(4) 暫しの間、無職となる(2024.4改)
3月25日 都議会の会期終了とともに都議の職をモリが辞す。
養女と養女候補、そしてその母親達が議会の傍聴席にいたのだが、「元教え子と父兄」としてメディアに括られて記事となり、花束を渡す写真を撮られて顔をボカされた娘達は憤慨していたが、バカ正直に"養女と母親達"と書かれたら、
「十人以上の養女って何?マイケル・ジャ〇ソンかよ?」と言われるのは必至で、元教え子で十分だ、とモリは安堵していた。
新知事を迎えて初めての都議会となったが、無事、次年度予算が決まった。トピックスとしては夏に開催されるオリンピックの海外チケットを販売しないと都議会が提案し、JOCとIOCが決めた。国内向けチケット販売は、コロナの状況を見て判断となった。
オリンピックの海外チケットを販売しない決断をしたのも、都としては無観客にする為だった。JOC内に多額の賄賂を受け取っている幹部と理事達が居るとのタレコミがあり、犯人どもを炙り出すには無観客が良かろうと、都議の五輪開催委員達が判断した。
オフィシャルスポンサーとなった各社は、残念ながら見せしめとなり、投じた資金を全額回収不能となるだろう。会社のトップも担当者もクビになるだろう。
幾ら包んだのかは知らないが、賄賂でスポンサーになった会社を儲けさせる訳にはいかない。
コロナを口実に出来る状況だったのも幸いだった。そもそも、誘致の時点で五輪招致委員のトップが賄賂をバラ撒いて辞職するような大会だ。
アチコチのタガが緩んでいる連中で構成されている、と捉えた方が良い。また、大会前に内部監査を行って、全員起訴する方が望ましい。
膿を全て晒して、運営に当たる東京都はクリーンさを世界に見せつけるのだ。
議場を去ろうとするとメディアに囲まれる。丁度1ヶ月後の4月25日の衆院補選に、共栄党が8人擁立すると話が漏れた様で、他の野党が怒っているらしい。
共栄党は統一候補を擁立する「野合」に参加するつもりは無い。懇願されたので仕方なく千葉と秋田の県知事選には野党候補を尊重し、共栄党は擁立しないし推薦もしない。「それ以上は勘弁してくれ」という話だ。
「今後も統一候補擁立に加わらないのですか?」「単独と言うことは、野党連合による政権交代は考えていないのですか?」
とマイクやICレコーダーを遠慮なく突き付けてくる。ヤレヤレと思いながら決定事項だけ伝える。
「えっと、来月の補選までは社会党、共産党とのスキームで臨みます。共栄党としては補選の結果を踏まえて、以降の方向性を判断したいと思います。共栄党が全く支持を得られずに、衆院では議席を取れない可能性も十分ありえますので」
と応えると、記者が笑う。
その隙にその場を足早に去って、新宿オフィスで着替えて、一同と共に羽田に向かう。
明後日がビルマの祝日、国軍記念日に当たる。1945年3月27日のビルマ国軍の対日蜂起日に、首都で記念式典が行われる。
「影の国軍総指揮官」は、来賓席に招待客として座る。ビルマに関与した日本人として、今後毎年参加がマストとなる。一緒にビルマ入りするが、一族郎党は春休みついでの観光だ。
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空港内で食事をしながら、富山からのチャーター機を待つ。県知事と中学生達が乗り込んでいる。県知事達はそのままニュージーランドに向かい、明日の五輪代表のサウジアラビア戦と、月曜はオーストラリア・メルボルンでオーストラリア戦を観戦する。月曜の試合にはビルマ組もメルボルンに移動して観戦する。そんな行程だった。
富山からやって来た機体がゆっくりと移動して来ると、一同が目を見張る。
機体の上部に鋼材柱の様な物体が取り付けてある。早期警戒管制機のレーダー装置のようだが、AI用の送受信器だ。既にビルマ空軍と在韓米軍では運用している。
「あれ何?」来月で小4になるリアムに言われて、少し悩んでから答える。
「アンテナだよ。ビルマまでアニメが見れるよ」と言うと、隣にいる母親のアリアが吹き出して笑う。
「さ、乗ろっか」リアムの手を引いて機体に乗り込んでいった。
サザンクロス航空のS2000はピカピカだった。機内に入ると「富山組み立ての1号機で、試作機だ」と富山から来たサミアが言うので、中指を立てる。
「この機体が社会党陣営の専用機になる」と夫のゴードンが言うので、やはり中指を立てて威嚇する。何故、一号機に乗らねばならず、宛てがおうとするのだろう。
標準のS2000は3列席で50シートなのだが、専用機なので2列の全席ビジネスクラスのシートにして、27席としていた。打合せブースも設けている。この日のサプライズは女子高校生と女子中学生7人がサザンクロス航空のCA服に着替えていた事だろう。
女子大生6人分のユニフォームまでは無いので、帰路でサイズの合う数人が着るらしい。
蛍と里子、幸乃知事は妊娠中のために留守番で、ママ友3人が付添で富山・岐阜・大森に残る。
残留組以外のママ友軍団と共に後部座席に陣取る。そこしか残ってないからだ。
プロペラ機なので離陸は軽快で穏やかなものだった。新型の輸送機用 高出力ターボプロップエンジンは、プロペラ機とは思えない加速度で機体を一気に上昇させてしまう。性能だけ見るとジェット機と変わらないと納得する。
機体が平行移動になると、お茶を配り始めた。機長の室内アナウンスが入る。航空自衛隊で政府専用機を飛ばしていた佐山さんだった。
「あれ?操縦してるのは人なの?」と高2の偽スッチー・トモちんが乗客Aに尋ねやがる。
「飛行機は離陸も着陸も含めて自動操縦出来るんだけど、空港の滑走路内はいろんな航空機が走ってるから、ヒトじゃなきゃダメな決まりになってるの。それに2人体制でなければならない」
「え?そうなんだ。ロボット君は?」
とぼけたスッチーだと思いながら、尻を撫でると、逆に押し付けてきた・・
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トイレに行こうと立ち上がると、淫行条例違反の元教師が元教え子の臀部を触っているのを目撃する。足早に通り過ぎながら睨みつけると「誤解だ」みたいな顔をして首を左右に振っている。女子高生もバツが悪そうな顔をしている。
「同罪でしたか・・ 」金森知事はそう呟いて、トイレに向かってゆく。
トイレから厚労大臣だった越山史子が出てくる。富山から羽田までの間、談話用コーナーのソファで語り合っていた。お互いビールを飲み続けて、孫のあゆみに叱られた。トイレも近い訳だ。こんな具合に話していた・・
「去年なんかのテレビ番組で見たんだけど、アメリカ国内でも許されていない農薬を使って小麦栽培している農家が「ジャップの分だから構わない」ってモードでカメラの前で発言してた。
そんな残存農薬まみれの小麦の輸入を許容し、流通させているのよ、食糧庁と与党が」
越山がビールを飲み干す。
「総務省もグルなのかな?メディアが大々的に報じたら、全国のパン屋さん、製麺所がまともな小麦を輸入しろって言い出すよね・・ってか、輸出しちゃうアメリカもどうなってるんだろう」
「輸入品に頼り、関税をせしめて、農薬の基準を緩くして国民の健康を全く考慮しない。ガン患者を増やし、人口を抑制し、医療機関と保険会社だけが儲かる仕組みが出来上がってる。国民2人の内、1人がガンで亡くなる国になっちゃった。
鮎が目指してる様な福祉制度が充実して、安心な食材がもっと流通していれば老衰死の比率も上がるだろうけど、国がガン細胞を増やしてる状態なのよね、今は」
「サイレントキラーだもんね、タチが悪い・・。みんな関心をしめさないから、日本人は確実に減っちゃう。政府は年金対象者を減らすのが目的なのかとどうしても勘ぐっちゃうわよ」
「癌の原因も曖昧モコにしちゃってるしね。「犯人」を特定しづらいように出来ている。肝臓ガン、肺がん、胃がんとガンの部位は特定できても、どうしてガンになったのか、原因究明をしないのよ、これは日本だけじゃなくて、世界を覆っている闇のひとつなんだけどね」
「日中のテレビCMって、保険会社ばっかだもんね・・」
「感染症の分野でも闇があるんだよ。コロナが蔓延して「自宅療養」っていう名の感染者遺棄事件を国が率先したでしょ?」
「言い方・・」金森知事が笑う。
「自助をリードしたのが前の政権であり、国民の命と健康を守るはずの厚労省だった。厚労省の暗部を全部晒してやろうと何度思ったか・・コロナで忙しくて、手が回らなかったけどね」
年金や介護といった福祉政策を少しでも軽減するために、国民の健康を害する方向へ国が積極的に舵を切っていた。
福島の放射能を抑止もせずに自然界へ垂れ流し、農薬塗れの穀物・野菜を輸入し、アメリカやオーストラリアの成長促進剤と抗生物質に塗れた肉を流通させる。放射能や農薬、禍々しい抗生物質を日々摂取し、体内に次第に蓄積されていく。ガンの原因で真っ先に疑わしいのは食生活環境だと、どうして誰も指摘しないのだろう? ガンの原因となる要素で日本は満ち溢れているというのに・・同級生が揃うと自然とそんな話になる。前厚労大臣の越山は、鬱憤があるのか、勢いが止まらない。
「・・島国なのに、日本だけが、無能な厚労省が大量確保した抗原検査キットを消費することに固執し、入国後も十分な隔離期間も設けずにバンバンと人を受け入れた。その後も、簡単に出来るはずの鎖国政策を取ろうとしない。人流を加速させる為にGotoトラベルとオリンピック開催に突っ走り、アクセルを全く緩めようとしない。
空港では抗原検査をしただけで、インバウンド需要目的で次々と観光客を受け入れていった。あっという間にデルタ株が蔓延して、感染者が増えた。ウィルスをバンバン持ち込んだ原因を作ったヤツが、「安心安全な社会をめざす」って連呼するのよ、異常でしょ?それで終わらないのが、厚労省・与党のクオリティなのよ。
予定通りにウィルスを上陸させ、全国に拡散させると、狙った通りにコロナが蔓延して、医療体制がパンクしちゃった。
速攻で事前に用意していた「感染者の自宅放棄プラン」をアナウンスして、家族感染を誘発させて感染者を増やす作戦を始めた。家族心中、一家共倒れを狙っていたとしか思えないのよ。死者の数が2万人を超えて、東北の震災の死者約1万6千名を凌駕したんだもの・・。
年金、介護料、医療費の支払い対象者を減らす努力していたのよ。で、隠蔽工作もマニュアルになってた。2万人の死者を「さざ波」扱いして、タワシ頭のデカ顔野郎が無表情の顔をして「安心・安全な社会を取戻す」って連呼し続けていた。 政治家は農薬会社からは献金を受け、東電から献金を受け、そして危険な農産物・畜産物を扱う会社から献金を受けた。厚労省は国民の抹殺を考えたかのように世界の事例や科学から目を背け、自分達の都合だけを優先して、医療制度も見直さない。国民の命と健康を蔑ろにする、それが今の与党党であり、2万人を死に追いやった殺人集団・厚労省なのよ、ぶっ壊すしかないでしょ!」
「そうね、木端微塵に壊すしかない・・裏金、ゼネコン疑惑なんて目じゃない・・」
・・国会議員になろうかな?と 手を洗いながら鏡の中の自分を見る。そうでありたいと願いながらも、今の職責を全うせねば、と思い直す。
トイレを出て席に戻ると、淫行条例違反男は、中3のCA姿の村井彩乃を膝に乗せて、あろうことか胸を触っているではないか!
「まだ早いわ!」とモリの後頭部をペシッと叩いて、通り過ぎながら振り返ったら、なんと胸を揉み出したので睨み付ける。そうだった、この2人は風呂に入り合う仲なのだ。
亡父との習慣で彩乃から率先して入ってゆくのだが・・浴室内でもしているのだろうか・・
彩乃の蒸気気味の顔を見て、ヤレヤレと首を振りながら席に戻っていった。
(つづく)