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“深夜31時半” の意欲作 ー絆…ネクサスー

-シリーズ趣味を語る #5-

“特撮オタク” を自称する僕であるが、その守備範囲は何も仮面ライダーとスーパー戦隊だけではない。

幼い頃から、“ニチアサ” と同等に「ウルトラマン」シリーズを観て育った。

僕がリアルタイムで最初に観たのは「ウルトラマンコスモス」だったが、その次に観たのがこの「ウルトラマンネクサス」だ。

ファンの間でも好き嫌いの分かれる作品ではあるが、リアルタイムで観ていた当時の僕は、話がよくわからないまま、躍動するウルトラマンの姿にのみ夢中になっていた。

Amazonプライムビデオで配信されていることを知り、大人になった今、改めて観返していたのだが、物語の奥深さに驚愕した。
今回は、その驚きをしたためていきたい。

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この作品は、放映枠である「午前7時半」を「深夜31時半」と解釈して制作されたものだ。
したがって、ストーリーには精神的な意味でかなり残酷な、気持ちがどんよりとしてしまうような描写が多い。

その代表例として、闇の力に取り込まれてしまった男・溝呂木眞也による、主人公・孤門一輝に対して行われた精神攻撃がある。

溝呂木は、孤門を自分と同じように闇に引きずり込むことを目論み、彼に絶望を与えるような仕打ちを執拗に行う。

溝呂木をはじめとした敵勢力は「人間の闇」に付け込もうとする。
そのため、特に序盤から中盤にかけて、それに伴う暗いストーリーが展開されてしまう。

さらに、この作品では主人公が(最初から)ウルトラマンに変身しない

これまでの作品は、ウルトラマンが地球に長時間いるための仮の姿ないしは仮住まいとして、1人の人間の体と融合するというパターンが多かった。

しかし、この作品では変身者が1人ではない

それは、最初に登場する変身者(作中では「デュナミスト(適能者)」と呼ばれる)である姫矢准がデュナミストでなくなる際に孤門に言ったセリフが物語っている。

光は絆だ。誰かに受け継がれ、再び輝く。

ここでの「光」は「ウルトラマンの力」のことである。
これは敵勢力の力が「闇」であることと対比されている。

つまり、この作品の物語の大筋は、平たく言えば「光と闇の衝突」なのである。

そこに含みと幅を持たせるのが、この作品の科学特捜隊にあたる「ナイトレイダー」とその指揮権を持つ「TLT(ティルト)」である。
ちなみに、主人公の孤門はレスキュー隊からの異動でナイトレイダーの隊員になっている。

ナイトレイダーは、TLTの作戦を忠実に実行する実働部隊である。
そのため、基本的には作戦に関係する情報以外は詳細には伝えられない。

物語の実質的な鍵を握るのは、主人公でもデュナミストでもなくTLTであり、様々な怪獣(名称は「スペースビースト(略称 “ビースト” )」)の殲滅作戦を行う中で、徐々にナイトレイダーに秘密が明かされていく。
そして同時に視聴者にもそれが明かされる。

詰まるところ、TLTは視聴者に対する物語の説明役も果たしているのである。

このように複雑かつ綿密に作り込まれたシナリオは、大人を物語に引き込んでいく一方、子どもたちを完全に置いてけぼりにしてしまう。

結果として、この作品は打ち切りという結末を迎えてしまうが、随所に散りばめられた伏線は全て最終回までに回収される。
この点が、この作品が最も評価される点であると思う。

「ウルトラマン」に限らず、すべての伏線が回収されない作品は多少存在する。
そういう作品は、視聴し終えた時に “釈然としない” という感覚があると言うとわかりやすいかもしれない。

打ち切りになってもなお、全ての伏線を回収していくストーリー展開、そして作品自体の完成度には視聴者の1人として驚きを隠せない。

「どうせ特撮なんて、子どもが観るものでしょ。」なんて思っている人には、その先入観をぶっ壊しうる作品であるので、ぜひおすすめしたい。

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