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ペルソナの意義を例と共に考え直してみる in 2020

ペルソナは、製品開発のステップとして広く取り入れられています。特にUXデザイン、プロダクトマネジメント、マーケティングの人々は日常業務の一環としてペルソナを作ることがあると思います。しかし、あまりにプロセスの一部として定着しすぎたがために、何も考えずにとりあえずテンプレートのペルソナを作っているだけというケースも多いです。また作ったは良いものの、結局あまり生かされていない場合もよく見受けます。(僕がこれらのケースでした...) 実は最近Twitter等で「ペルソナって本当に価値があるのか?」のような議論がされていたので書きました。

この記事ではペルソナの意義を再考し、価値を最大化する方法について考えていきます。


1. ペルソナとは?

そもそもペルソナとは何なのか?について少しだけ解説したいと思います。ここでは一般的な理解について復習します。もしすでに何度もペルソナを作っている人は次の章に飛んでもらって大丈夫です!

Adobeの説明によるとペルソナは「多数派ユーザーと共通の目的と特徴を持った典型的な人」(和訳) と説明されています。当たり前ですが、僕らはユーザーのためにプロダクトを作ります。しかし、私たちはユーザーではないので何を使いたいのか、何が使いやすいのかは分かりません。そこでユーザーへの理解を深めるために登場するのがペルソナです。一般的には以下の例のように典型的なユーザーを可視化します。

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I. ペルソナの目的

(1). ターゲットユーザーの定義:UXリサーチの調査対象は吟味が必要です。例えば資産管理アプリの調査を学生に行っても意味は薄いかもしれません。ゆえにペルソナを通じて製品の対象ユーザーを明確にする必要があります。

(2). リマインダー:ユーザーの問題解決もしくはユーザーの目的達成支援が製品の存在意義です。ですが、プロセスの中でユーザーを忘れてしまうことが頻繁にあります。そして無駄な機能を足したり、好みでデザインを決めたりしてしまいます。この問題を食い止めるためにペルソナを用意し、常に誰のどんな問題を解決しているのか意識できるようにします。

(3). 知識の共有:デザイナー、営業、PMがそれぞれ違ったルートでユーザーとの接点を持っています。そして各々がユーザーを知ったつもりでいることがよくあります。ここでペルソナを通じて、各々の知識を共有して正しいユーザー像を確立することが必要になります。また知識の蓄積にも繋がります。


II. 載せる情報

上記の例のように典型的なユーザーを実際に存在する人間に見立てて作ります。一般的に含まれる最低限の情報を箇条書きにしました。これらの情報は実際のユーザーやステークホルダーの意見を基に作られます。このポイントについてはあとで議論します。

- 写真・名前
- 特徴(例:27歳OL3年目、東京都出身、営業担当、社交的)
- テクノロジー使用について(例:スマホの使用状況)
- 悩み(例:開封したメッセージの返信を忘れてしまう)
- ゴール(例:複数のアプリ上の返信すべきメッセージを忘れない)
- シナリオ(例:一日の流れ)


III. ペルソナの数

プロダクトによっては複数の典型的ユーザーがいることが考えられます。例えば、Uberにとって「旅行中の細かな移動に使う人」と「都会に住んでいて忙しい時に使う人」は特性が大きく異なります。そこで複数のペルソナを作ることによってどちらの要求にも答えたプロダクトを作ることができます。

ただしペルソナを作りすぎると、全ての要求に答えるために大量の機能を備えた使いづらいプロダクトになってしまうこともあります。理想のペルソナの数は1~4だと思います。


1章ではペルソナにおける一般論について話しました。ペルソナは価値のあるステップだと考えられ、多くの企業で用いられています。しかし近年、ペルソナの価値が疑問視され、最適な使い方について議論されています。


2. ペルソナの意義にまつわる議論

I. ペルソナはできるだけリアルな人にすべき派 v.s. ペルソナには関係ある情報だけ含めばいい派

UXの教科書にはしばしば「より共感できるようにペルソナはリアルにすべき」と書いてあります。確かにリアルな人のように感じることができれば誰のためにデザインしているのかを考えやすいというのは納得です。下記の左の図のようにリアルな名前や写真を与え、年齢や出身地までを明確にすることが推奨されています。

一方で右の図のようにプロダクトに関連する情報だけを含めばいい派もいます。ここでは名前や写真は含めず、職種・特徴・日々のタスクなどが書かれています。僕は関係ある情報だけ含めばいい派です。理由は3つあります。
(1). リアルにするためには年齢や出身地などを根拠なしに仮定しなければいけない。
(2). 関係ない情報にも関わらず「ペルソナは東京出身だからこのデザインにしよう」という発想に繋がり、無意識に他ユーザーを除外してしまう危険がある。
(3). リアルにするためには年齢、出身地などまで載せるため情報過多になってしまう。人間が一度に考慮できる情報は限られているので必要最低限の情報のみで良い。
ゆえに僕は右が好みですが、皆さんはどうですか??

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II. ペルソナを作る時間でプロダクトを作り、市場のリアクションから学んだ方がいいのでは?

多くのテック企業ではとにかくスピード感を持ってプロダクトをリリースすることが正義だとされています。なのでペルソナ作りに時間を割かず、開発にリソースを割くべきという考えです。しかしユーザーのニーズに応えられないプロダクトはもちろんヒットしません。市場で失敗して作り直すより先にユーザーのニーズについて理解することの方が時間短縮に繋がると思います。

もちろんインタビューを設定・実施・分析するのに時間がかかるのは事実です。そこで時間が惜しいのならメンバーのユーザーについての知識を箇条書きでも良いので一箇所にまとめておくといいと思います。そして余裕ができた時にその資料のレベルをリサーチと共に上げていけばいいのかなと考えています。


III. ペルソナのフォーマットはテンプレートを使うべき v.s. 自分で作るべき

Googleで"persona template"と調べると格好いいテンプレートが沢山出てきます。テンプレート派の理由は
(1). 自然とかっこよくでき、結果的に多くの人が読んでくれる
(2). 作る時間を短縮できる
(3). 穴埋め形式になるので情報の漏れを防げる

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一方で僕は毎回フォーマットを自分で作るべきだと思っています。例えば、B2B製品のユーザーを考える上で企業内のチーム編成が大事なのであれば以下のようなチームについて記した図の方が適しているかもしれません。

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もしくは複数タイプのユーザーがいてそれらを比較することに価値があるのなら以下のような表でもいいと思います。

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テンプレートにはこだわらず、どういった情報の見せ方がチームにとって一番価値があるのかを考えてから自分なりのフォーマットを作るべきだと思います。上の二つの図がペルソナと呼べるのかは疑問ですが、「ユーザーへの理解を深め、デザインの参照になるステップ」としての役目は果たせていると思います。


3. 僕が思う正しいペルソナ

このような議論を踏まえて、ペルソナが最も価値を出せる方法について自分なりに考えてみます。模範解答ではないので「こういう風に考える人もいる」程度に受け取ってください笑


I. 特徴・悩み・目的・引用を入れる

特徴・特性(例:大学一年の生物学専攻の中国人留学生)だけでなく、その人の悩み(Painpoints)と目的(Goals)も入れます。その悩みを解消し、目的達成の手助けとなることがプロダクトの価値なので悩み・目的は必須です。また説得力が増すために、図の右上のようにインタビューなどで拾った引用を入れるのも効果的です。

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II. 関連する情報のみを入れる

前章で説明しましたが、リアルなユーザーにするために名前・写真・年齢・出身地など無関係な情報を足すのはNGだと思います。(もし名前や年齢が関係あるならもちろん入れましょう。) 以下の図では、Job role, Tenure, Job task, Proficiencyなどの関係ある情報のみを入れています。また雰囲気を伝えるために写真を入れていますが、あえて顔が見えない&両性別がいる写真にしています。

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III. コンテクスト(文脈)も必ず含むようにする

ペルソナを作る時はそのペルソナがプロダクトと関わる時の文脈も含むようにします。その文脈の中にあるユーザー体験を改善したいので文脈を理解することは必須です。ペルソナと同じページに載せてもいいですし、以下のようにペアの資料にしても良いと思います。

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IV. 常に更新される資料とする

せっかく作ったペルソナが使用されることなく闇に埋もれていくという経験は皆さんもあると思います笑 悩み・目的・文脈などは時間と共に変わっていくのでペルソナは更新し続けることが大事です。弊社ではペルソナの表が社内Wikiページになっており、常に誰でも更新できます。UXデザイナーが管理しつつも、学びがある度に更新されます。また文脈については下記のようなUser journey mapを作り、誰でもコメントできるようにしています。

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 P.S. データ収集方法

この記事の本流ではないですが、そもそもペルソナに載せるデータをどうやって収集するかについて少し触れます。僕は二つの方法があると思います。

I. インタビュー・サーベイ・トラフィック情報などを通じて生のデータを集める。ただ口で言っていることと実際の行動が違うということはよくあるので注意してください。他の注意点として、インタビューの機会は限られていることもあるためチャンスがある時は事前に必要な情報リストをまとめておきます。

II. オフィスの営業、マーケティング、PMなどは多少なりともユーザーについての知識を持っているので議論を通じて偏見を排除しながら共有するようにします。議論の際にはホワイトボードにポイントをまとめるようにして、責任者が後でデジタルファイルにするようにしています。

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末筆

今回の内容は僕が思う理想的なペルソナなので、教科書とは相反する部分もあります。もちろんどちらが正しいかはプロジェクトの目的や状況によると思います。僕の経験上何も考えずとりあえずペルソナを作るというのが一番の悪だと思っているので「何のために作っているのか?」を常に意識するようにしています。がんばっていきましょう!

結果的に教科書ばりの長さになってしまいました。最後まで読んでくれた方ありがとうございます。

「アメリカでUXデザイナーとして働く」という本を書きたいのでぜひサポートお願いします!