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ドラマ『日本一の最低男』第3話から考える不登校
ドラマ『日本一の最低男』第3話のあらすじ
はじめに
みなさん、こんにちは。今回は、テレビドラマ『日本一の最低男』第3話のストーリーを振り返りながら、不登校というテーマについて考えてみようと思います。このドラマは主人公の一平(香取慎吾)が区議会議員に立候補するために“ある家族”と契約(?)するところから始まり、「その最低ぶりは本当に最低なのか?」と毎回話題を呼んでいます。第3話では、不登校になりつつある少女・ひまり(増田梨沙)とその父親・正助(志尊淳)のエピソードが大きく取り上げられ、視聴者の間でも大きな反響を呼びました。
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不登校というと、現代の日本でも多くの子どもや保護者が悩んでいるシビアな問題ですよね。学校へ行きたくない子が増えていると耳にする一方で、「行きたくないなら行かなくてもいいんじゃないの?」という意見も増えてきています。実際、文部科学省も「不登校は問題行動ではない」との見解を示しています。では、なぜ不登校が“問題”と捉えられてしまうのでしょうか?
まずは、ドラマの第3話をじっくりと振り返りながら、不登校の子どもを取り巻く状況、親や学校の対応、一平の独特なアプローチなどをひも解いていきましょう。ここでは登場人物の心情やストーリーの展開を解説していきます。
第3話の主な登場人物と状況整理
大森一平(香取慎吾):自称「日本一の最低男」。とにかく自分の選挙でのアピールのために、人々の悩みを“利用”している……ように見えるが、困っている人のために手間暇を惜しまない一面も持っている。
上條正助(志尊淳):妻を亡くし、現在は娘のひまりと2人暮らし。かつては保育士で今は園長の補佐的仕事をしている。娘が不登校気味になり、父親として自分を責めている。
上條ひまり(増田梨沙):母親の病気の影響で前の学校でも不登校気味だった女の子。転校した今の学校でも、友達とのトラブルがきっかけで登校が難しくなっている。
真壁(安田顕):一平と共に選挙活動をサポートする参謀的な存在。学校関係の票を獲得しようと、一平と一緒になって“不登校対策”に力を入れようとしている。
PTA副会長・紀子(山口紗弥加):同じく不登校の子どもを持つ母親。表向きは“不登校児の親の会”に否定的だが、実は家庭内の事情を抱えている。
あらすじ:ひまりの不登校と一平の策略
不登校がちらつくひまりと父の葛藤
第3話が始まると、ひまりは朝の支度をしながら「お腹が痛い」といって学校を休もうとします。父親の正助は「少し様子を見ようか」と心配そうに対応。ひまりは実際に体調不良なのかもしれないし、ただ学校に行きたくないだけかもしれない……。どちらにしても、本人が口を閉ざしてしまうため、真意はわかりません。
正助は、以前の学校でも同じようにひまりが不登校傾向になった経緯を思い出します。それは、母親(=正助の妻)の病気に伴う家庭環境の変化が原因だったのではないかと推測しているのですが、ひまりは何も話してくれない。自分の子どもなのに、気持ちが分からないことに苛立ちと悲しみを感じるのです。
「自分が父親として至らないから、ひまりが学校に行きたがらないのではないか」と思い込み、どんどん自分を追い詰めてしまう正助。一方で、ひまりは口を開こうにも言葉にならない何かを抱えている様子です。
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一平が“政治的”に目をつけた不登校支援
そこに登場するのが一平(香取慎吾)。彼は選挙に向けて「何か目玉となる政策はないかな……」と日々ネタを探しています。そんなタイミングで真壁(安田顕)から「最近、不登校の子が増えてるみたいだよ。学校の保護者から支持を得られるチャンスかもね」と持ちかけられます。
一平は「そうか、不登校支援を打ち出せばPTAの注目を集められるぞ」とすぐさま行動。手始めに、小学校のPTA会合に顔を出し、「不登校の親たちが集まって悩みを共有する会」を提案します。しかし、PTA副会長の紀子から「そんな会は傷のなめ合いで意味がない」とバッサリ拒否されてしまうのです。確かに、話し合いだけで根本解決に至るのは難しいし、一度に全てを解決できる魔法はありません。
それでも一平は諦めません。不登校の子どもたちに接し、どんなサポートが必要なのか探るため、ひまりだけでなく他の不登校の子たちにも声をかけて、なんとキャンプを企画しはじめます。「自然の中でなら、みんな心を開いてくれるかもしれない」「そこで仲間ができれば、学校に行かなくても居場所ができるかも」という発想なのです。
ひまり、学校でのトラブルから完全不登校に?
一方、ひまりは一念発起して学校に行こうとしますが、クラスの男子に「お前の母さん、もういないんだろ?」と写真をいじられてからかわれ、ついカッとなって相手を押し倒してしまいます。大きな怪我ではなかったものの、そのトラブルをきっかけにひまりの不登校は本格化してしまいました。元々「学校に行くのが不安……」という気持ちがあったところに、明確な出来事が起きてしまったわけですね。
正助はひまりをなんとか支えようと、仕事を調整して一緒に登校したり、家庭学習を見てあげたりもしますが、その努力をひまりが素直に受け入れることはありません。どこか気まずく、ひまりも正助も言葉が出ないまま、すれ違いが続いていきます。追い詰められた正助が自分の気持ちを一平に漏らした際、「子育てに失敗したのかもしれない……」という言葉をひまりが偶然聞いてしまい、ショックで家を飛び出す場面もありました。ここは視聴者の多くも「そんな言葉を本人の前で言ってはダメ!」とハラハラしたシーンだったのではないでしょうか。
キャンプで生まれる心の通い合い
そんななか、一平が計画したキャンプが実行に移されます。当初は「親同士で悩みを共有する会」すら否定的だったPTA副会長の紀子(山口紗弥加)も、心配しつつ息子を送り出します。ひまりも「料理を手伝ってほしい」という名目で連れ出され、自然の中へ。ここで一平が見せるのは、得意の“お調子者キャラ”に加えて、子どもたちの気持ちに寄り添う姿勢でした。
夜のキャンプファイヤーでは、一平が「学校に行かないことは悪いことじゃない。でも、行く行かないは自分で決めてほしい。親や先生の言葉だけでなく、自分の心に聞いてみよう」というようなメッセージを投げかけます。子どもたちは最初こそモジモジしていますが、徐々に打ち解けてきて、自分の悩みや好きなことを話し始めます。ひまりも、母親との思い出の牛丼を一平たちに振る舞い、大絶賛されます。ここで少しずつですが、ひまりの心の中に「自分は大切にされている」という安心感が芽生えたのかもしれません。
正助とひまりの和解、そして次に繋がる予感
キャンプから帰宅したひまりは、今度は父親の正助に「お父さんにも牛丼を作るね」と声をかけます。これまで反抗的な態度ばかりだったひまりが、自分から心を開いてくれるようになり、正助も思わず涙。ひまりは「学校に行けない理由をもう少し待っててほしい」と打ち明け、正助も「自分の正解を押し付けてたかも。ごめん、待つよ」と理解を示します。このシーンはまさに親子の心が近づく瞬間で、視聴者も「良かった……」とホッと安心したのではないでしょうか。
こうして、第3話はひまりの笑顔と、正助の「子育て失敗なんて言葉、もう使わない」という約束で幕を閉じます。一平はその裏で「ひまりのことを利用してPTA票を獲得するはずだったのに、まあ結果オーライかな」と薄ら笑いを浮かべていますが、視聴者からは「最初は下心があったかもしれないけど、結局一平が大きく動いてくれたから問題が少し前進したよね」と好感を持たれています。不純な動機と実際の行動とのギャップが、一平のキャラクターをより魅力的に見せているのかもしれません。
日本の不登校の現状と、私たちができること
不登校は本当に増えている? 文部科学省のデータから
近年、ニュースなどでも「不登校の子どもが増えている」と盛んに報じられています。これはいわゆる“肌感覚”だけでなく、文部科学省などが公表する公式データにもはっきりと表れています。具体的には以下のような数字があります(※ここでは仮の統計値や推計値も含んで解説しています)。
2023年度の小中学生の不登校児童生徒数:およそ34万6482人(前年度比約4万7434人増)
小中学生全体に占める不登校児童生徒の割合:1000人中37.2人(約3.7%)
不登校が11年連続で増加している:少子化で生徒数自体は減っているのに、不登校数は逆に増える一方
このように数値で見ても不登校の増加は紛れもない事実です。さらに、学年が上がるほど不登校になる割合が増える傾向も指摘されています。思春期に差しかかる中学生では、クラスに1人どころか2〜3人が不登校を経験しているケースも珍しくありません。
なぜ増えている?専門家が指摘する背景
不登校増加の背景には、もちろん一つの要因だけではなく、複数の要因が絡み合っています。例えば、
教育機会確保法(2017年施行)の影響
この法律ができたことで「学校に行かなくても学びの場を確保することが大切」という考え方が広がり、保護者や学校側も“無理に登校させる”より“子どものペースを尊重する”方向にシフトしてきた。コロナ禍による生活リズムの乱れ
2020年以降の長期休校やオンライン授業によって、朝早く起きて学校に行く習慣が崩れたり、対面での友人関係づくりが難しくなったりした影響が続いている。いじめや学業不振など、従来型の要因の蓄積
いじめ、学業へのつまずき、教員とのトラブルなどは昔からある問題だが、これらが改善されないまま慢性的に存在し、結果として不登校に至る子どもが増えている。社会全体の多様化・価値観の変化
「学校に行けない=人生の終わり」というほど悲観的に考えない保護者や子どもたちが増えている一方で、受験競争の激化や家庭状況の複雑化によってストレスフルな子どもも増え、二極化が進んでいるという指摘もある。
こうした背景を踏まえると、不登校が決して“サボり”や“わがまま”だけで片づけられないことがわかります。一平がドラマで「不登校そのものを責めるのではなく、もっと多様な居場所を作ろうよ」と呼びかけたのも、現代の教育現場を取り巻くこうした実情があるからこそ、非常に説得力を帯びて感じられるのです。
不登校の理由は一つじゃない:いじめだけが原因じゃない現実
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ドラマの中でも、ひまりが不登校になる直接的なきっかけとして「クラスの男子にからかわれた」というエピソードが描かれていますが、実際にはいじめ以外にも多様な要因が存在します。文部科学省の調査結果でも、不登校の主な原因・背景として最も多いのが「無気力」や「不安・抑うつ」となっています。いじめはあくまで不登校の原因の一部であって、「いじめが解消されたら登校できるようになる」という単純な話でもないのですね。
一方で、「家にひとり親しかいないので、子どもの世話が行き届かない」「親の病気や介護があり、家の手伝いに追われている」といった家庭事情も大きく影響します。ドラマのひまりも、母親の病気という深刻な経験が心の奥底に影を落としているように見えました。大人であればある程度割り切れるかもしれませんが、まだ成長過程の子どもにとっては大きなショックとなり、学校への意欲を失わせることだってあるのです。
不登校は問題じゃない? 文部科学省の方針転換
先ほど少し触れましたが、2017年には「不登校の子どもたちが安心して学べる場を保障しよう」という趣旨の教育機会確保法が施行されました。この法律の背景には「不登校=問題行動・怠け」と見なされがちだった旧来のイメージを改め、社会が多様な学びの場を提供していこうという考え方があります。
実際、文部科学省も近年は「不登校は問題行動ではない」「学校以外にも学ぶ環境を設けることは大切だ」というスタンスを打ち出しています。例えば、フリースクールやNPOが運営する学習支援施設、オンラインで学べるプログラムなど、学校の“外”で学ぶ子どもをサポートする仕組み作りを推奨しています。これはドラマの一平がキャンプを企画して子どもたちに自然体験をさせたり、居場所を作ろうとした発想と通じるものがあり、とても先進的な取り組みとも言えます。
ドラマと現実のギャップ:学校はそこまで協力的か?
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ただし、ドラマでは一平の後押しもあって学校やPTAが徐々に協力的になっていきますが、現実にはそうスムーズにいかない場合も多々あります。学校側としては「出席日数が不足すると進級が危ぶまれる」「担任や校長の評価に響く」など、さまざまな事情で不登校の子どもを完全に認められないケースがあるのです。あるいは、“不登校の子は問題児”という先入観をまだ拭いきれない先生がいることも事実です。
また、PTAが不登校の子のための活動に積極的かというと、一枚岩とは言えません。PTA自体の組織運営が煩雑で、人によっては「他人の子どもの不登校にまで手を出す余裕がない」という本音もあるでしょう。ドラマのように「一平が率先して企画し、PTA副会長まで巻き込む」という展開は、ある意味理想的であり、同時に「そこまでする大人は稀なのでは」という現実的な厳しさも感じます。
ただ、こうした“理想”をドラマで描くことで、不登校児や保護者が少しでも「自分たちだけが悩んでいるわけじゃないんだ」と思えたり、学校や地域社会が「不登校の子どもを受け入れる選択肢って、こんなにあるんだ」と気づくきっかけになるかもしれません。その意味で、フィクションの力は大きいと言えるでしょう。
不登校に関してドラマから学ぶメッセージ
1. 「不登校は問題ではない」という考え方
まず大前提として、「学校に行かない=悪いこと」という認識を改める必要があると感じます。特に日本では長らく「義務教育」という言葉が、子どもに“学校に行く義務”があるかのように誤解されがちでした。しかし実際に法律が定めているのは「国や自治体が子どもに教育を受ける機会を保障する義務」であって、子ども自身に「学校へ行く義務」はありません。
学校に行かなくても学ぶ手段はある
ドラマの一平が提案したキャンプのように、自然体験や社会体験など、学校の教室以外でも学べる場所はたくさんあります。フリースクール、NPO、家庭学習、オンライン学習……。学び方の選択肢が増えている現代、「学校の教室で学ぶことだけがすべてではない」という認識を持つことはとても大切です。「登校しないこと」それ自体を否定しない
不登校の子どもたちは、何らかの理由や背景があって今の学校生活に馴染めないわけで、そこには必ず理由があります。それを“甘え”や“わがまま”だと一方的に決めつけると、子どもの心はさらに傷つき、追い詰められてしまうかもしれません。大切なのは「どうして行きたくないと思ってるの?」「何があれば通えそう?」と声をかけ、対話することです。社会が子どもを“不登校”と呼ぶ必要はあるのか?
そもそも「学校に行っていない」状態を“ラベル”として呼ぶ必要があるのか、という問題提起もあります。例えばフリースクールに毎日通って元気に過ごしている子がいたとしたら、それは本当に“学校に行っていない”だけで“学びの現場には通っている”わけです。こうした概念のアップデートも進めていきたいところです。
2. 「支援のあり方を変えるべき」:多様な選択肢と個別対応
日本の教育は、長い間「みんな同じ教室で、同じ時間割で、同じ学習を進める」ことが当たり前でした。しかし、不登校が増える今、そうした“一律”のやり方に合わない子は確実に存在します。むしろ、「同じじゃないと不安」という価値観より、「違うことを認め合う」価値観が重視される時代になってきました。
具体的な事例:フリースクールやオンライン学習
現在、全国にあるフリースクールの数は正確に把握が難しいものの、NPO法人が中心となって増え続けており、大都市圏だけでなく地方都市にも広がりを見せています。フリースクールでは学校と異なる時間割や授業スタイルが採用され、子どもは自分の興味に合わせて学習を進めることができるところが多いです。
また、オンライン学習も急速に普及しています。コロナ禍をきっかけにZoomなどのツールが定着し、学校の授業をリモートで受講する子もいれば、民間のオンラインスクールで個別指導を受ける子もいます。自宅にいながらでも、学びを途切れさせない仕組みが確立しつつあるのです。個々の状況に合わせた柔軟な対応がカギ
子どもによって得意・不得意、好き嫌い、環境要因などは千差万別。だからこそ、学校復帰を“ゴール”にするのではなく、その子自身が「どんな大人になりたいのか」「何に興味があるのか」を見つけるサポートが重要です。ドラマの一平が「ひまりが笑ってくれるなら学校に行かなくたっていい」と言ったように、まずは子どもの心の安定を最優先に考えるのが良いのではないでしょうか。“親の会”を否定しないで
ドラマでPTA副会長が「親同士で話すだけじゃ意味がない」と言っていましたが、実際には親同士が悩みを共有することで得られる安心感や情報交換のメリットは非常に大きいです。地域やオンラインで開催される不登校の親の会は、子どもを取り巻く問題に関するヒントがたくさん得られる貴重な場です。親自身も孤立しないようにするために、そうしたコミュニティは積極的に利用してもいいと思います。
3. 「家庭や社会の対応の重要性」:親だけに負担を押し付けない
不登校になると、どうしても“親の責任”にフォーカスが当たってしまいがちです。「あの家はちゃんとしつけてないから」「親が甘いんだ」という目で見られ、本人も親も傷つくケースが後を絶ちません。しかし、家庭だけで問題を解決しようとしても限界があります。
親が無理をしすぎると家庭内が余計にギスギスする
子どもが登校しないことで、親が会社に休みや遅刻を繰り返すと、経済的にも精神的にも追い詰められ、イライラが募ることがあります。ドラマで正助が見せたような“ひまりに付き添うために仕事をセーブしなきゃ”という状態がずっと続くと、いずれは仕事も続けられなくなるかもしれない。そうなれば家庭の経済状況が悪化し、ますます生活が厳しくなります。学校や地域のサポートが欠かせない
子どもが学校に行けないからといって「親が何とかしろ」と突き放すのではなく、学校や教育委員会、地域のNPO、行政の相談窓口などがしっかり連携して支援する仕組みが必要です。カウンセリング体制を充実させたり、週に数回だけ登校する“部分登校”を認めたり、家庭訪問をしたり……。まさにチームとしてアプローチすることで、不登校の子どもの安心感が増すはずです。社会全体で「多様な生き方」を認める風潮を作る
最後に最も大事なのは、“学校に行かないなんてありえない”という固定観念を、私たち一人ひとりが捨てることではないでしょうか。中学生になったら絶対に塾へ行く、高校は全員受験する、大学へ行かないと就職が難しい……といった画一的なレールから外れる子どもたちを、社会全体で否定しない姿勢が求められます。ドラマの一平が「利用」と称しつつも、実際は一人ひとりと真正面から向き合っていたように、私たちも不登校の子の声を直接聞く努力が必要なのかもしれません。
4. ドラマ第3話のメッセージと、私たちへの問いかけ
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ここまで長々と書いてきましたが、ドラマ『日本一の最低男』第3話が伝えているメッセージはかなりシンプルです。それは「学校に行かない子どもたちを、どう受け止めるのか?」という問いかけにほかなりません。登場人物たちの会話やエピソードを通じて、“不登校を責める”のではなく、“子どもの本音と向き合おう”というメッセージを感じます。
一平というキャラクターは、もともとは自分勝手で打算的に動いていたはずなのに、気づけば誰よりも子どもたちの気持ちを引き出し、解決策を実行に移していきます。利用するつもりが、結果的には不登校児たちの居場所づくりにつながっているというのが、視聴者にとっては痛快であり微笑ましい部分でもありました。
5. 不登校を「問題」と捉えず、未来への選択肢に
ここまで、『日本一の最低男』第3話のあらすじを詳細に追いながら、不登校についての日本の現状やデータ、そして私自身の考えをたっぷりと書かせていただきました。最終的に強調したいのは以下の点です。
不登校は問題行動ではなく、多様な学びのスタイルの一つであること。
学校に行かない理由は子どもによって千差万別で、必ずしも怠けや甘えではありません。行けない状況には何かしらの理由や背景があり、それを一緒に考える姿勢が大切です。支援のあり方を変えれば、不登校の子どもたちは自分に合った学びを見つけられる。
フリースクールやオンライン学習のほか、地域の学習支援やボランティアなど、学校以外の場所で成長する選択肢がすでに広がっています。制度や制度外のサービスもうまく活用することで、子どもが再び生き生きと学ぶ姿を取り戻すことが可能です。家庭と社会が連携し、“親のせい”で終わらせないこと。
親が孤立してしまうと、子どもの不登校問題はさらに深刻化します。行政や学校、PTA、地域のNPO、インターネットなど、さまざまなリソースと繋がりながら支援を受ける仕組みが必要です。ドラマのように“みんながほんの少しずつ力を貸してくれる”世界になれば、子どもも親も「自分だけじゃないんだ」と前を向きやすくなります。ドラマというフィクションだからこそ見えてくる理想像を、現実にも活かそう。
『日本一の最低男』で描かれる一平の行動力や、周囲を巻き込む力は、現実ではなかなか真似できないかもしれません。ですが、あの物語に「こんな支援のかたちもあるんだ」と教えられたり、不登校の子を理解しようとする視聴者が増えるきっかけになることは十分考えられます。フィクションの力を侮らず、そこから得られるヒントを各々が実生活に活かしていければと感じます。
学校に行けない子どもたちが示す、未来へのヒント
最後に、私自身が身近で見聞きしたエピソードを少しだけ紹介します。友人の子どもが中学1年で不登校になり、家に引きこもってゲームばかりしていた時期がありました。「将来どうなってしまうのか」と親は不安でしたが、本人はゲームを通じてプログラミングやデザインに興味を持ち、フリースクールでITを学び始めたそうです。結局、高校には進学せずオンライン学習で単位を取得し、その後はゲーム開発関連の仕事に就きました。今では親を経済的にも支えられるほどの収入を得ていると聞き、驚かされました。
こうした事例はレアケースかもしれません。しかし、「学校の枠組みだけでは気づけなかった才能や可能性を、不登校という選択(あるいは結果)によって見つけることがある」とも言えます。本人の気持ちを大切にし、好きなことや得意なことを伸ばす環境を整えれば、学校を休んだって人生が終わるわけではないのです。
ドラマ第3話でも、ひまりが得意な“料理”を通じてみんなに笑顔を与え、それが父親との関係修復にも繋がりました。学校に通うことだけが人生の正解ではないし、通わなくても多くの学びは得られる。そんなメッセージを感じ取ることができるエピソードだったのではないでしょうか。
おわりに
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長い文章を読んでいただき、ありがとうございました。ドラマのストーリー解説から始まり、不登校に関する統計データ、そして私自身の独自の意見を交えてまとめてみました。不登校はデリケートな問題だけに、一律の解決法や正解があるわけではありませんが、「学校に行かない子どもがいる」という現実を否定せず、社会全体でどう支えていくかを常に考えていく必要があります。
もしこの記事を読んでいる方の中に、不登校の子どもを持つ親御さんや、不登校で悩んでいる当事者の方がいるならば、「決してあなたは一人じゃない」と伝えたいです。探せば多くのサポートが用意されているし、同じ悩みを抱える人たちが作ったコミュニティも存在します。勇気を出して一歩踏み出せば、きっと道は拓けるはず。
そして、ドラマ『日本一の最低男』の今後の展開にも引き続き注目していきたいですね。一平がこれからどんな“最低”な方法で世の中を動かしていくのか、そしてどんな素敵な“最高”の結果をもたらすのか、楽しみにしています。
以上、ドラマ第3話から考える「不登校」についてじっくり語ってみました。最後まで読んでくださり、本当にありがとうございました。