(3) 人生は 綱引き、駆け引きの連続だ 。(2024.7改)
母親の金森知事、夫のモリが国内不在の年度末を迎えていた。
知事の娘で、モリの妻・杜 蛍は、4月12日の富山市長選に立候補を予定している。その蛍の元に、都内から取材に訪れる記者の中には、海外メディアの記者が目立っていた。
自身が一応翻訳家だと知られているのか、英語が通じると思っているのだろう。選挙前の辻立ちや、ビラ配りをしている最中でも遠慮なく英語で質問してくる。
中には独仏語で容赦なく質問する記者も居て、困惑するのだが、手伝ってくれているママ友の安東咲子が仏語を 諏訪結子が独語を話せるので、助かっていた。安東は料理研究家で欧州の料理学校に通い、レストランで勤務し、諏訪はドイツ航空会社の客室乗務員だった。
そんなこんなで海外メディアの取材を受けていると、それらメディアの記者達が母と夫を「日本の次の政治家」と見做している(?)と蛍は感じていた。
2人にその気は無いと思うのだが、社会党と共栄党が躍進して議席を増やせば、自ずとその手の未来もやってくると捉えているらしい。そこまでの構想をして、政党を立ち上げたとは蛍には思えなかった。元々東南アジア好きの夫は、ここぞとばかりにアジアでの事業に力を入れているし、中央政府に関心のない母は、地方を変えようとあれこれ考えてばかりいるからだ。
母親の学友に当たる前外相、前総務大臣、前厚生労働大臣の3人が、短期間とは言え閣僚として強い存在感を放ったので、3人を核にして、国政を牽引する方が現実的かもしれないと考えていた。
メディアが母と夫に注目するのも理解はしている。知事と地方議員でありながら、2人が異次元の働きをして幾つかの懸案の国の課題を解決し、日本の政治を外野から変え始めているのは紛れもない事実で、母も妻も知らない夫の一面が、矢継ぎ早やに繰り広げられる事態に直面して、嬉しさ以上に驚き、困惑しているのが実態だった。
「皆さんと同じです。私も、卒倒仰天してるんですよ」と本音で言っても、彼らは俄に信じてくれない。
取材陣の多さに困惑する蛍を、共に支えて一緒になってアレコレ考えてくれているのがママ友達であり、脱線しっぱなしの規格外の夫を、妻一人でカバーするのは到底無理で、チームで夫を支えたからこそ何とかなっている・・と、そんな率直な思いをママ友内で吐露し合うのも、しばしばだった。
知事の娘であり、元地方議員の妻が市長選に出馬しているので、質問の中に「娘と妻から見た、母と夫」といった視点を求めてくるのもお約束だ。「奇想天外な仕掛けを用意し、何処に現れるか予測不能で神出鬼没な母と義理の息子」と、変人の様に思っているのかもしれない、蛍に対しても変化球の様な複雑な質問で迫ってくるので、何が知りたいのか逆質問するのも、度々だった。
しかし蛍には市長選への立候補はコダワリのようなものは無く、「幸乃も岐阜県知事になったし、市長でもやってみない?」 「やってみようかな」程度のノリなので、記者からの質問に窮する場面も少なからずある。実際はその程度の心情なので、市長職への思いも無ければ、人生の目標みたいな高尚なモノは一切無かった。
「富山市長として、富山県知事を間接的にサポートする」という母娘間の話でしかないので、それを正直に言うのも憚られている。
応援してくれる安東も諏訪も、そして池内知美も「適当に偉そうな話をしていればいいのよ」と笑い飛ばしながら、想定質問と回答集を一緒になって作文してくれたりするので、"勢いで立候補"した杜 蛍は助かっていた。
***
諏訪結子、池内知美の2人は富山駅で新幹線でやって来た源 翔子と屋崎 由真の従姉妹コンビを出迎える。
蛍と安東咲子は隣県の岐阜から車でやって来たモリの愛弟子、ハンターの村井志乃を五箇山の母の生家で出迎えていた。
富山県の特別予算で組まれた「獣害対策費の特別枠」を、論理的な説明を省いた金森が、知事の立場でゴリ押しして確保していた。その特別予算を行使するのが今回の目的で、国内残留組のママ友達が五箇山に集った。
大半の予算を利用するのは、県の環境管理部なのだが、ツキノワグマの現在地を把握する為の「事前調査」を杜蛍を代表とする「南砺市 野生動物愛護団体」という即席のNPO法人が請け負う。
富山県の環境部 環境管理課と、農水部 林業振興課が今まで観測中の県内のクマの総数と、生育場所をNPO法人が再確認し、富山県が把握していないクマに発振器を付けて、24時間体制で富山県のAIがクマを監視するという内容だ。
クマに発振器を付けるのは、環境部が委託する獣医と業者の役割となるが、クマの巣穴と縄張りであるテリトリーの場所を特定するのが、NPO法人のメンバーでもある源翔子と屋崎由真のミッションとなる。
五箇山の家で集った夕食中に、翔子と由真の特異体質を初めて知った安東咲子、諏訪結子、池内知美は呆然となる。
「そんなホラ話を誰が信じるってぇの」と、酒に酔ったママ友3人が一斉に翔子に絡む。
北朝鮮とビルマとカナダで、モリと共に行動し、モリの寵愛をしっかりと得て、本妻の蛍を脅かす存在となった翔子を、新規参入のママ友3人はうらやんでいた。だからこそ、秘訣を知りたくて事ある事に翔子にアドバイスを求めていた。モリの感じやすい箇所や好のむ体位、何よりもどうすれば寝床に誘ってくれるのか・・そんな話は、とてもじゃないが蛍には聞けないというのもあった。
いつもの様に翔子をママ友達がイジり始めている。
屋崎由真と村井志乃は互いの顔を見て頷き、決意する。カナダ滞在中の生々しい野姦話や夜の営みのアレコレには今は触れないでおこうと。
今回の調査請負の為に、モリがビルマに向かう前夜に翔子と由真と褥を共にして、精を受けているのを、当事者以外にこの場で知っているのは、蛍と志乃だけだった。
「あのさ、AsiaVisionの“美し過ぎる記者”も含めて、マスコミが取材に来るじゃない?どうやって、伝えるのよ、こんな話絶対に出来ないでしょ?」池内知美が思い出した様に発言する。
「えっ?コシキ記者が来るの?」安東咲子が畳に倒れこみながら蛍を見る。
「あんた何、考えてんのよ?」的な視線で咲子に見られて、蛍も苦虫を食べた様な顔をする。
「来ちゃダメって言える立場じゃないもん・・」急にトーンダウンする蛍と、何故か怯えている咲子のやりとりから、一同の脳裏に「どうした?」 「なんだ?」という言葉が渦巻いていた。
「アジアビジョン社なら、好意的に伝えてくれるんじゃないですか?」
「そうですよ、良心的なメディアじゃないですか。あの美人記者も弊社寄りだし、彼女の好感度は私の中では抜群ですよ」
岐阜知事である姉が一同とママ友で、一同とは一回り近く年下である村井志乃と屋崎由真は、極めて一般的な見解を口にする。安東と蛍以外が、志乃と由真の発言を肯定する様に頷いている。
「あのね、気仙沼に弊社のテレビ工場が出来たでしょ?妹が工場の広報担当部長をやってるのは皆も知ってるよね?」
安東咲子が語りだすと、蛍以外の一同が頷く。
蛍は口を一文字にして目を閉じているので、「あれ?もしかして女性問題なの?」と、一同は何気に気付いてしまう。
「工場操業開始日の先月、翌日にコシキ記者の単独取材を先生とゴードンさんが受けてたのよ。系列会社みたいなアジアビジョン社だから、妹も取材の場に立ち会ったんだけど、3人の口調がね、記者と取材対象者のそれじゃなかったんだって。妹が疑問に思って尋ねたら、彼女は先生の外資系IT企業時代の元部下で、ゴードン夫妻のエンジニア部隊ともチームを組む間柄だった。セールスマンとITエンジニアといった関係でね・・で、取材の後で先生と2人で飲んでいるのが気仙沼の飲食店ネットワーク網で広まって・・翔子の母が先生に2人の関係を問い質したんだって。
彼女はサラリーマン時代の先生の元部下で、当時はそういう関係だった知って、妹経由で私の耳にも届いたって話。まぁ、蛍も鮎先生も教師時代以降の先生しか知らない訳で、2人が出会う前のサラリーマン時代の話だから」
「じゃあ、アジアビジョンの記者職を斡旋したのは先生なの?」 何も言わない母親に憤慨しつつ、強敵出現!みたいな顔をして、翔子が言う。
「記者に誘ったのはサミアさんなんだって。
プルシアンブルー社の営業職だと、彼と接点が増えて恋愛感情が再燃するかもだし、何よりあの美貌でしょ?テレビ向きだって思ったんだって。そもそも、アジアビジョン社自体がサミアさんのプロジェクトっていうのもあるし、AIキャスターとAI俳優だらけの同局で、今や彼女は数少ない生身の人間で、アジアビジョンの顔的存在になっちゃってるし・・」
蛍の説明を聞きながら、上司と部下の秘め事みたいな妄想を各自が脳内で想像し始めていた。
各自がモリの愛人でもあるので、閨での睦言を容易に想像してしまうのだった。同時に、アジアビジョン社の取材にモリが応じた形跡を秘書でもあるママ友達は認識していないし、第三者と密会する時間がモリには存在しないのもママ友達は知っている。
実際、毎晩ママ友か養女達の誰かがモリの相手をしているので、2人の関係は20年前で既に終わっていると自然に解釈できていた。しかし、“強敵出現、しかも元カノだった”の報に接し、ママ友の懸念はどうしても残るのだった。
「彼女、何歳なの? あ、43なんだ・・全然そうは見えないね・・」
諏訪結子がスマホで検索して語る。43歳、年齢で言えばチーム最年長の翔子・里子より1つ上となるが、ハーフかクォーターの様な顔立ちなので40代には見えない。
今後接点が増えたなら、2人の関係が再燃しかねないとママ共達も想像する。
平泉里子の娘、イタリアンハーフ姉妹の杏と樹里はモリのお気に入りだと誰もが知っている。
翔子と由真は、ビルマでウズベキスタン人に変装した際にモリが異様に盛り上がっていたのを体験していた。カラーコンタクトや西洋人用のウィッグを「夜の変化アイテム」としてママ友達が採用するきっかけになった。
それ故に、コシキ記者の「外観」がモリに影響する可能性を、各自が想像する。
別れて20年近くが経過したとはいえ、モリもコシキ記者も若々しさを失っていない。
「今でも 十分お似合いだよ・・」諏訪結子が呟いた一言に全員が苦々しい顔で受け止めながらも、認めるかのように頷いていた。
***
翌日、ママ友7名は富山県庁環境管理部が把握している情報を元に、クマの生息範囲に近い地点に移動する。生育範囲の日陰には残雪が散見されるが、大半は既に融けている。
ビルマとカナダで実働部隊となった翔子と由真がドローンを飛ばし、冬眠していない もしくは冬眠中のクマの状況捜索を念入りに行う。猟銃を持ち、狩猟ライセンスを持っているのは志乃だけなので、サーモグラフィー機能を持つ生体物認識ドローンを一行の安全を優先する為に用いていた。北アルプスの標高が高い箇所は初夏近くまで積雪が残るが、クマはその高度までは登らない。
木の実や山菜や魚が取れる標高1000m以下に留まり、冬眠する。
翔子と由真の能力により、山に登らずに麓で大半の生息域が特定できてしまう。後は冬眠中の巣穴の座標を記録し、写真に撮る為に山を登る。2人の“能力”でエリア内で「動物」をこの日把握したのは、クマ以外ではタヌキとシカだけとなった。
環境管理部の管理下には無い、"発振器の付いていないクマ" を探すのがNPO法人の目的なので、ハンターの志乃がチームを先導して、翔子と由真が特定した巣穴を遠巻きに眺めてる作業が続いた。
半信半疑だった元・山ガールでバツイチトリオの3人は、翔子と由真の“能力”を目の当たりにして絶賛し、行動中にシカ5頭を難なく狙撃する志乃を褒めて、獲物となったシカを運搬するドローンに驚き、2夜に渡ってシカの背ロースとレバーの炙り焼きに、舌鼓を打った。
2日と半日を費やして、県内のクマの全数把握が終わった。居場所が事前に特定できたからこそのワークとなるが、NPO法人は報告書に2週間費やしたと認めて、富山県に報告する。この春の活動の成果として、発振器の付いていない新たなクマを13頭発見した。
後は、獣医と狩猟業者・害獣駆除会社のペアによって、麻酔銃による個体確保がされ、発信機がクマに据え付けられる。
***
富山県環境部の会見前日に富山入りしたアジアビジョン社の小此木クリムトン瑠依記者は、プルシアンブルー社に転じた元同僚達に、富山の飲食店を連れ歩かれていた。
季節的にホタルイカと終盤の氷見の寒ブリ、そして白エビを堪能し、サミアが富山湾に魅せられた理由を悟った。
小此木は日本で生まれ育ったのだが、この年になって富山に初めて訪れた理由を考える。
“元カレ”が富山由来の女性と結婚したと風の噂で知ったのが、富山を避け続ける理由となった気がしていた。
「明日は彼の奥さんに会う」と思うと以前は動揺したのだろうが、サミアから「事実上の一夫多妻状態にある」と最近になって聞いていたので、小此木の中で"何か"が崩壊したと自覚していた。
気仙沼で20年ぶりに再会した際に、そんな状態になっていると知っていたなら、躊躇せずに誘っていたのにと思っていた。
あの日の自身の葛藤“浮気”“不倫”を思い出し、笑っていた。
「寡婦達とその娘達は、都内と横浜の家で暮らしている」らしい。明日は妻だけでなく、寡婦達とも遭遇するのかもしれないと思うと、勝負するつもりで居る自分にも気が付いていた。
本人は身嗜みに関心を抱かない人種だと自負している。しかし、テレビのニュース番組に出演する機会も多いので、社が服飾コーディネーターやメイクアップアーティストと契約し、小此木を化けさせている。
AIが作成するアバターが纏う服や化粧のアドバイザーも兼ねている彼らの「助言」「アドバイス」を、AIが拾い上げて、「pb」やBr○oks brothers」などの服飾子会社のデザインを作成していると聞いていた。
小此木の様な子会社の記者やAIが作成したアバター、そして金森知事や前大臣の3名は、服飾子会社の衣料を纏って仕事をし、テレビカメラで撮影されている。
「富山でモリ氏の奥様に会うんだけど」と衣装コーディネーターに伝えると、コーディネーターさんが奥方の情報を調べて、奥方好みの衣服を用意し、同行するメイクさんが「当日はナチュラル系で整えましょう」と決意する。そちらの方が小此木の好み・・元カレの好みでもあるので、妙に親近感が湧く。そもそも、派手な外観をした女性を好ましいとは、彼は思わない・・
一方、コシキ記者と相対する杜 蛍と源 翔子、村井志乃の3人は「負けるもんか」モードで居た。
AIのアイリーンに何度も訊ねて、宿敵視する“あの女”に、負けない外観を模索していた。
とは言え、宿敵が纏っている衣装や化粧はテレビ映えするものばかりなので、どうしても何時もより華やかになってしまう。
「この大きなフリルみたいな上着じゃ、仕事するのに邪魔だよね?」
「なんで、こんなに胸を強調せねばならんのよ、 どんな奴がデザインしとるんじゃ?」
実用重視なママ友達には合点がいかないようであった。
もしもなのだが、小此木瑠依が自身の当日のコーディネイトを同じAIに相談していたなら、互いのテイストは揃っていたのかもしれない。
翌日、富山県庁の会見場に小此木瑠依が現れると、記者たちが一斉に小此木の変化に反応する。いつもよりもサッパリとした外観なので、金森知事の雰囲気に合わせたのかな?と小此木ウォッチャーでもある他社の記者達は思っていた。
同時に、小此木の隣に居る見知らぬ女性にも目が奪われる。「あれは誰だ?」と誰もが思いながら、時折2人の方を盗み見していた。
会見時間となり、県の職員と共に県知事秘書の杜 蛍が入室してくる。
知事の娘が小此木記者の様な外観なので、場がやや騒然となる。小此木瑠依と杜 蛍が互いを確認して、逆転している事態を察する。自然と2人で目で会釈して、互いに苦笑いしていた。そんな場があったからだろうか、余計な緊張は双方で感じなくなっていた。
「結果オーライかな?」小此木が呟くと、隣席の元同僚で小此木記者の「後任」となる香椎ユーリ記者が「確かに、奥さん、テレビの中の先輩みたいだねぇ」と応えて、笑っていた。
環境部の記者会見が終わると、小此木と香椎に県の職員が声を掛け、県庁内の別室に案内される。入室した小此木と香椎が驚く。そこで待って居た源 翔子と村井志乃が、まるで民放の女子アナの様だった。「2人共、Dカップはあるな」とCカップの小此木と香椎の心は項垂れていた。
モニターでコシキ記者の服装をチェックしていた翔子と志乃は、バツの悪さを補うためにAIに事前に衣装を相談した旨を伝える。
「小此木さんみたいな感じでとAIに伝えたら、こうなりました。モリカズナリ氏の秘書の源と申します。彼女は、岐阜県知事の村井の秘書であり、妹の志乃です」
「AIですか・・・。会見場で奥様とは互いに暫く見つめ合って、お互いで笑ってしまいました。
小此木でございます。本日は宜しくお願いいたします。彼女は、新人記者の香椎です」
「モリさんとは重なっておりませんが、同じ会社の営業職からPB社に転じた香椎と申します。小此木が立候補した後を私が担当いたします」
香椎の発言に翔子と志乃が反応する。富山市長選はまだ公示前だ・・
「こら、気が早いって。まだ何も決まってないのに」小此木が香椎を窘めるように言うが、香椎は動じない。
「ご安心ください。奥様の対立候補では勿論なくて、先輩が立候補しようとしているのは翌週投票の名古屋市長選ですので」
ロシア系だろうか、外人の血が混じっているであろう香椎ユーリ記者。これまた先生好みだと探る様に見ていた翔子と志乃が「名古屋?」と顔を見合わせていると、ノックの音がして、胸を強調する服を纏った蛍が部屋に入ってきた。やはり、“D”はある。
「胸は形が大事だ。大きければ良いってもんじゃない」と、彼は言いながら、この胸を揉んでいたが、好みが変わったのだろうか?と小此木は思っていた。
蛍が笑顔で小此木記者に近づいてくる。
「火花が散るのかな?」と他の3人が思っていると、蛍が右手を伸ばしたので小此木も慌てて手を伸ばす。2人が握手して、蛍が左手も添えて両手で小此木の右手を覆って、互いに照れ笑いをしていた。服飾トレードの様になったが、話さずとも、互いの壁は既に払拭されていた様だ。
翔子と志乃は「なんだかなぁ」と昨日までの苦労を思いながら、始まった取材の場に同席していた。
(つづく)