【徒然】ポルノグラフィティ最高傑作「瞳の奥をのぞかせて」をまとめさせて
「アポロ」「サウダージ」「アゲハ蝶」「ハネウマライダー」など、数々のヒット曲を持つバンド・ポルノグラフィティ。
今なお進化し続ける彼らの楽曲の中で、僕が最も愛し、愛し、愛している曲が30枚目のシングル「瞳の奥をのぞかせて」。
2010年時点の作詞、作曲、歌唱技術・・・ありとあらゆるものの最高レベルを凝縮した作品といっても過言ではない、むしろこの表現では謙遜しすぎているほどのクオリティと世界観。控え目に言うて神曲。
2010年時点におけるポルノグラフィティのありとあらゆる魅力と力をまとめた「集大成・完成形」と言っても過言ではない一曲。いや、ポルノの全盛期は常に更新されているけれども・・・。
しかしこの曲もっと世間様に知られてよいはず。ということでこの曲の基本情報(一部個人的な感想あり)をたっぷり詰め込みました。果たしてどこまでを基本と呼ぶのか。
基本情報
収録媒体
ジャケット写真
ジャケット写真にポルノの二人が登場するのは16thシングル「黄昏ロマンス」以来。
全体では灰色の背景とモノトーン風の落ち着いた色味で、青色の文字での「PornoGraffitti」が目を惹くデザイン。曲タイトルは白文字で手書き風のフォント。昭仁と晴一がテーブルで食事をしているシーンとなっています(なおナイフ&フォークの置き方から、昭仁は「食事終了」、晴一は「食事中」となっている)。二人ともジャケットを羽織り、シックで大人な印象を漂わせるジャケット写真です。
「瞳」のタイトルを意識してか、正面をまっすぐ見つめてくる二人が印象的。音楽室のベートーベンみたく、どこから見ても見つめられている気がする。通常ジャケット、初回特典のアナザージャケット、CD裏ジャケットのいずれでも基本構図は同じですが、異なるポイントは以下の通り。
ミュージックビデオ(MV)
8thアルバム「∠TARGET」特典映像として収録されており(メイキング映像、TVCM映像も収録)、公式YouTubeでもショートバージョンを見ることが可能です。
小部屋で二人が演奏するシーンをメインとし、ステージインからアウトまでが撮られています。ステージとなる小部屋には、横たわる女性をイメージしているオブジェ(画面左)、ピンク色の砂の山などを設置(画面右)。
歌唱・演奏シーンでは、昭仁が珍しく後ろに手を組んで歌ったり、スタンドマイクに手を這わせたりと、ファンがムズムズする要素が多く取り入れられています。また晴一はギターをアンプに繋ぐ/外すシーンまで撮られています。
映像中(主に間奏部分)に14回、様々な模様の布(?)がカットインされ、目を惹く。Cメロではそれが燃やされているシーンも登場し、全体として静的な雰囲気の映像の中で、動的視覚的な印象を残す要素になっています。
歌唱シーンのほかに、茶色のシルク布で目隠しをするシーン、目隠しを外すシーンがあり、(見えないことによる)エロさを表現しているらしいです。昭仁は右側から力業で外し、晴一は後ろの結び目から外す。昭仁の方が少しだけ早く取り外し終わる。ほかにもあえて目を映さない、ついつい追ってしまう効果的な視線など、「瞳」にかけて視線や目を意識した要素があります。
二人の食事シーンも。お料理はオーブンで焼いたトマトが一つ置かれたお皿に黒いソースが一筋引いてあるもの。演出として二人そろって3口で食べ終わってほしいというオーダーがあったが、昭仁が2口で食べ終わり、晴一がナイフ捌きに手間取るなどなかなかタイミングが合わず、何度もテイクを重ねられたとか。晴一曰く「正解のないトマト切り」。
目隠し、食事シーンのテーブルクロスは監督曰く「キテる」らしく、絶妙な配置になっているテーブルクロスを踏まないように注意されるが、実は晴一がスタジオイン時にちょっとだけ踏んでいます。
ラストサビでは冒頭の歌詞にある「青いインクで書かれた美しい文字」のような筆記体の文字が浮かび上がるものの、何と書いてあるかは不明(おそらく英語だが解読できず)。
生写真風を目指して加工された映像、落ち着いた雰囲気ながら動的な要素がアクセントとなっているギミック、目・視線にちなんだ要素などが取り入れられ、遊び心もありつつ全体として大人でアンニュイな映像になっています。楽曲は言わずもがな、一つの映像作品としても非常にをかし。
タイアップ
19thシングル「ジョバイロ」以来4年3カ月ぶりのドラマ主題歌。北村一輝初の連続ドラマ主演作として、金曜21時から全8話(1月15日第一回放送)放送。ドラマがヒットしたのかどうかはあまり存じ上げない、すみません。大人の欲望渦巻く世界の物語だそうで、曲とは合っていると思います。
なお、カップリング曲「Rainbow」も天皇杯全国都道府県対抗男子駅伝のタイアップがついています。本タイアップのための書下ろしの曲で、カップリング曲にタイアップがつくのは10thシングル「渦」の「ワールド・サタデーグラフティ」以来。瞳の奥が落ち着いたモノトーンを基調としているのに対し、カップリング曲は「七色」というのがまた憎い。
ライヴでの披露
ライヴの定番曲!・・・というわけではなく、シングル曲の中ではなかなかライヴで演奏機会に恵まれない、言わばレア曲の類。しかし後述の通りメンバーの自信作でもあるためか、披露される際はそれなりに待遇が良い。
初披露は記念すべき2009年11月28日 東京ロマンスポルノ‘09~愛と青春の日々~のアンコール。今までのポルノにありそうでなかった3連のリズムが会場に響いたのだと想像します。なぜ僕はこの場にいなかった…!
このライヴは10周年記念のライヴで、メンバーの当時の年齢に合わせて1日で35曲が披露されたという伝説のライヴ。瞳の奥はアンコール1曲目(通算32曲目)で、当時はタイトル未定の新曲として演奏。
以降のライヴ演奏は以下の3回(少ないぞ)。
①アルバム「∠TRIGGER」を引っ提げて行われたツアー「∠TARGET」
ほぼ原曲通りのアレンジで披露。バイオリンはレコーディングにも参加したNAOTO。実はこの曲をポルノがバンドとして原曲通りのアレンジで演奏したのはこれが最後(2021年時点)。原点にして頂点という言葉はこの曲ための言葉。
②アルバム「RHINOCEROS」を引っ提げて行われたツアー「THE DICE ARE CAST」の大阪追加公演。
使用楽器はギター、キーボード、パーカッションのみで、この曲の特徴であるバイオリンもなし。ドラマティックな演出・アレンジで披露され、ライヴDVDにも収録。視覚的な印象付けとして、ステージにタペストリーが掛けられています。アレンジはオリジナルよりスローテンポで、一音一音がより力強い印象を与えてくれます。この頃の昭仁の表現力・歌唱力のアップ、バンドメンバーによる緻密な音の組み立てにより、言わばアナザー瞳の奥としてその世界を広げた神アレンジ。原曲とは違う女性が主人公です(妄想)。
③20周年記念ライヴ NIPPONロマンスポルノ’20「神VS神」の二日目、昭仁の弾き語り。
2番よりバイオリンのNAOTOゲスト出演。オリジナルよりもどちらかというとダイキャス版に近いテンポやアレンジで、アコースティックの弾き語りであり、ビッグエッグ・東京ドームの中央ステージで披露。”出血大サービス・ポルノの代表曲祭り”であったこのライヴのセットリストの中で、瞳の奥が選曲されたこと自体もさることながら、NAOTO自身が久々のポルのライヴ参加ということも相まって、ファンの度肝と魂を抜いた1曲。出血どころか急性発作。
実は「この「さよなら」はひと時のため?」が「その「さよなら」」と歌詞間違えしている(歌詞間違えは昭仁の十八番)。原曲、ダイキャスでのアレンジとまた違う世界を生み出した罪なアレンジ。成長の止まらない「常に更新する全盛期」の昭仁の歌声により、10年ぶりにリマスターされたとも言えます。このアレンジも主人公は原曲と違(略)。
歌詞
作詞は我らが言葉の魔術師・晴一。「あなた」と「私」が登場し、私視点で描かれるストーリー。一般的に「私」は女性と解釈され、ポルノ自身もインタビュー等で女性目線の曲であることに言及しています。
不倫に代表されるような「オトナの禁断の思い・禁断の恋」の楽曲として解釈されるのが一般的ですが、具体的な「私」「あなた」の属性や関係、感情などはあまり多く語られず、作詞家・晴一らしい美しいフィクションの世界が描かれています。
ワイングラス、インク、(ピアノのように磨き上げた)黒い車など、物質を場面場面に登場させることで、間接的に「あなた」と「私」の関係性や属性を想像させるほか、「青いインク」「淡い赤色」「黒いピアノ」など視覚的な色の表現が印象に残る。使用される単語はどこかラグジュアリー感・リッチ感のある単語で、想像(妄想)がはかどりますね。
「サウダージ」「ジョバイロ」に代表されるように、女性的な目線の詞を書かせたら晴一に勝るものなし。
曲・歌
作曲は昭仁。自分が歌うのを分かっていて、ようこんな難しいリズムの曲を作りなさったな。まあ昭仁は歌えるんですけど。
先述の通り3連のリズムとバイオリンが特徴的。イントロでの静かなピアノ3連リズムからバイオリンが入ってくるところは毎回鳥肌。世界観に引き込む要素として十分すぎる。本人が言っているように、「ポルノといえば」な要素でもある異国情緒感も感じさせます。サビのキー非常に高く(というかポルノの曲は高いけど)、感情の高まりとシンクロして耳が満たされる。
歌唱に関しては言わずもがな、昭仁のハイレベルな歌唱力・表現力が活きる曲。「空のワイングラス」は「かぁらのワイぃングラスぅ」、「青いインク」は「あをぉいインクゥ」というように、母音の余韻・吐息感がすごい。エロい。リズムも相まって吸い込まれそうになる(?)。力強くもたおやかな印象で、これはライヴでのアレンジでも原曲でも共通する要素。同じ言葉でも曲が進むごとに乗せている感情が違い、各サビで出てくる「それだけでいい」もそれぞれ全然違う意味を感じる(僕だけ?)。
エピソード
■晴一曰く「オトナのドラマに合うように心の影と光を描いた」、昭仁曰く「異国情緒な曲」「渾身の楽曲」。タイアップ先の北村一輝曰く「心地よいメロディと女心の深さを感じた」。
■デモ段階ではテンポが速すぎて歌えない疑惑があり、細かくテンポ調整したが結局昭仁が慣れてしまい、最終的にはデモ段階より速いテンポで完成したらしいです。ちょっと何言うてるか分からない。
■昭仁曰く、「メロディが浮かび、いけるんじゃないかと思った」「歌詞やメロディ、アレンジなど、チームでの世界観が一致しトントン制作が進んだ」(意訳)という曲。バイオリンについては、たまたまNAOTOに「今晩来れるか」と聞いたところ快諾され、急遽スタジオに呼ばれてそのまま採用となったそうです。
■仮歌詞の段階で出ていた単語に「マタドール(闘牛士)」がある。歌詞中「あなた」が闘牛士で「私」が牛?意のままに操られて最後に剣で一刺し。そういうこと?(妄想)
■ファンの間で使われる略称・愛称は「瞳の奥」。神VS神ではMCで昭仁も「瞳の奥」と語っています。
■MVで使用されたピンクの砂は小瓶に入れられてファンクラブの会報内抽選で、20名にプレゼントされました。また同じくファンクラブ会報企画にて、ラバッパー(ファンクラブ会員)が選ぶ好きなイントロ6位に選ばれています(2012年ごろ時点)。
■売上チャート最高4位で、「メリッサ」以来続いていたTOP3ランクインを逃した。これは世界の方がおかしいので瞳の奥は悪くないです。
■2010年2月4日「笑っていいとも!」のコーナー、テレフォンショッキングにaikoの紹介でポルノとして初登場した際、リリースを控えていた瞳の奥を紹介。つまり歴史ある番組の名物コーナーにポルノが初登場した時の曲が瞳の奥。タモリに「眼球検査?」と言われる。ちなみにこのコーナー内の企画「100分の1アンケート」はaikoに倣ってダジャレで挑み、晴一が「この冬猫と寝込んだ人」と聞いて見事0人で失敗。
■ポルノ20周年記念イベントの一つ「ポルノ展」での、言葉をタッチするとそのフレーズが入った曲の一節を聴ける「リリックウォール」では「置き去り」を選択すると1番Aメロの一部を聴くことができました。
■同じくポルノ展でファンを狂わせたイベント「ジュークボックス」。これは3つの質問に答えることで、回答の組み合わせに応じた曲のカードが手に入り、答えの組み合わせによって出てくる曲が決まっているというもの。
各問の選択肢を「d、c、d」(緑、ラブストーリー、聞き入りたい)で選ぶと瞳の奥が出てくる。・・・はずですが、当該選択肢で出る曲数は非常に多く、この曲を出すにはかなりの運が必要。僕は何巡しても巡り合えなかったです。こんなにもあなたのことを想っているのに。
■20周年記念グッズの1つ「狩歌(かるた)」において、収録されている言葉で瞳の奥に該当するものは以下の通り。すべて取れば19点になります(たぶん)。
これであなたも瞳の奥をのぞけます
ポルノの代表曲といえば?と聞かれて即答されるような曲では残念ながら、非常に残念ながら、ないのですが、この世界観、表現力、一度は浸ってほしい。全人類に。この基本情報をおさえれば、あなたも瞳の奥をのぞけます!やったね!
曲の解釈はいろいろあってそれで良いと思うので、あまり基本情報としては書きませんでした。過激ファン・僕による曲・歌詞解釈(妄想と読む)は別途記事にしました。脅威の1万字超え。自分でも少し引いてます。良ければこちらからどうぞ・・・。