第1回:経営企画ってなんだろう? 経営企画担当者マニュアル
こんにちは。
T&Aフィナンシャルマネジメントのさいとうです。
本連載は、メガバンク、コンサルティングファームを経て事業会社の経営企画に転じ、上場企業の経営企画管掌役員を経験した筆者(さいとう)が、事業会社の経営企画ってなに?経営企画ってそもそもどんな仕事なの?という点について、経営企画初心者でもわかりやすくご説明する連載です。
今回は連載初回ということで、そもそも経営企画って何?という点についてご説明したいと思います。
経営企画という部署は多くの会社に存在し、なんか「かっこよさそう!」な感じの部署ではありますが、正直経営企画という仕事に定義はないといってもよいかもしれません。
管理部門の中でも人事や経理といった部署は概ねどこの会社でもやっていることに大きな変わりはないのかもしれませんが、経営企画という仕事は各社各様です。
したがって、読者のみなさんにおかれては、本連載をご覧いただき、現在の自社の経営企画と照らし合わせて、「こんな業務をやってみてもよい」と思われたら業務として追加いただければよいし、自社の独自性が強く、「この業務は他部署に譲った方がよい」と思われたら、社内調整をすればよいかと思います。
あくまでもここでご紹介する経営企画業務は、筆者であるさいとうが実際に行い、そして他社担当者とのコミュニケーションの中で知った業務なので、100%経営企画を網羅しているとはいえないと思っています。
≪T&Aフィナンシャルマネジメント≫
T&Aフィナンシャルマネジメントはベンチャー企業に特化した経営財務支援、クライアント目線に立った中小規模M&Aのご支援をしております。
また、上場企業をはじめとする大企業~中堅企業の経営企画をはじめとする経営管理部門のサポートなど、幅広なご支援をご提供しております。
経営企画の仕事
冒頭で、経営企画の仕事に決まったルールなど存在しないことをご説明しました。
ただ、規模の違いや、経営企画が置かれている立場などにより違いがありますが、少なくとも経営企画と名の付く部署は、経営陣の「懐刀」であり、「右腕」としての役割が期待されているということは間違いないと思います。
時として経営陣の「雑用係」に徹しているとおっしゃっていた方を見かけることがありますが、経営陣が自分でやれない雑用であったとしても、それを他の一般社員にやらせるわけにはいかないので経営企画にやらせるわけで、やはり経営企画は他部署の社員ではできない、秘匿性が高く、かつ難易度の高い仕事をするべき部署であるということができます。
ただ、先ほども申し上げたとり、経営企画には基本的に決まったルーティンのようなミッションは存在しないことが一般的で、会社によって働き方は各様です。
したがって、経営企画としての力量を発揮できるか否かについては、各人の力量にかかっているといっても過言ではありません。
経営企画の仕事の進め方は一般的に経営陣との密なコミュニケーションがキモといえます。
今、経営陣が何を考え、どんな提案をすれば全社施策が推進されるのか?や、経営陣は今、どんな情報を知りたがっているのか?など、常にアンテナを高く保って経営陣と会話を行わなくてはなりません。
特に「オーナー企業」と呼ばれるような会社の経営企画は大変です。
オーナーという属人的な人格の采配で会社の方向性が決まってしまうのですから、オーナーにどのような情報を提供するのか?オーナーにとってかゆいところに手の届く動き方とは何か?について常に考えなくてはなりません。
また、オーナー企業の代表は、得てして個性が強い方が多く、逆鱗に触れずに、ただ、言われたことだけやっているのではなく果敢に提案を重ねるというスタンスを維持することは割と難しかったりします(私もオーナー企業の経営企画に属していたことがあり、気分の起伏の激しいオーナーの顔色を見ながら仕事をするのが結構大変でした(笑))。
経営企画の仕事の種類と必要とされる知識スキル
経営企画の仕事は各社各様ですが、大まかに以下のような仕事が考えられます。
【経営企画の仕事の種類】
・経営戦略、経営計画の策定
・予算策定、予実管理
・時事情報の収集
・業界動向調査(競合他社分析)
・事業投資、ベンチャー企業投資
・M&A
・新規事業開発
・社内制度改革
・IR/SR
思い当たるものを上げてみましたが、これだけでも経営企画の仕事の幅は広く、それらをすべてこなしてゆくには幅広い知識と経験が必要なことがわかります。
経営企画として必要とされる知識スキルも幅広いです。
定性的なスキルとしては、高いコミュニケーション能力や折衝能力、調整能力が必要とされます。
各部署の「お偉方」がああでもない、こうでもないと経営企画に無理難題を言ってくるのですから、しっかりとしたコミュニケーション能力や調整力がないと、なかなか社内調整を行うことができません。
また、経営陣は多忙な人が多いと思われますので、ロジカルに物事を考え、手短かに本質を表現し、いわばエレベータートークで物事の方向性を確認できる論理的思考力も必要とされます。
個人的な意見ですが、経営企画に属する人で、話の長い人を見たことがありません。
また、アカデミックな知識スキルとしては、いわゆる経営戦略などを構築できる経営理論や、数値面をロジカルに把握できるファイナンスの知識や会計知識。
加えて最低限の法務の知識や、人事労務に関する知識。
そして当然、自社の属する業界特有の情報やそれを理解する知識が必要です。
次回連載でもお話しますが、経営企画は経営陣への登竜門的な要素もあり、経営企画に求められる知識は、イコールその会社の経営陣として必要とされる知識スキルかと思われます。
適当な人物像も各社各様ですが、自社のビジネスを熟知し、業界知識にも明るい人物が、いわゆるMBA(経営学修士)コースなどでアカデミックな知識スキルを補完して経営企画の任に就くというのが、望ましい姿なのではないかな?と私は思っています。
まとめ
今回は連載初回ということで、各社各様の経営企画ではありながら、しかし、経営企画に求められている知識スキルは、その会社の経営陣に求められる知識スキルそのものであるということについてお話しました。
次回以降の連載で、具体的に経営企画がどのようなキャリアを選択肢、そして想定される一つ一つの業務をいかにすいこうしてゆけばよいか?という点についてお話をしてゆく予定です。
ご期待いただき、是非とも忌憚のないご意見をいただければと思っております。
今後ともご愛読のほど、よろしくお願いいたします!
【経営企画担当者マニュアル】
第1回:経営企画って何だろう?
第2回:経営企画のキャリアパス-経営企画は経営への登竜門-
第3回:経営企画による予算策定・予実管理
第4回:経営企画による会議体(取締役会など)運営
第5回:経営企画による時事情報収集
第6回:経営企画による業界分析
第7回:経営企画によるマクロ経済分析
第8回:M&A・ベンチャー企業投資
第9回:経営企画によるIR/SRへの関与
第10回:経営企画による新規事業開発
第11回:経営企画によるプロジェクト評価
第12回:経営企画による社内制度改革