そっと息を吐き出す。 真っ白なそれは、風に流されてゆっくりと揺蕩う。 駅のホーム。人はいない。 冷たい椅子に、体の熱が少しずつ奪われていくのがはっきりとわかる。 それでも僕は立ち上がらずに、線路の向こう側に一望できる街を虚ろに眺めた。 僕が育った街。 こんな寂れた駅から見下されるように佇む、静かで穏やかな街。 そこから見る景色に、色はほとんどない。白と黒。モノクロームに染まるそのまちは、もはや死んでしまっているような趣すらある。 数多の小さな家々の一つ、その屋根に、
「君は魔法を信じる?」 彼女は突然、僕にそう訊ねた。 「古代にはもしかしたらあったかもしれないけれど、少なくとも今はないと思うな」 僕は、彼女の猫のように鋭く光った目に向かってそう応える。 突然日が暮れた。光の残滓がフワフワと宙を漂っていた。 僕は太陽が落ちていった地平線を見つめながら、足元に寄せては引く青黒い波の静かな音に耳をすませた。 何かを考えるような、いや、世界を感じるような、そんなちょっとした間を置いて、彼女は再び口を開いた。 「魔法がなくなってしまった