デザイナーとの契約について
これまでに、デザイナーの探し方、デザイナーとの仕事の始め方について書きました。
今回はデザイナーとの契約について書きます。企業や案件ごとに結ぶべき契約方式は異なるので、あくまで参考にする程度で考えて下さい。
そもそも契約とは
「契約」とは「約束」のことです。「口約束」でも「契約」は成立します。しかし、口約束は「証拠」がないのでトラブルの元です。そこで、約束した事項(合意事項)を書面にしたものが「契約書」です。「契約書」というタイトルでなくとも、合意事項が記されていれば「契約書」です。デザイン契約は、「無から有を作り出す作業」が取引の本質なので、「合意すべき事項」が多く、書面化しておかないとトラブルが発生します。
引用元:デザイナーにとってのデザイン契約
公益社団法人 日本インダストリアルデザイナー協会
契約書が無くても、契約は成立する。
「口約束」でも、「契約」は成立します。しかし、先ほど書いた通り、証拠として残らないので、トラブルにもなりやすいです。そこで、見積書やメールとして文面として残すことが重要になります。
例えば、見積書をクライアントに提出し、見積もりに基づいて発注するとメールでも電話でも連絡があれば、契約は成立します。
つまり、「契約書」と書いてある書類でなくても、裏付ける証拠や書類があれば、契約を証明することができます。
デザイナーの仕事は「下請法」で保護されています。なので、作業後・納品後に支払われなかった場合や値引きの交渉があった場合は、基本的にはデザイナーの方が有利であることは覚えておくと良いです。
契約の種類
契約は依頼内容に応じた形式を選ぶことになりますが、ざっくり分けて3種類あります。
①「単発契約」
1つのデザインまたは、複数にまたがるデザイン案件ごと(商品開発・プロダクトグラフィック・ロゴ・パッケージ、カタログなど)を依頼する場合に結ぶ契約。
②「プロジェクト契約」
継続的に同じクライアントとデザイナーが仕事をする場合に結ぶ請負契約。案件毎ではなく、期間を決めて結ぶことが多い。仕事毎に契約書を結ぶ必要は無く、基本的な合意をまとめて、案件毎に作業費を支払う契約もある。
③「コンサルティング契約」
長期間のデザインコンサルティングやブランドディレクション、企業のトータルデザインに関わる場合に結ぶ契約。一定期間毎に、月毎に支払いするケースが多い。
契約書について
企業と個人デザイナーとの契約で一般的に用いられる契約書が、「デザイン業務委託契約書(請負契約書)」になります。明記すべきこと は、「依頼内容」「作業期間」「デザイン料」「知的財産権」などになります。
①依頼内容について
依頼内容については、できるだけ具体的に明記することでトラブルが減ります。新商品開発なのか、既存製品の改良なのか、外観デザインだけか、コンセプトだけかなど。成果物においても、納品するデータ、模型、提案する数、データ形式なども、明記しておきましょう。
②作業期間について
いつ開始し、どの段階で作業が終了するのかを明記しましょう。納品後やプロジェクト終了後に修正の依頼が来ることも多いので、追加の費用についても書いておくと良いです。
①いつ開始するのか
②いつ終了するのか
③終了後の修正について
③デザイン料について
デザイン料も依頼内容に応じた形式を選ぶことになります。
①イニシャルフィー(一括払い)
②イニシャルフィー(一括払い)+ロイヤリティ
③ロイヤリティ
④時給払い
⑤毎月払い
イニシャルフィー(一括払い)は、あらかじめデザイン作業に対して定めておいたデザイン料を一括で支払います。契約時ではなく、納品時やプロジェクトが終了した時点で支払うのが一般的です。
費用については詳しく書く必要があるので、次回以降に書きます。
④知的財産権について
まず「デザインを売る」と「権利を売る」は別です。また権利は、発案者(デザイナー)がまず保有していることは法律で規定されています。なので契約書ではこのようなパターンで明記する必要があります。
①デザイナーが保有する
②発注者に譲渡する(譲渡する場合は対価を明記)
③デザイナーと発注者が共有する
こちらも、次回以降に知的財産権について詳しく書きます。
最後に
いかがでしたでしょうか?参考資料には、契約の雛形が載っているので、デザイナーとの契約を検討している企業やまだ契約を結んだことのないデザイナーは参考にしてみて下さい。
参考資料:
https://www.tokyo-kosha.or.jp/support/shien/design/guide.html
https://www.jida.or.jp/site/design_profession/contract.html
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