読書レビュー『法廷遊戯』
はじめに
こんにちは、Takaです。
今回は、五十嵐律人の『法廷遊戯』を紹介します。
「このミステリーがすごい2021年版」で3位を受賞し、ずっと気になっていた本がやっと文庫本化したため、この度読了しました。評判通りの面白さで、おススメできるミステリーです。
概要
タイトル|法廷遊戯
作者 |五十嵐律人
出版社 |講談社
発売日 |2023/4/14
感想
本作品は、ロースクール時代に行われる疑似裁判『無辜ゲーム』と、その後の弁護士になってから行われる裁判の、二つのパートで構成されています。前半の無辜ゲームはかなりイレギュラーな私的裁判ではあるものの、さすがは現職の弁護士である作者が考えたということで、よくできたゲームである以上に、物語にとてもマッチした設定になっています。読み終わってみると、無辜ゲームの意味が良く理解できます。
実際の推理や謎解きは、後半の殺人事件の裁判が主になります。被害者・容疑者・犯人のいずれも、かなりの驚きの展開が待ち受けています。
本作品の特徴としては、全体的に犯人当てやトリック推理がメインではなく、法的解釈がメインとなります。一見、面倒くさそうな物語に思えますが、かなり読みやすい文章に感じました。内容が新鮮であったことも要因の一つではありますが、必要以上に法律用語が多用されていないことが、その理由かと思います。作者の法律に対する理解度の高さと、テーマが作品の中で一貫しているからだと思います。裁判をテーマにして、あれもこれも手を出すというより、「無罪とは?」という一つのテーマで作品が描かれていたことが、スマートな文章に感じたのかと思います。
少ない登場人物がパズルのように絡み合う作品であるため、読書初心者にもおススメ出来ます。人間関係が複雑になり過ぎないため、「あれ?この人誰だっけ?」ってなりにくいです。それでいてしっかりと重厚な物語に仕上がっているため、ミステリーとしてもしっかり楽しむことの出来る作品です。
おわりに
今回は『法廷遊戯』を紹介しました。
この作品のように、「このミステリーがすごい」に紹介された本の中から、次の一冊を探すことは多々あります。本格ミステリーもあれば、結構軽めの作品まで、いろいろ紹介されているので、個人的には年末の風物詩的に感じています。また2022年版で紹介された『六人の嘘つきな大学生』も近々文庫本化されるので、これも楽しみですね。