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【効く名文】理想の女性が、そうでもなかったと知ったとき /「眠れない夜に思う、憧れの女たち」

「眠れない夜に思う、憧れの女たち」は、1971年、フィンランドのヘルシンキ生まれのミア・カンキマキによる著作。初版は2024年。

40代・独身の女性作家が、歴史に残る女たちの軌跡をたどって旅をする、長編紀行エッセイ。「この世界で女性が生きるとは」。シビアな現実とそれでも自分らしく生きようとする女たちの姿が、密度濃く描かれています。


第1部 /アフリカ、では、映画「愛と悲しみの果て」の原作、「アフリカの日々」の著者・カレン・ブリクセン(1885年ー1962年)が18年近く滞在したアフリカへ旅立ちます。

作者は、伝記や書簡を調べるうちに、カレンが思い描いていた「恐れを抱かない」女ではなかったことを知り、腹を立てます。一方で、アフリカでの過酷な日々を追体験する中で、カレンが粘り強く頑張っていたことにも気づくのです。そして、カレンに向かって声をかけます。

カレン、あなたは私が想像していたとおりの人ではなかったのかもしれない。あなたは、私が頭のなかで思い描いていたような、信じられないほど勇敢で、強くて、自立して、賢くて、善良なスーパーウーマンではなかったのかもしれない。あなたはもっと人間臭くて、弱くて、病んでいて、塞ぎこんでいて、感情的で、自分勝手で、いじけていて、所有欲や狩猟熱があって、うぬぼれが強かった。
でも、それでいいのよ、カレン、私たちってそんなもの。

「眠れない夜に思う、憧れの女たち」より抜粋

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