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頻尿とデリケートゾーンの痒みの解消法

デリケートゾーンの痒みは「排尿障害」が原因

 デリケートゾーンの痒みは、女性では「カンジダ性膣炎」と診断されることが多いでしょう。しかし、検査しても真菌が見つからない場合もあります。
 男性では「インキン」と言われるかもしれません。しかし、陰嚢がインキン(白癬菌感染)になることは滅多にありません。
 このように、「菌が見つからない痒みの原因が『排尿障害』にあることが多い」と、泌尿器科医の高橋知宏医師が指摘しています。どういうことか、順に説明していきましょう。

なぜ「頻尿」になるのか?

 一般的に、「1日8回以上」トイレに行くようであれば「頻尿」と言われます。しかし、頻尿で悩んでいる人たちには1日に30~40回もトイレに行く人がたくさんいて、なかには80回以上!という人もいるようです。これでは日常生活も不自由です。
 また、夜寝ているときに何度もトイレに行くようだと睡眠不足になりますから、放置しておくのは危険でしょう。
 通常、「膀胱のC繊維という神経線維が異常に興奮しているから頻尿になる」と考えられていますが、高橋医師によると、頻尿の原因は「排尿障害」にあるようです。
 膀胱内の筋肉が緊張することによって、膀胱全体が非常に過敏になり、頻繁に尿意を催して頻尿になるということです。
 なぜ、膀胱内部の筋肉が緊張するのでしょうか?
 それは、『排尿時に膀胱の出口が十分に開かない』からです。そのため膀胱の出口が硬くなり、それによって前立腺が肥大して慢性前立腺炎になったり、膀胱炎のような症状や陰部の痒みがおきたりするのです。
 膀胱の出口が硬くなって排尿時に十分開かないと、非常に狭い尿道を通る尿がジェット水流になります。水を撒くホースの先端をつぶすと、勢いよく水が飛ぶのと同じです。ジェット水流によって、尿道の粘膜が傷つきます。そうして傷ついた粘膜に、尿に含まれているシュウ酸カルシウムやリン酸カルシウムが沈着して吸収されていくことで、前立腺や膀胱が石灰化していく結果、前立腺肥大や間質性膀胱炎になるというのです。
 そして、膀胱や前立腺などの異常が、仙骨から脊髄を介して脳に伝えられます。この際、膀胱や前立腺の異常情報が、仙骨の脊髄から直接ほかの器官に伝わってしまうと、陰部の痒みや痛みという「関連痛」がおきます
関連痛はほかにも、腰痛や坐骨神経痛、顔の痒みやめまい、腹痛や胃もたれなど、膀胱や前立腺とはまったく関係がないところに症状が現れることもあります。
 排尿障害による頻尿には、膀胱内の筋肉を弛緩させる薬(抗コリン剤)が有効ということです。抗コリン剤については後ほど解説します。

膀胱炎

 男性の尿道が約20cmあるのに対して、女性は尿道が約4cmと短いために、尿道から細菌が侵入して「細菌性膀胱炎」がおきやすいです。細菌性膀胱炎は、抗生物質を何日か飲めば治ります。
 ところが、細菌がいない「無菌性膀胱炎」もあります。この場合、いくら抗生物質を飲んでも治りません。
 原因の一つに、抗アレルギー薬(抗ヒスタミン剤)があります。抗ヒスタミン剤の副作用で、膀胱粘膜が赤く腫れる「アレルギー性膀胱炎」です。この場合は、抗ヒスタミン剤を中止すれば治ります。
 また、風邪のウイルスによる「出血性膀胱炎」もあります。これは、風邪が治れば症状も治まります。
 ここまでは、急性の膀胱炎です。

 一方、慢性膀胱炎は、「急性の膀胱炎が慢性化したもの」ではなく、まったく異なる原因による膀胱炎です。
 慢性膀胱炎の原因の多くは、膀胱の出口が十分に開かないことによる「排尿障害」です。
 排尿障害の症状は、頻尿や夜間頻尿、尿漏れや尿失禁、残尿感、尿が二筋になったり散ったりする尿線分裂、排尿痛や排尿困難などで、「関連痛」として陰部の痒みや痛み、顔や頭皮の痒み、腰痛や腹痛などがおきることもあります。
 この場合、膀胱内の筋肉を弛緩させる薬(抗コリン剤)が有効とのことです。
 コリンとは、副交感神経の伝達物質であるアセチルコリンのことです。アセチルコリンは、膀胱を収縮させるとともに尿道をゆるめることによって、尿を排泄させます。
 抗コリン剤は、アセチルコリンの作用を抑える薬です。膀胱内のムスカリン受容体に結合して、膀胱と尿道の筋肉をゆるめることで、陰部の痒みや痛みなどを緩和します。また、過活動膀胱の神経過敏を抑えて、膀胱を弛緩させて、尿を溜めるように働くため、頻尿にも有効です。
 抗コリン剤には、「ベタニス」や「バップフォー」「デトルシトール」「ベジケア」などがあります。

 また、「間質性膀胱炎」という膀胱炎もあります。これは、1日数十回という頻尿と、陰部の強い痛みが主な症状で、原因は不明です。しかし、前立腺肥大の治療薬(α1ブロッカー)を飲むことで、症状が軽減されるということです。α1ブロッカーは、前立腺や尿道のアドレナリンの受容体を遮断することによって、前立腺や尿道の筋肉をゆるめる作用があります。
 α1ブロッカーには、「ハルナール(タムスロシン)」や「ユリーフ(シロドシン)」「フリバス(ナフトピジル)」「アビショット」などがあります。
 間質性膀胱炎の症状が、アドレナリンを遮断することで軽減するということは、「交感神経の緊張」が原因と考えられます。つまり、ストレスによって交感神経が緊張してアドレナリンが分泌されることによって、尿道が強く収縮しておきるということです。

 以上まとめると、このようになります。
①    「排尿障害(膀胱出口の硬化)」による頻尿や陰部の痒みには、『抗コリン剤』。
②    「交感神経の緊張(尿道収縮)」による頻尿や陰部の痒みには、『α1ブロッカー』。

「首」と「背骨」をゆるめる効果

 排尿障害(膀胱出口の硬化)による頻尿や陰部の痒みには、首(胸鎖乳突筋)をゆるめることが有効です。胸鎖乳突筋は、耳の後ろ(乳様突起)から胸骨と鎖骨にかけて付いている筋肉で、この奥に頸動脈と頚静脈と迷走神経が並んで通っています。
 胸鎖乳突筋をゆるめれば迷走神経がゆるんで、副交感神経の働き(アセチルコリン作用)を抑えることができます。
 胸鎖乳突筋をゆるめるには、大胸筋をオイルマッサージしてゆるめればよいのです。

 一方、交感神経の緊張(尿道収縮)による頻尿や陰部の痒みには、背骨をゆるめることが有効です。背骨の両側には「交感神経幹」が通っていて、背筋が緊張することで交感神経も強く緊張してしまうからです。
 オイルマッサージで背筋をゆるめれば、交感神経がゆるんで、アドレナリン作用を抑えることができます。

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▶胸鎖乳突筋のゆるめ方を解説した『首をゆるめて自律神経を整える』(知道出版)はこちら

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