。
よって、人生の段階によって、その時の自分にあった賃貸を選択していくのがベストと言えよう。
❷購入は、自分の空間をデザインできる自由が持てる
対して購入の場合は、所有することがまず最初にありきで、それによるメリット・デメリットが生じてくるように思う。
自分のモノになる以上、DIY等どうにでも出来る。庭や屋上をどうしようが穴を空けようが自由である。一方で、その責任も全て自分に返ってくるということである。
感覚論で言うならば、賃貸がお付き合いであるならば、購入は結婚である。
その違いは、やはり責任の重さの違いだろう。
雨風が吹けばやはり心配になる。寧ろこの雨風を共に乗り越えようという気にすらなることもある。この感覚は賃貸の時は全くなかった。
■ まとめ
よく言われる「賃貸か購入か」の議論は、結局はポジショントークであることが多く、言う側の正解はあるだろうが、聞く側の正解はない場合が多い。
「犬か猫か」の議論に似ているな、とよく思う。議論の展開もそうであるし、先ほど述べた家に対する向き合い方も、購入は犬の良さが出ているし、賃貸は猫の良さが出ている気がする。
犬と猫を比べるのであれば、それぞれの特徴を比較した上で、どちらが自分自身と家族の今と未来に合うのかを考えて出した結論であれば、それがその人にとっての正解になるように思う。
何を重視するかはそれぞれ皆考えとして異なるし、状況によって異なるものである。
我が家の場合は、今回のコロナが偶然きっかけになり、未来を見つめなおす機会になり、結果、緊急事態宣言真っ只中に購入を決断したわけであるが、以前は何気なく放っていた「ただいま」と「おかえり」の一言を地に足つけて言えるようになったことは小さな成果だと思っている。
今は目先のことに集中しがちで動きが取りづらい状況が続いているが、こんな状況だからこそできることがあるのではないかと考るようになった。
以上、1つの実体験談として必要な方が参考にして頂けると嬉しいです。
長文にお付き合い頂き、ありがとうございました。