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第2回:経営企画のキャリアパス ―経営企画は経営への登竜門- 経営企画担当者マニュアル

こんにちは。
T&Aフィナンシャルマネジメントのさいとうです。
本連載は、メガバンク、コンサルティングファームを経て事業会社の経営企画に転じ、上場企業の経営企画管掌役員を経験した筆者(さいとう)が、事業会社の経営企画ってなに?経営企画ってそもそもどんな仕事なの?という点について、経営企画初心者でもわかりやすくご説明する連載です。

今回は経営企画のキャリアパスについて、内部登用人材、外部登用人材の両側面から考えてみたいと思います。

前回ご説明したとおり、経営企画の守備範囲は広範で、会社によって、何が経営企画の仕事か?という点についてもバラツキがあることが多いので、「経営企画担当者はこのスキルを持っていなくてはならない」と断じることは難しいです。
また、企業規模によって、経営企画の機能が細分化されていたり、もしくは少人数で経営企画を回している会社では、オールラウンドで大車輪の活躍が必要とされていたり、様々です。

≪T&Aフィナンシャルマネジメント≫
T&Aフィナンシャルマネジメントはベンチャー企業に特化した経営財務支援、クライアント目線に立った中小規模M&Aのご支援をしております。
また、上場企業をはじめとする大企業~中堅企業の経営企画をはじめとする経営管理部門のサポートなど、幅広なご支援をご提供しております。

経営企画は経営への登竜門

経営企画という言葉を聞くと「エリート」「社長の懐刀」「オールラウンドプレーヤー」といった賞賛に値する言葉を連想する方も多いかと思います。
それは一般に経営企画が経営への登竜門と考えられていることに起因していると思われます。

実際にオーナー社長や起業家社長を除く、企業のサラリーマン社長の経歴を見てみると、経営企画をはじめとする、なんらかの「企画部門」を経験したことが多いです。

私が以前在籍していたメガバンクなどでは、基本的に営業店と本部の企画部門を行ったり来たりしてキャリアを形成し、キャリアの終盤で役員、そして頭取に昇格してゆくパターンが一般的でした。
営業店だけの経験でも執行役員程度には昇格できる可能性はあったかと思いますが、しかし、本流の頭取(トップ)への道は、企画部門経験者にほぼ「限定」されていたものと思われます。

ではなぜ、経営企画が経営への登竜門となるのでしょうか?
端的に考えると、経営企画の仕事柄、社長や役員(=経営)のサポート役として日々経営者と接し、経営者が解決しなくてはならない課題の実働部隊として業務に従事しているからだと思います。

その重責に耐えうるだけの経験・知識が必要とされることと、政治的に言えば、経営陣との密接なコネクションができるから経営陣へ最終的に昇格できるという側面もあるかもしれません(企業の人事は結果的には人的ネットワークで決まると思います)。
メガバンクなどでは、経営企画に在籍していたラインの担当者間の結びつきも強固で、そのヒエラルキーの中に明確なポジショニングを確保できていれば、将来は安泰という側面もあったかと思います。

逆に経営企画に在籍することのリスクもあります。
それは、日々経営者に近いところで仕事をするわけなので、「あいつ、デキるな!」と思われれば将来的に引き上げてくれるかもしれませんが、「あいつ、使えない」ということになってしまった場合、引き上げてもらえるどころか、その先お先真っ暗ということにもなりかねません。

いずれにせよ、経営企画は日々経営者の近くで、まさに「経営課題」に直面しながら仕事をします。
しっかりとしたスキルを身に着け、力を発揮できればサラリーマンとしての地位の確立ができますし、自分自身にとって数段階上のレイヤーの仕事ができるわけですので、ビジネスパーソンとしての飛躍的な成長を手にすることができます。

経営企画へのキャリアパス

最近の人材の流動性を前提として、キャリア形成において転職は当たり前のものとなっています。
従来は転職者の受け入れなどは考えられなかった重厚長大企業でも、金融機関でも転職者をよく目にするようになってきました。

一方で、経営企画をはじめとする企画部門は、いわゆる「保守本流」のような部署であることも多く、転職者を基本的には受け入れずに「純血主義」で運営している企業も多く存在します。
ただ、昨今の自社を取り巻く環境変化のスピード感が早く、それに耐えうる人材確保の観点から、外部人材を経営企画をはじめとする企画部門に登用したり、直接採用したりするパターンも増えてきていると思われます。

ここでは、内部登用人材、外部登用人材が経営企画というキャリアを選択するために必要なキャリアパスについて考えてみたいと思います。

その前に内部登用人材、外部登用人材を経営企画ポジションにつけることの企業にとってのメリデメを確認したいと思います。

【内部登用人材のメリデメ】
◎メリット
・相当の社歴を有することから、社内人脈をすでに構築していることから、社内調整に力を発揮できる
・自社の文化や社風、考え方を理解していることから、中長期的な戦略立案においても自社DNAを踏襲した検討ができる
◎デメリット
・経営企画特有の教育を受けていないことから、専門性に乏しい可能性がある
・競争環境を理解するための「他流試合」の経験が少なく、視野が狭く、視座が低くなってしまう可能性がある

内部登用人材のメリデメは、会社のことをすでに十分に理解していることでコミュニケーションを円滑にできるという最大のメリットを有している一方で、社内ジェネラリストとして活動してきた人にとっては専門知識が欠如してしまっている可能性があるということだと思います。

【外部登用人材のメリデメ】
◎メリット
・汎用的な専門知識を有しており、客観的な視点で自社の置かれている状況を俯瞰できる
・社外人脈を有していることも多く、問題解決のためのネットワーク構築に強みを有している
◎デメリット
・社内人脈が乏しく、社内コミュニケーションを円滑に取れるまで時間を要する
・業界特有の知識が乏しく、特有事情に立脚した戦略立案・実践に時間と労力を要する

外部登用人材のメリデメは、すでに経営企画としての確立された知識スキルを有している一方で、社内や業界といった、自社の置かれている環境における知識やネットワークが希薄である可能性があるという点だと思います。

内部登用人材、外部登用人材には各々一長一短があるので、会社は純血主義を堅守することとしないのであれば、内部・外部をバランスよく登用し、各々の長所・短所を理解し、活かした人事運用をすればよいと思います。

では、各々のカテゴリーの人材がどのようなキャリアパスを経て経営企画に到達するのかという点について考えてみたいと思います。
正直、各社の事情によってキャリアパスは異なるものと思われますが、しかし、一般的に考えられるキャリアパスについてご紹介したいと思います。

まずは内部登用人材です。
内部登用人材については一般的には経営企画とはまったく異なるセクション(営業や商品開発、マーケティングなど)を歴任し、ジョブローテーションの流れの中で経営企画に来るケースが多いと思われます。
ただ、会社によって様々ですが、次世代リーダーの選抜などを行っている会社であれば、その選抜に通った人が経験すべきポジションとして経営企画が用意されていることが多く、その観点においては経営企画配属者は一定の「社内エリート」であることが多いです。

そう考えると、「経営企画を目指して仕事をする」というよりも、社内における次世代リーダーのセレクションに食らいついて残るということの優先順位が高いと思います。
人事は時として不可解な政治力が働くことや、そもそも入社時点で「背番号」がふられており、その「背番号」は在籍中ずっとつきまとう、というケースも多いのでなんとも言えませんが、純粋に考えれば社内セレクションに残るためには端的に「結果を出し続ける」ことが肝要だと思っています。

一方で外部登用人材の経営企画への道のりは複雑です。
ただ、多くの中途採用で経営企画ポジションにいる人のバックグラウンドを確認してゆくと、金融機関やコンサルティングファーム出身者が目立ちます。
もちろん、他社の商品企画や営業をしていた人が経営企画にいることもありますが、どうしてもその傾向が強いと思います。

知り合いの人材コンサルタントの方に聞いた話ですが、「他社の経営企画にいた「経験者」は他社の経営企画のポジションに転職しやすいが、経営企画の経験がない「未経験者」の場合、金融機関やコンサルティングファームなどの、経営に近しい仕事をしていた人が優先される傾向がある」と聞いたことがあります。

私も金融機関やコンサルティングファーム経験者ですが、それらの仕事は、クライアント企業の複雑な課題に「初見」ありながら取り組まなくてはならない汎用性と、社外からクライアント企業の人間関係を調整するといった、疑似的な経営企画的なことをするケースが多いです。
そのため、経営企画「未経験者」として採用する場合、金融機関やコンサルティングファーム出身者が採用されるケースが多いものと考えられます。

会議

経営企画を目指す人が準備するべきスキルセット

前回記事で経営企画に必要とされる知識スキルについてはご紹介しましたが、それらのスキルを直接経営企画に在籍しないでつけるためにはどうしたらよいでしょうか。

私自身は金融機関在籍中に国内MBAに通学し、仕事で培った金融の知識に加え、汎用的な経営管理の知識を習得しました。

もちろん学校で学ぶことのできる知識は机上の空論ですので、実際に企業の経営企画部門に属することになった時は、アカデミックな理論と、現場の力学の差に困惑した時期もありましたが、しかし、MBAで学んだ知識によって、「何を調べれば答えを導くことができるか?」という点についての羅針盤を持っていたので、経営企画在籍後のキャッチアップは早かったと思っています。

個人的にはMBAがベターだと思っていますが、MBAでなくてもビジネススクールに通ったり、中小企業診断士のような資格を通じて知識を習得している人もいます。
また、大企業のような細分化された経営企画においては、特定領域に専門特化するという戦略もあるので、IR/SRを専門的に学んだり、経営戦略理論を徹底的に追及したりする人もいます。

いずれにせよ、内部登用人材であっても、いざ経営企画に異動を命じられた時に、そこからアタフタ準備をしていたのでは間に合いません。

しっかりとした準備が必要です。

また、先にも経営企画が経営への登竜門と書いたとおり、経営企画に必要な知識スキルは、経営者にとって必要な知識スキルの一つであることは間違いないと思います。
その意味からも、将来的なリーダーを目指す人は、経営企画に行っても耐えうる知識の獲得を目指して自己研鑽に励んではいかがでしょうか。

勉強

まとめ

今回は経営への登竜門とも考えられる経営企画へのキャリアパスについて考えてみました。
どんな仕事も「簡単な」仕事は存在しないと思いますが、経営企画の仕事はその中でも特に難易度の高い業種だと思っています。

知識スキルといった頭脳プレーを要することと、ハードな調整をおこなうといった、高いヒューマンスキルが必要とされることがその特徴です。

ただ、将来的に自社のリーダー、もしくは他社や業界でのリーダーを目指す人にとっては、経営企画を経験することは重要であり、そのポジションに就くチャンスを得るためには相当な準備が必要だと思っています。

次回以降は、実際に経営企画業務を例にとり、各々をいかに進めてゆくかについて考えてみたいと思います。
次回以降の連載にもご期待ください!

【経営企画担当者マニュアル】
第1回:経営企画って何だろう?
第2回:経営企画のキャリアパス-経営企画は経営への登竜門-
第3回:経営企画による予算策定・予実管理
第4回:経営企画による会議体(取締役会など)運営
第5回:経営企画による時事情報収集
第6回:経営企画による業界分析
第7回:経営企画によるマクロ経済分析
第8回:M&A・ベンチャー企業投資
第9回:経営企画によるIR/SRへの関与
第10回:経営企画による新規事業開発
第11回:経営企画によるプロジェクト評価
第12回:経営企画による社内制度改革

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