映画『天外者』を観た

★ストーリー
五代友厚という実在した人物を描いた映画のはずだが、最近は五代春馬という架空の人物が浮き上がって見えるようになった。

★推し場面
▷あわや大金星の名演技！
母との別れを終えた五代が、玄関先で「父の仇」と腕を斬られる場面。
あの子役の子とは、衣装合わせの日が一緒で、その後、監督と一緒に撮影所を見学させてもらい、彼と監督がちょっとした稽古をする場面に立ち合わせてもらった。
あの役のまんまの実直な青年で、瞳を燃やして、監督と何度も何度も動きの確認と、感情の爆発のさせ方を繰り返していた。斬りつけたあと、稽古では怯えたように走り去ったように見えたが、本番では五代を斬り、血が見えたことで我に返り走り去るように演技を変えているように見えた。
たしかオーディションで選ばれた青年で、演技経験もほぼないと言っていたように思うが、この場面は横綱の五代春馬の胸を借りて、若手力士が大健闘を見せたかのような初々しさがある。
青年があの場当たり的な稽古の日から、本番の日までの数日間、役の背景を考えて、気持ちを作り、シミュレーションを重ねてきたのがわかる。
きっと、この場面が、あの青年が印象に残っているファンは多いはずだ。

★女優
蓮佛美沙子
▷あの日の蓮佛美沙子は凄かった！
天外者を、もう何回観ているかは分からないが、今日が一番良かった。そのなかで、少し新たな違和感を感じたのは、豊子を演じる蓮佛美沙子だった。
五代との出会いの場面。そう僕が出演しているあの場面。
人垣を割って入ってくる豊子の威勢の良さと、番頭に正論を真っ直ぐに投げかける豊子の正義感と、その後、五代を平手打ちにする気高さは、とても豊子らしかった。
豊子ファンだった僕は、その姿や蓮佛美沙子さんと幾つか言葉を交わすなかで、豊子が彼女で良かったと思えた。しかし、どうも妻となってからの豊子に、そうした素振りが消えてしまったように感じた。僕の豊子への理想が高すぎるせいかもしれないが、僕の知っている、あの日の豊子とは、違う人物かのようにさえ見えた。


★長澤まさみ研究
▷明るくて強いのも武家の娘。
長澤まさみの時代劇は『真田丸』しか頭に浮かばない。
天真爛漫な朗らかさが武家の娘を、よく表現出来ていた。武家の娘というと、正義感や気高さが基本のように思うが、そうしたものを全て覆い尽くしてしまうような度量と深みがあった。

★パンフレット
イオンシネマ常滑での再販売はなし。

★まとめ
▷今日が一番良かった！
最初に試写会を見たときから今日まで、冒頭部分の違和感は消えることはない。その度に僕も普通の講談師なんだなぁ、と思う。ただ、徐々にだけど、先にも書いたように、最近は五代友厚というより、五代春馬という架空の人物が浮き上がって見えるようになってきたからか、そうした違和感もあまり気にならなくなってきた。そのかいあってか、今日が一番良かった。

僕の反省は終演後の拍手。
僕から起こすべきだったなぁ、と反省してます。イオンシネマ常滑での初観賞だったから、自発的に起こるかを待ってしまいました。
昨日の配信では、とある劇場で起こった、エンドテロップでの拍手を話題にしたのに、自分がやらなきゃダメだよねぇ。