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稟議書 〜決裁・報告・方針伺の区別の重要性〜

“メガバンクとメガベンチャーの経営企画で学んだ99のこと“その3

メガバンクのような伝統的企業に入ると“稟議書“を書かされることが多い。

組織のレイヤーの下の者が上の者に“稟議“する、すなわち、書類によって決裁を仰ぐ方法だ。新人や若いうちはこの稟議書を承認してもらえないどころか、そもそも読んでもらえない、何度もドラフトを直されるという経験はどの銀行員にもあるものだ。“あの次長は千本ノックで有名だから“などの会話がよくなされるのである。

若手時代の苦い経験として残る稟議書だが、私のようにメガベンチャーに転職してみたりすると、若いうちに経験しておいて本当によかったと思わされるものでもある。

なぜよかったのか?
それは、1) 書類や会議の目的を明確にするということを学べる、2) 決裁をしてもらうためにはどのように筋道立てて説明しなければいけないかのトレーニングになる、3) 同じ資料や内容であってもタイミングややり方によって上司の反応は異なることを学べる、からだ。

1) 書類や会議の目的を明確にする→ゴールの共有

どの会社でも多分そうだと思うのだが、稟議書は読む側の効率も考えて、フォーマットが決まっていることが多い。そして、細かい表現の違いこそあれど、最初にその稟議が“決裁・報告・方針伺“のいずれかであるかを示すようになっている。これにより読む側はこれで決裁を求められているのか、あるいは単なる情報共有なのか、これから進む方向性のアラインなのかを理解することができる。
組織の中でのレイヤーが上になって行くとわかるのだが、上司は“(忙しい)私にこの書類を読ませる(あるいは会議に出席させる)というのはどういう判断をして欲しいからなんだ?“と思うようになる。偉くなればなるほど、決断するために存在しているからだ。

ところが、新人や若手はそれがわかりにくい。自分のやりたいことを語り続けてしまったり、言われたことを延々伝書鳩のように報告してしまったりする。

若いうちに稟議書に慣れた優秀な銀行員や元銀行員は、それを無意識にできるレベルまでなっていて、書類だろうが会議だろうがちょっとした会話だろうが、最初にこの目的は決裁・報告・方針伺のいずれかであることを上司に伝え(明示的な場合も暗にという場合もある)、ゴールを共有してから話を進めることができるのだ。

2) 決裁してもらうための筋道立てた説明をする→ゴールからプロセスを逆算することにつながる

ゴールが共有できれば、そこからそのゴール、すなわち自分の企画に予算をつけてもらうことだったり、プロジェクトを進める大きな方向性を握る、だったりしてもらうためには何を納得してもらうのかを自然と考えるようになる。

多くの場合、環境認識、自社や競合の状況、差別化、時間軸(どのようなタイムラインでやるのか)、リスク分析等を含むことになるだろう。ここはいろんなフレームワークが考えられるが基本的には5W1Hが考えられていればいいと思う。あとは必要に応じて、SWOTや3C/4Pなどを使えば良い。大事なことはゴールに至る必要十分なコンテンツをもれなく考えることだ。(この辺りは別途何処かで書きたい)

3) お諮りするタイミングややり方を考える→(広義での)プレゼンテーションを考える

最後に意外と重要で見落としがちなのだが、上司もまた人間であり、忙しさの状況などで同じ内容を持って行っても反応が違うことがままあるということだ。

どんなにいい内容を作っても、読んで(聞いて)もらえなければ仕方ないし、読んでもらい自分の導きたい方向に進めなければ意味がない。だからこそ、いろんな工夫を考えるのだ。

例えば、上司の仕事の進め方。多くの優秀な人が午前中は集中して作業する時間、午後は資料などを読み込む時間やミーティングに当てるなど時間の使い方を分けていたりする。そのため、人によっては午前中に稟議書を持って行っても、“Boxに入れておいて“となってしまうことも多い。個人的には午後のランチ後の眠い時間は避けたりしていた。(もちろん人による)

また、当然だが機嫌が良さそうな時を狙うのも有効だ。人間なのでだいたい観察していればその日機嫌が良いか悪いかはわかる。本来は機嫌で判断してはいけないが、上司に聖人君子を求めてはいけない。

直接説明しながら話すか、じっくり読んでもらうかも使い分けだ。いずれにしても内容によって最適なプレゼンテーションを考えるのが重要だ。

以上書いてきたが、稟議書は年長になればなるほど読む方が多くなり書く経験は減っていく。銀行時代に回覧すべき役席が多すぎて、印鑑を押す欄が15個くらいになった等、無駄な武勇伝ではあるが、そうした稟議書を書く苦労は買ってでもすることをお勧めしたい。

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