夏目漱石 夢十夜「第五夜」 全5回①
おはようございます。こんにちは。こんばんは。
中高一貫校生のCal bear です。本記事では夏目漱石が書いた
「夢十夜」の第五夜について僕なりの考察を記しました。
そもそも夢十夜とは?
夢十夜とは文豪・夏目漱石が明治41年に執筆した小説です。
その名の通り、10個の夢の話が書かれている作品で
第一夜から第十夜まであります。
一人称で描かれており、「漱石自身が見た夢」という設定になっています。
夢十夜を読みたい人はこちら👇
その10個の中でも今回は第五夜について書きましたが、当初の予想より遥かに長くなってしまいましたので、5回に分けることにしました。
最初に要約はありますが、第五夜の本文を確認しておきたい人は上にリンクから読んでみてください。
短いので5分ぐらいあれば読めると思います。
では、いきましょう
Let's do this
あらすじ
神代に近い(古事記のあたり)時代が夢の舞台。
自分は戦に負け捕虜として敵の大将の前にいる。時間帯は夜で、陣には篝火(かがりび)が煌々と焚かれている。敵の大将は自分に、降参して生き延びるか屈服せずに死ぬか選べと迫る。自分はただ一言死ぬと答えたが、死ぬ前に一目恋人に会いたいと申し出た。
敵の大将は鶏が鳴いて夜が明けるまで待つと言った。
女は繋いでいた駿馬に跨ると一目散に男が捕らえられている陣へと馬を駆った。篝火で薄明るく見える空の方へ荒い鼻息をたてながら馬は駆ける。
すると暗闇の中、鶏の鳴き声がした。女は思わず手綱を控えた。馬の蹄が固い岩の上にしっかりと跡を残した。気を散らされた馬は両膝を折り女諸共前へつんのめった。女は下の深い淵へ落ちて死んだ。
鶏は天探女(あまのじゃく)の声真似だった。蹄の跡がある間は決して天探女を許さない。
▼第五夜漫画版▼
①天邪鬼じゃなくて天探女
「鶏の鳴く真似まねをしたものは天探女(あまのじゃく)である。この蹄の痕あとの岩に刻みつけられている間、天探女は自分の敵かたきである。」本文
あまのじゃくという時、普通は「天邪鬼」の漢字を使います。しかし第五夜では「天探女」と表記されているのです。これは何故か。
その理由を探るためには天探女がどのような存在であるかについて理解する必要があります。
1-1.天探女(あまのさぐめ)とは
天探女とは天稚彦(若日子の表記も)が高天原(神の国)から地上の葦原の中つ国に派遣されたときに供をした神で、悪女として描かれています。
その語源は【探り女】からくるとされており、探偵のような働きがあったのではないかと考えられるとされています。
天稚彦は天神の命で葦原の中つ国を平定しに降臨しました。しかし8年にもわたって報告を怠り、天の神たちは稚彦の謀反を疑います。
事の真相を掴むために神は鳴女と呼ばれる雉を偵察に出すのですが、天探女は天稚彦を唆し雉を射殺させました¹。これにより天稚彦は完全に高天原への反逆者と認定され鳴女を射た矢で自分も殺されたのです²。
その捻くれた性格からか天探女は神でありながら尊称がなく呼び捨てにされていいます。
そして、賢い読者の皆さんは既にお気付きでしょうが天邪鬼のルーツはこの天探女であるとされています。
1-2.天探女にした理由
何故あまのじゃくの漢字を天探女にしたかという話ですが、これは「神代に近い昔」の話だからであると考えられます。
神話や昔話に精通しているわけではないので確証をもっては言えませんが、神代の時代に「あまのじゃく」という存在・概念はまだ無かったためルーツとされる天探女を採用したのではないかと考えました。
第1回参考文献
第1回はこれで終わりです。
第2回はこちら
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Cal bear