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ビジネスパーソンが一年間、芸術と向き合って学んだこと
昔から芸術鑑賞が好きだ。
美術館に足繁く通って西洋の絵画や彫刻はいろいろと観てきたし、近年は東洋的な芸術作品により魅力を感じ、鑑賞することが多くなった。
芸術についての理解をもっと深めたいと思っていたが、なぜ芸術に惹かれるのかについては自分でもずっとよくわからなかった。観ているだけでは本質的なことがわからないなと次第に思うようになり、一年ちょっと前に自分でもなにかやってみたい気持ちが湧いてきた。
写真は趣味として自分で昔からやっているし、みんなやってる。せっかくなら新しく絵でも学ぼうか、などと思っていたが、ふとキッチンにあった食器が目に入ってきた。
焼き物が好きだし、陶芸でも習おうか。周りでやってる人もいないし。
陶芸は昔に一度だけ体験したことがあるが、なかなかおもしろかった記憶がある。でも、特に自分で使う食器を作りたいわけでもないし、土を触ってなにか作ることを目的にしたくはない。時間をかけて芸事に真面目に向き合うことで、その本質的な意味のようなものを感じ取ることができるのかに興味があった。
ということで、いくつか教室を吟味して陶芸を習うことにしたのである。
仕事終わりや休日などに時間を作って週に二回ほど通い、気づけばいつの間にか一年以上が経過していた。
僕は普段、資本主義感満載のマーケティングの仕事をしているが、仕事はなんだかんだ忙しい。時間を捻出するのは大変なこともあるが、仕事中に芸術のことを考える機会もないしそんな必要もない。そのため、ディスプレイなどを見ることなく陶芸を通じて自分自身と向き合う時間を作るのは、気分転換にもなってとても有意義な時間だった。
とは言え土遊びをしたいわけではなく、やるからには本気だ。先生から指摘を受けたり叱られることもしばしばある。
思い通りにいかないことしかないが、一年続けたことで何らかの学びはあった気がするので、一旦まとめようと思う。
もしかしたら数年後に見返したときに、的外れで浅はかなことを言っているかもしれないが、それはそれ。
陶芸を一年間続けて学んだこと
結果より過程
ビジネスだと結果か過程のどちらかを取れと言われたら、結果を取ることが多いと思う。結果が出なかったら組織や個人が潰れてしまうからだ。
陶芸においては、どのような物ができたかという結果も重要なのだが、それ以上に大切なのはプロセスだと思っている。
例えば目的の物を作るためには、どのようなプロセスを踏むかを考え選択しなければならない。そのプロセスは自由であるが、技術が上がれば上がるほど踏む過程の選択肢は増える。「この方法しかできない」と、「あのやり方もできるがあえてこの方法を選択する」とでは意味合いが変わってくるし、後者のほうが一段深い意味を持つ。
そして、作品を真似るだけならある程度テクニックがあればできるが、過程にこそ作品としての味のようなものが宿るのだと思う。陶芸に限らず、映画でも音楽でも、制作時のエピソードなどを知るとより深みを感じるのと同じように。
知識より知恵、技法より技能
何でも調べたらそれっぽい答えが出てくる現代においては、芸事に向き合うことで学べることは、かなり貴重で本質的なのではと思う瞬間が多々ある。
ネット上の情報を拾ったりChat GPTに吐き出してもらうだけでも、知識はそれなりにつけることができる。しかし良い作品を作るためには、ただ知っているだけではできないことが多い。
自分の知恵を絞ってどのような戦略を立てるか、土と対話しながらどう形を作っていくかを考えることが、とても重要だと感じる。
技術的なことについても同じで、方法を知っていたり、ただできるだけではダメ。状況に応じて考え、最適な対応ができるということが大切だ。
使う土の種類によってもろくろを回す感覚は異なるし、土の状態や水分量によっても勝手がかなり違う。付け焼き刃の知識だけではあらゆる状況には対応できない。
自ら経験を積んで学び、実力をつけるということを怠ってはいけないと感じる。
離れたときこそ気づきがある
陶芸をやっていない時にも、陶芸のことを考えることが増えた。
そして、ふとした瞬間にブレイクスルーが得られるという経験も数回あった。
どんな物事もそうだと思うが、近すぎると気づかないことがある。離れたときに考えてみると本質的なことに気づき、そのメカニズムは意外と単純だったりする。
個人的には陶芸を通じて、そのようなことを改めてリアルに知る機会が増えた。
何かを上達しようと思ったら、常に頭の片隅にその物事のことを入れておいて、たまに考えたり思い出してみることがかなり大事だと思う。
素直であることこそが大切
年齢を重ねると、知らぬ間に変なプライドを誰しも持ってしまいがちだと思う。
また少し上達して自信をつけていくにつれ、自分のやり方に固執しがちになりそうなこともある。
なにか物事を上達する上で、素直に指導者の意見を聞き、それを愚直にやってみることは本当に大事なことだと感じる。
僕は未経験から陶芸を始めたので、最初は何もプライドなく教えられたことをただひたすらやることに注力できた。
しかし少しできるようになってくると、指導者に指摘された際にムッとしそうになることも正直な話なくはなかった。だがその度に圧倒的な実力を見せつけられ、自分の至らなさを思い知らされる経験をした。
やはり謙虚な姿勢で、素直に他人の意見に耳を傾けてやってみるということは、物事に取り組む上での基本だと感じる。
まとめ
普段アートとは全く縁のない仕事をしているからか、一年前までは仕事と向き合えば向き合うほど、人生における自分の視野が狭くなっていくような感覚を覚えていた。
しかしビジネスを離れて芸術に向き合う時間を作ることで、今までよりも人間としてのバランス感覚を保てるようになった気がする。「なぜ芸術に惹かれるのか?」という冒頭の問いにはまだ明確な答えを出すことができていないが、美術館に行って作品鑑賞をするときも、少なくとも以前とは観方が変わったと確信している。
そして、陶芸から学んだことがビジネスや普段の生活に活かせることも多いということに気づいた。芸事は人生の縮図ではないかとまで思う。
陶芸に関してはまだまだできないことも多いし、気づいていないことや言語化できていないことも山ほどあるだろうが、定期的に振り返る機会を設けて人生の楽しみを広げていきたいと思う。
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