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(4)真の地方創生とは?vol.1 (2023.10改)

今までは警視庁トップと各部門にイエスマンを配置していたので捜査をもみ消していたが、トップの長官と事務次官が逮捕され、各部門のイエスマンが更迭され次々と失職となり、与党が警察を全くコントロール出来なくなった。直ぐに反旗を掲げて与党の悪を暴き始める。
7月に宗教法人と反社会的勢力に金を渡して、プルシアンブルー社と金森知事、モリ都議と関係者に制裁を加える指示を下した経緯が再捜査の対象となり、与党は青ざめた。

まず、金森知事とモリ都議が教授と教諭をクビになった経緯で文部大臣と文科省事務次官が関与したとして更迭され、慰謝料が支払われた。 
この慰謝料で知事は富山県内の土地を買い、都議はコロナで値崩れしていたグアムの高級マンションを購入、公務員なので資産明細に即座に記載された。実は2人は資金を不動産購入に使っていない。米国某組織によって提供されたものだからだ。

富山県副知事の村山幸乃医師とプルシアンブルー社流通部門常務の源 翔子は勤務していたメーカーの産業医と食品開発研究者をクビになった経緯に関与した厚労大臣と事務次官が更迭、プルシアンブルー社物流センター長・常務の平泉 里子が勤務していた航空会社解雇に関与した国土交通大臣と事務次官が更迭となり、3大臣の任命権者の首相は既に辞任を表明して入院しており、官房長官も官邸に居らず半ば職務放棄状態で、政権は完全に航行不能なダッチロール状態に突入していた。

副首相から首相代理になった元首相は、嘗て野党に転じた際の最後の首相「戦犯」なので、今回再び戦犯となるかとの呼び声が高いと言うより、見せ物小屋状態になっている。
もし、この時点で衆院解散をすれば与党大敗は必至なので、何とか次の政権に託すしかない。
しかないのだが、尻拭いはオレには出来ないと手を上げる者が居ない。
このまま暴言癖と人気の無い首相代理で押すしかない、いやいや各派閥長が立候補しろよという声も少なくなかった。辞任を表明した首相が長を務める最大派閥が宗教絡みで揉めているからだ。

モリ達が職を失ったのと同タイミングで都議と家族が所有する都内と横浜の居住地や、富山県内と東京都大田区内のガソリンスタンドやミニスーパーの店舗などに危害を加えようとする者が毎日のように現れ、逮捕されたのだが、彼らは新興宗教の信徒達で指示役の本部内の部長(逮捕済)の存在を明かしており、部長は連絡をして来た国会議員や県議の名を警察に明かしていた。証拠の音声まで出して証明したと言う。
宗教法人からは和解と言う名目でプルシアンブルー社に賠償を支払おうとしたが、
「信者から巻き上げたカネを手にしたら米国大統領と首相と議員AからZと同じになるから嫌だ。とにかく日本から出て行け!」と日本法人社長名でホームページに書き込んで、社長が中指立てている写真を添付し、拍手喝采となる。

議員AからZのリストアップがされ、アルファベットではとても足りないと言うオチとなる。
宗教絡みで名が出た議員達は与党所属を辞めたが、ここへ来て記者殺害事件に絡んで、新たに特定派閥の数名の議員の関与が囁かれており、党を辞めても逃げられない状況になりつつある。
最大派閥の長が祖父の代からの付き合いがある宗教なので、そこを追求しているだけで党内はガタガタに揺れ続けている有り様だった。

そこに富山県の全ての学校と新宿の保育園が感染対策ができているという話も加わると、世論は「政府は何してんだ」と騒ぎ出し、地方各所でも騒ぎ出して、与党は危機管理能力の無さを証明するかのように収集が一向につかないまま、醜態だけを晒していた。

ーーーー

9月、変化の波は南から始まった。
鹿児島市役所の農業振興課と鹿児島市農協が協力してプルシアンブルー社のバギーをテスト導入して早生米の稲刈りを行った。
視察に訪れていた各農家が刈り取りの順番を争うように依頼してゆく。プルシアンブルー社のエンジニア達はホクホク顔でPCの作業日程表に稲刈り日時を入力する。
各農家さんには「作業日程表」が紙とデータの入ったUSBメモリが入った封で手渡された。市内の稲作農家にあっという間に広がり、鹿児島市内70%の田でプルシアンブルー社の稲刈りサービスが行われる事になった。残りの3割は中型以上のコンバイン機を所有している農家さんで機械を使わねば勿体ないと判断したのだが、プルシアンブルー社のサービス料金を聞いて、「コンバインが壊れたらコッチだな」と思ったそうだ。

岡山県農業振興課の職員と岡山県内の各農協の方は、鹿児島市よりも県全体にエリアが広がるので大掛かりとなった。
プルシアンブルー社岡山支店の社員が県内の農協各所に訪問して、契約を交わしていった。

鹿児島市に隣接する南九州市、南さつま市、日置市、指宿市と岡山県に隣接する広島県、鳥取県、島根県、兵庫などの農家さん達は「俺たちは指を加えて見ているしかないのか!」と県や市の役人や農協職員に食って掛かっていたらしい。可哀相だが暫しお待ちいただくしかない。
鹿児島市の農家さんと岡山県の農家さんの邸宅を囲う壁や町内のあちこちに、市長候補者と知事候補者のポスターが貼られてゆく。

農業だけでは無かった。鹿児島湾漁協と岡山県瀬戸内漁協は富山県内の各漁協を視察し、富山湾内の漁が様変わりしたのを見学していた。鹿児島湾は鹿児島市だけでなく、指宿市、霧島市、垂水市などの市町村が面しているので、それなりの人数でお見えになっている。​

従来と異なるのは各漁船で「無駄」が解消されると見学者たちは学んだ。
漁業組合がブルーインパクト社の広域魚群探知機で富山湾内の魚種ごとの生育数を把握するので、富山湾内の漁業組合で魚種別の水揚げ量を分配し、各漁業組合の漁船別に魚種と水揚げ量を分配する。
つまり、魚のいるポイントが常に特定できているので、事前に決められた分量の漁を行なう。漁に出てもボウズで帰港する事が皆無となり、その日の漁場と水揚げ量が予め決められているので、無駄に燃料を消費しない。
結果、漁船ごとの水揚げ量・漁業組合ごとの水揚げ量が事前に判明しているので、セリ単価で魚の価格の変化は多少あれども、売上予測と燃料などの経費予測から収益予測が可能となる。そんな夢のような話なので富山県の漁師達は誰も彼もが喜んでいた。
鹿児島と岡山の漁協関係者には彼らの話は異世界か別世界の話題のように聞いていた。ベテラン漁師の勘や経験に頼る必要が一切無くなったので、経験値の浅い新人漁師であってもベテラン漁師並の安定した収入を得るようになり、漁師の次男坊、三男坊も漁師を目指すようになったという。儲かるからだ。
その別世界の話も実際に海に出て、漁に同行すれば一目瞭然となる。

富山湾ではソーラーパネルを浮かべて海上発電を行ない、パネルの増設作業をしている真っ最中だった。漁業関係者が注目したのはソーラーフロートの下部にある「生け簀」だった。ブリの幼魚であるワラサの生育を始めて今ではハマチサイズとなり、冬のブリまで出荷待ち。しかしサバが収穫期を迎えていた。養殖サバを昼食に食したのだが、巨大な生簀で養殖されただけのことはあって、漁でとれた天然のサバと比較しながら食べたが栄養状態が良い分身も大きく、天然サバと同じ様に身がしまっており、味は一緒だった。現在は2ha​の生け簀で養殖中だが、既に10ha分の鉄板が浮かんでおり、ソーラーパネルの無い2haの海中では、生け簀の取り付け作業が行われていた。
ブランドになっている富山湾の寒ブリ、鯖は養殖ものでも絶品として来年には全国に流通してゆくと言う。
ギャンブル的な要素のあった漁業が、田畑の大きさで収穫量が予め予測できる農業と同じになったと説明されれば、頷くしかなかった。
後継者不足に悩んでいた漁師も、次男、三男だけでなく脱サラ就業者や普通高の卒業生が新人として船乗りを希望するなど変化が生じているのが、現役の漁師には一番の衝撃となった。
「作付面積から収穫量が予測できる農業従事者のように、漁業従事者も安定収入を確保できるようになった」富山県が纏めたレポートを読んで頷くばかりだった。

視察の〆に、富山県の金森知事の講話を聞く。

「隣県の石川県、福井県、新潟県の各漁連が最近「広域魚群探知機」を導入しました。
導入直後から漁師さんの収入が改善されつつあると伺っておりますが、各県のレポートを我々も楽しみに待っている状況です。収益が早速増えた各漁連は、皆さんが視察されたソーラーパネルと生け簀セット2ha分の購入をされました。生け簀で養殖する魚の売上は暫く生育させてからとなりますが、ソーラーパネルが発電する電気は導入して直ぐに発生します。富山では電気は県庁のものですが、石川県、福井県、新潟県での海上発電は各漁連のものです。各漁連の電気収入になるんです。因みに富山は大型漁船を間もなく手に入れるのですが、ご存知ですか?」
というので、会場内が騒がしくなる。

「富山の漁師は湾内の魚を捕獲していれば、今までは潤いました。富山湾が非常に豊かな海だったからです。アルプスから流れる栄養価の富んだ水が湾内に大量に注ぎ、プランクトンの多い湾で、ホタルイカや白エビ、カニなどの深海生物も多い多様性のある起伏のある湾です。更に漁獲高を増やすためには我々は富山湾の外に出る必要があります。
海水温度の上昇で生態系が変わりつつあるのも一因ですが、我々は未来のために、もう一歩踏み出します。海水温度が上昇するのですから、目指すのは北です。富山から北へ、富山の漁師はオホーツク海を漁場とします!」

「まだ儲けようというのか、富山は!」と誰かが叫んだ。

「そうです、富山の漁師は貪欲なまでに稼ぎます。収入は多い方がいいと思うのですが、岡山の皆さんはそう思わないのですか?」と言って会場内に笑いが響き、大声を出した人物は頭をかいていた。

「皆さんもご存じのように、日本とロシアの間では漁業協定があって、日本の漁師は海域は制限され、水揚げ量も限られています。これはロシアが自国海域の水産資源を把握しておらず、低く見積もっていたからなのです。実は私達の調査で、ロシアの想定を超える水産資源がウラジオストク湾内とサハリン島南部の湾内で確認されたのです。
そのデータを日本政府にも報告したのですが、日露漁業協定が見直そうという動きにもなりませんでした。我が国の外務省と農水省のオツムが弱いのは皆さんの方がよくご存知だと思います」
そう言って会場内はまた爆笑となった。

「残念ながら日露漁業条約はそのまま残りますが、サハリンスク州とウラジオストク市と富山の3者間で漁業協定を新たに締結したんです。お互いに国家は関与していません。漁業組合レベル、県レベルの協定です。私もブリやイワシ、ズワイガニばかりでなく、サケやマス、イクラ、筋子、タラバガニも安価な値段で食べたいんです!その熱い思いで締結しました。職権乱用で本当にすみません!」金森鮎は壇上で頭を下げて会場内を笑わせた。

「協定の内容ですが、この魚群探知機を導入すれば、湾内の魚が種別で水揚げ量を判断できますよね?その何割かを富山の漁師に提供するというものになります。最初は年間漁獲高の2%で始めます。それでも富山県民100万人には過ぎた漁獲高となります。サハリンとウラジオストクの州知事は4割は受け取ってくれと言っています。つまりまだ38%の枠があるのです。実は、この漁獲高だけで日本全国の漁獲高より多いんですよ。つまり日本の漁師さんに収入を倍にする権利を富山県は持っているのです!」
会場内に拍手が鳴り響く。立ちあがっている者もいた。
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「蛇足ですが、ロシア海軍、海上保安庁による拿捕というリスクを考えた方もいらっしゃるでしょう。ご安心下さい。バッチリ対策済です。ロシアの海域に入ると、サハリン、ウラジオストクの漁連の旗を掲げます。船内にはロシア語で書かれた協定書の控えを積んでおきます。サケ、マスなら何トン、カニなら何トンと記載されてますし、船舶毎の水揚げ量は全てIT管理されていて、その日の漁が終わるごとに、ユジノサハリンスクとウラジオストクの漁連にデータが飛びます。つまり、日本の漁師は密漁ができません。ま、船いっぱいに獲れるので密漁する必要もないのですが。
さあどうします、皆さん?岡山と鹿児島でも大型漁船を買って、オホーツク海で荒稼ぎしませんかぁ!」
金森知事が叫ぶと、全員が拳を上げた。流石、海洋生物学者だと誰もが褒めた。

富山県は秘密にしない。この知事の講話を動画で公開してしまう。農水省と外務省、そして日本政府は項垂れる。全国の漁連は富山視察を要請していく。漁連は自分の国や県を見限ってゆく。農協もやがて追随してゆく。

鹿児島の海岸部と岡山の海岸部に、新人候補者のポスターが次々と貼られていった。

ーーー

現職の岡山県知事と鹿児島市長は10月中旬の選挙予測に頭を抱えていた。9月上旬の時点で「大差で敗北」と出ている。与党の推薦を捨てたところで、今までの選挙戦での首相を始めとする幹部たちとの応援演説のイメージがあるので、意味をなさないという。
7月の富山知事選のような開票と同時に当確が出るような選挙なら、戦うだけ無駄だと考え始めていた。農家も漁師も農協も漁協にもそっぽを向かれ、前回まで応援してくれた県議や市議も体の良いことを言って逃げてばかりで動いてくれない。

次は低価格がウリの流通事業やガソリンスタンドが展開されると万事休すとなってしまう。
実績の乏しくとも他県と横並びなので平穏な日々だったのが、富山知事の誕生以降あらゆる面で比較されるようになった。県庁や市役所の職員は新人知事と新市長を心待ちにしているというのも、富山では定時退勤日が習慣化しているからだ。スーパー派遣者と噂されている助っ人が大量の業務を捌いてしまうのだという。
AIの説明を職員から聞いても理解出来ない。その時点で敗北は決まったようなものだった。

この日のトップニュースはまた富山だった。
台湾電力が利用していた小規模ガス火力発電のタービンなどを載せた大型船が富山湾に入港した。
「富山県は電力会社との関係を精算する道を選択する」と​金森知事が自信を滲ませて告げるニュースだった。​

9月4日、鹿児島市長は5選目の出馬を断念すると表明した。与党鹿児島県連は慌てて候補者探しを始めるが、津波のような「富山ウェーブ」に抗う候補者は見つからずに終わる。

(続く)


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