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ベンチャー企業にとって適正な手元現預金水準とは??「もしも!」に備えるキャッシュフローマネジメント

資金繰りは企業経営の重要な要です。

どんなに素晴らしいビジネスモデルであっても、資金繰りが破綻してしまっては事業を継続することもできませんし、世の中にサービスを提供し、役に立つこともできません。

T&Aフィナンシャルマネジメント代表の齋藤が記事編集にご協力させていただいた創業手帳の記事を参考に、会社にとっての適正な手元現預金残高はどのくらいか?という点について考えてみたいと思います。

≪T&Aフィナンシャルマネジメント≫
T&Aフィナンシャルマネジメントはベンチャー企業に特化した経営財務支援、クライアント目線に立った中小規模M&Aのご支援をしております。
また、上場企業をはじめとする大企業~中堅企業の経営企画をはじめとする経営管理部門のサポートなど、幅広なご支援をご提供しております。

「月商の3か月分は手元に置くべき」はウソか?ホントか?

経営者の間ではよく、「月商の3か月分の手元流動性を持っておけば心配ない」といわれています。

ビジネスをしていると、急な売上減少や、売掛先の倒産など、イレギュラーな事態が突発的に発生します。

そういった事態に直面した際、急場をしのぐために銀行借り入れ等の調達の準備をするのですが、その「時間稼ぎ」のために3か月分のキャッシュは常に手元に置いておきましょう、という考え方です。

「運転資金」の考え方を理解しよう

正直、金融機関借入等の準備のための急場しのぎのための時間稼ぎという観点においては、3か月分のキャッシュをもっておくということは理にかなった考え方なのかもしれません。

ただ、この低金利の世の中、資金は効率的に運用すべきです。

3か月分のキャッシュを教科書通りに手元に置くために「両建て」の借入をしてみたり、何らかの有効な投資機会があるにも関わらず、それを断念することは合理的ではありません。

究極的には資金繰りの底(月中の資金が最も少なくなるタイミング)がゼロになるように資金運用をすることが最も効率的な資金運用なのかもしれませんが、さすがに底の段階でゼロになるのは少し精神的にキツいかもしれません。

ではどの程度の資金を手元に置いておくべきか?を考えるにおいては、「運転資金(Working Capital)という概念を知っておく必要があると思います。

運転資金とは、俗に「収支ズレ」とも呼ばれ、一般的な商流である「モノを仕入れて、代金を支払って、在庫して、販売して、代金を回収する」といった流れの中で、どのくらいの資金ショートが起きるか?という点に焦点を絞った考え方です。

具体的には、以下の算式で計算できます。

運転資金=売上債権+棚卸資産ー仕入債務

売上債権とは受取手形や売掛金といった、将来資金回収できる債権のことです。

また、仕入債務とは、売上債権とは逆に、支払手形や買掛金といった、将来支払わなくてはならない債務のことです。

上記算式によって導かれた金額が運転資金と呼ばれ、その金額は外部調達を要するとされています。

年商が同じでも運転資金は異なる

そんな運転資金。

例えば年商12億円の会社であってもビジネスの性質により異なります。

【A社の場合】
運転資金(4億円)
=売上債権(2億円)+棚卸資産(3億円)-支払債務(1億円)
【B社の場合】
運転資金(1億円)
=売上債権(1億円)+棚卸資産(0.5億円)ー支払債務(0.5億円)

となり、4億円と1億円の3億円もひらきがあります。

緊急事態を想定した場合、A社の場合は売掛先が全て倒産したにも関わらず債務は払わなくてはならない場合、1億円の資金が必要です。

一方で、B社の場合は同様の事態が発生しても0.5億円で済みます。

同じ月商1億円の両社でしたが、急場の資金は異なります。

従って、「月商の3か月分を持っておこう」という杓子定規的な考え方はちょっとナンセンスなのかもしれません。

資金繰り表の作成でキャッシュマネジメントを徹底する!

では、会社ごとに違う緊急事態に備えた現預金水準ですが、どのように考えるべきか?というと、やはり精緻な資金繰りを想定し、キャッシュマネジメントを徹底するということに尽きると思われます。

即ち、自社の運転資金水準を把握したうえで精緻な資金繰り表を作成し、自社が最低限持っておかなくてはならない現預金水準を推定します。

資金繰りを策定する際には人件費や支払家賃等の「固定費」もしっかりと把握し、資金繰り表に落とし込むことが必要です。

そして、先ほどは、まったく売上が入ってこないことを想定していましたが、確率論的に売上入金が滞る水準を想定し、かつ、もし資金繰りの悪化懸念が出た際に金融機関に相談した場合、どれくらいの金額をどれくらいの検討機関で借入することができるのか?を想定する必要があります。

手元現預金は多ければ多いほど経営者(というか、経理担当者)は精神安定剤になりますが、先に書いたように非効率な資金運営は経営の効率性を阻害します。

究極まで資金運営を先鋭化する必要まではオススメしませんが、しかし、無駄な金利負担や、機会損失のないように資金運営を行わなくてはなりません。

それこそがあるべきキャッシュマネジメントだと思われます。

T&AフィナンシャルマネジメントのCFOサービス

T&AフィナンシャルマネジメントではCFOサービスの一環として資金繰り計画の策定や実行支援を行っております。

経営者とともにお会社様の実態に沿った資金繰り計画策定のお手伝いをさせていただきますので、お気軽にお問い合わせください。

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