自律神経は機械ではない
1.自律神経を酷使させる最大の原因
何か体調不良があって病院に受診するけれども
いろいろと診察や検査を受けても原因がわからなかった時に、
必ずと言っていいほど関わってくるものがあります。
それは「自律神経」というものです。
「自律神経失調症」と呼ばれる病名があるのですが、
これはその名の通り、「自律神経」が「失調する」、すなわち「自律神経」の働きがうまくいかなくなっているという状態を意味しています。
さて、「自律神経」。よく聞く言葉ですが、ここで、その意味を確認しておきましょう。
「自律神経」というのは、「自分が意識しないところで身体が一定の状態を維持できるように働きかける神経」のことです。
例えば、皆さん。今から「よし便を作るぞ」と思って便を作らないですよね。
便は作ろうと思って作るものではなく、自分が意識しないところで食べたものを胃腸が消化して栄養素を吸収して、残ったものを胃腸が蠕動運動と呼ばれる動きで移動させながら排泄しやすい形へ変形させていき、肛門から出る時にはいつの間にかできているものですよね。
もっと言えば、消化液も出そうと思って出してないし、栄養素の吸収も意識しないところで行われています。
そうした意識しないところでの活動にはほぼすべてに「自律神経」が関わっているといっても過言ではありません。
とても大事な神経だということがわかりますよね。
まるで機械のように自動で働いているイメージがするかもしれません。
けれど忘れてはならないのは、「自律神経は機械ではない」ということです。
生身の肉体に備わって私達と一緒に生きている存在で、私達の大切な身体の一部です。
だから私達が疲れると「自律神経」も疲れます。疲れたら休みが必要ですが、それは「自律神経」にとっても同じことです。
ただ時に「自律神経」が休みたい状態であるにも関わらず、ずっと働かされ続けるような事態が起こることがあります。
それが最初に言ったような「自律神経失調症」と呼ばれる状態につながるわけですが、
何で休みたい状態であるにも関わらず休ませてもらないという、まるでブラック企業の労働者のような状態が起こってしまうのでしょうか。
・・・今、ブラック企業のたとえを出しましたが、
どんな企業も最初から好き好んでブラック企業になろうと思ったわけではありません。
気づかないうちにブラック企業になってしまっているものなんです。
そう、その「気づかない」ということが、「自律神経を酷使させる」最大の要因なんです。
2.いつの間にか「思い通りにならない状態」に
先程も言ったように、「自律神経は機械ではありません」。
なのに機械のように自分の身体を勝手に整えていると考えてしまっていればどうでしょうか。
本当は休まなければならない状態であるにも関わらず、まるで機械を動かしているかのように、特にいたわることもなく働かせ続けてしまいます。
それはあたかも従業員の存在を機械的に捉えてしまい、生きている生身の人間だということを忘れてしまい、
業績重視で従業員を休ませることなく働かせ続けているブラック企業のようなものです。
そして、「今、休まなければならない状態だよ」というのを教えてくれている警告反応こそが、
「体調不良」という名の自分の症状なのです。
残念ながら、「自律神経失調症」とまとめて表現される種々の「体調不良」は精密検査で明らかになるわけではありません。
だからこそ、この状態を「年のせいですね」などと表現してしまう医者も多いわけです。
しかし「自律神経失調症」の本質は「休まなければならない状態で頑張り過ぎていること」です。
長引く症状で検査に異常のない時は、身体が何らかのストレスを感じ「自律神経」を刺激し過ぎていて、全体として自律神経がうまく働いていないことの証拠です。
例えとして用いた、ブラック企業の労働環境も「休まなければならない状態で頑張り過ぎる」ことも自律神経を疲弊させるかもしれませんが、
それはたくさんある頑張り過ぎてしまう原因の一つに過ぎません。
実際には人がストレスを感じる原因は多種多様です。
一言で言えば「思い通りにならない時」に人はストレスを感じます。
例えば、本当はやりたくない頼みを嫌われたくないからと引き受け続けているような時。やさしい人にありがちです。
あるいは、家族のことを大事に想い支え続けているのに、そのことに対する感謝の気持ちが一向に聞かれない時。家族の安らぎは当たり前ではありません。
はたまた自分は全く悪くないと思っているにも関わらず、いわれのない悪口を受け続けているような時。悪口を言う相手の立場に立って考える余裕が持てているでしょうか。
このような状況って、自分ではなかなか気づかなかったりするものですが、
そんな時に人の自律神経は酷使され続けてしまい、身体のいたるところに症状が出続けてしまいます。
自律神経は全身にはりめぐらされています。吐き気、めまい、痛み、発熱、下痢、便秘、肩こり、頻尿・・・などなど、どこに症状が出ても不思議ではありません。
3.自律神経失調症を克服する方法
まずは症状から「気づいてあげてください」。
そしてあなたとともに生きている自律神経を「いたわってあげて下さい」。
「自律神経」をいたわるということは、あなた自身をいたわることです。
あなたにとっての「思い通りにならない状態」を回避するために、何かできることはないでしょうか。
あなたにとって当たり前の価値観を外せば、「思い通りにならない」と思っていた状況に思わぬ解決策は意外と見つかるものです。
そのことがわかれば、あなたは自分の体調に応じて「自律神経」をあなた自身とともにいわたることができるでしょう。
経年劣化で衰えていく機械のように「自律神経」を捉えないで下さい。
「機械」でさえ、大事にメンテナンスすればいつまでも長く使うことができますが、
生き物は取り扱いが機械以上に繊細な部分があると思います。
その代わりいたわってあげれば生き物は機械以上に生き生きと動き続けます。
自分の身体も「自律神経」も、機械以上にいたわってあげる気持ちを忘れないで下さい。
そうすればあなたの症状はあなたのことを整えてくれる「味方」です。