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日記のようなもの。

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みじかくて、かんたんな、ちいさな言葉。
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#大学生

学生のうちに。 【エッセイ】

 白い壁に包まれたその会議室は、洗練というより殺風景の方が相応しいと感じる。テーブルを挟んで向かい合わせで座っている男が、自己紹介を始めた。人事課長の笹原と名乗る中年の口元は笑っている。  内定通知書であったか内定承諾書であったか、僕はその違いも分からなければ、目の前に差し出された書類がどちらに該当するかも分からない。ただ、とにかく僕は今日、内定に関する書類を受け取りに来たのだった。  書類を渡すだけなのだから、数分で済むことだ。そう考えていた僕は、現在の時刻を確認すると

問題視されない問題児。 【エッセイ】

 最近、中学時代の友人にばったり会った。別に何があったわけではないのだけれど、なんとなく中学校のころを思い出したので、将来の自分のために残しておこう。  優等生。それが周りから見た僕の印象だろう。当時からそういう扱われ方をしているのは感じ取っていた。僕のことを優等生だと思っていた人は、おそらくあまり仲が良くないか、表面上の付き合いだったのだろうと思う。というのも、僕は優等生とはかけ離れていたからだ。  僕の学校嫌いは、幼稚園までさかのぼる。物心がつく前から、組織や集団とい

役に立たない僕は不要ですか?【エッセイ】

 社会に出たら役に立つ人間になりましょうね。僕らは、小さい頃から先生にこんなことを言われて育ってきた。実際には言われてないのかもしれないけれど、世の中からそんなメッセージを受け取ったのは確かだ。  役に立ったらその分、お金がもらえるんだよ。僕らは、母からそう教えられて育ってきた。実際に言葉で教わったわけではないのかもしれないけれど、そんな風に教育するのが正しいという空気が漂っていたのは確かだ。  役に立つってなんだろう。働くってことなのかもしれない。僕はもうすぐ働く。会社

【エッセイ】あなたがいても、いなくても。

「学生と社会人の違いは何だと思いますか?」面接で聞かれたことを思い出した。  社会人って言うけど、学生だって社会の中で生きてるんだから社会人だろ。たぶん聞いているのはそういうことじゃない。それに、どうせ模範解答的なものがあるのだろう。分かっていても面接官や社会の思い通りになるのは気に食わない。僕は我慢できなかった。 「僕の考えでは学生も社会人のうちに入りますが、これらを二項対立として見るとするなら、学生から社会人になるということは、生産と消費の資本主義のサイクルに組み込まれる