見上げてごらん夜の星を
夜中のコンビニ午前2時頃
暗闇の中で煌々とする照明に目がくらむ
客は俺以外には誰もいない
レジにいる店員は中年以降のハゲかけた白髪の顔が丸いおじさんが一人
不審そうな目つきで俺と目が合う
その居心地の悪さに後悔が走る
雑誌が並んでいるのを適当に眺める
漫画の単行本の新刊が出ている
手に取ってパラパラとページをめくるけど読む気にならない
昔は週刊の雑誌で毎週読んでいた
1ページ1ページを食い入るように
読み終わると次の一週間が待ちきれないというくらいに
それがあるときにマンネリが過ぎて読むのをやめた
それ以来
ため息をひとつつく
少しは時間稼ぎになっただろうか
適当にジュースと弁当を選んでレジに向かう
周りの様子を眺めるようにして絶対に目を合わせない
気まずさMAX
店員が会計を始める
「こんな時間に弁当を?」
出し抜けに話しかけられる
「え?」という俺の反応
余計な御世話だと思う
確実に
世の若者への嘆きの声は聞き飽きた
「まあ、別に・・・」
俺は何故か戸惑う感じで返した
将来を心配しているおじさん
他の客にもこんなに気軽に話しかけるんだろうか
それとも俺の外見の感じでの勘だろうか
その勘は正しいのかもしれない
たった一つの不穏分子でも全うな社会に綻びが生じる可能性
このおじさんにも守りたいものがあるんだろう
俺はレシートとお釣りを受け取る
「ありがとうおじさん」
去り際に言い放つ
「・・・」
出口のドアに店員の顔が反射して見える
俺はその映った顔に向けて少し口角を上げて微笑んで見せる
コンビニを出るとそそくさと車に乗り込む
そのときふと空を見上げると星がキレイだ
夜空はこんなにも輝いている
エンジンをかけると音楽が流れる
さっきまで聴いていた洋楽のロックの続き
シートベルトを締めてヘッドライトを灯す
駐車場から出る流れでさっきの店員の方を見る
向こうもこっちの方を見ている
真剣そうな顔で
その心情は察しない
ロックバンドのハードな音が耳をつんざく
無意味な衝動
過剰すぎる自意識
星を見上げてごらん
そこにあるキレイなものが
おじさんには理解できないかもしれないけれど