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朝からギネス
25年まえ。ダブリン空港からホテルまで乗ったタクシーの運転手が、
ギネスは世界最高のビールさ、パブで飲むギネスはうまいぜ、
と盛んにすすめる。
さらに、行きつけのパブの名前を書いたメモまでくれた。
アイルランドの国民的飲料ともいえるギネスを飲まずして、
この国を語れない。
さっそく醸造所を訪ねた。
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ただようポップの香りにひかれ見学ルートをカット、パブにむかった。
朝10時すぎ、早や3組の先客が黒ビールを楽しんでいる。
朝からギネスか。
さっそく「パイント、プリーズ」。
これぞ本場ものと、じっくりじっくり、味あう―生ぬるい、漆黒の色、にがい味に当惑……
だが、クリーミーな泡のせいか、喉になじんでくる。
古今東西、朝酒は利く。
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栗毛と黒髪の女の子が僕にむかってグラスをかかげ、にっこり。
こちらも応える。
気分がいい。目がうるんできた。
ひげの老人ふたりがグラスをお代わり。
朝から二杯か。
旅を始まったばかりだ、飲みすぎは禁物と一杯で打ちどめ。
が、その昼にギネスをまた飲んでしまった。
漆黒ビールに取りこまれたか。
昼と夜、先ずはギネス一杯と、ほろ酔いアイルランドの旅となった。
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アイリッシュ・ジョーク「酔っぱらいネタ」をひとつ。
医者「うーん、君の病気の原因がはっきり分からん、飲みすぎと思う……」
患者「気にすんなよ、先生が素面のときに、また来るから」