決算書をヒントに次の一手を考える! ◎地域金融機関さまの取引先支援のお手伝い〜支援に役立つ書籍と使い方(4)
株式会社ただいまの佐藤と申します。これまで10年以上、地域の事業者さんの支援を手がけてきました。支援にあたっては、地域の金融機関さんや支援機関の方々とご一緒させていただく機会が多く、千葉、長野、京都、広島、福岡、長崎などで主に活動しています。
地域の金融機関のお役に立てればと思い、このコンテンツをスタートして、4回目です。
これまでの繰り返しになりますが、地域の金融機関さんと活動していて驚くのが「私は銀行員で何も事業のことがわからない」「銀行業務以外のことは不得手である」とおっしゃることです。とんでもないことです。銀行の複雑な業務がこなせる方は、いろんなことができるはずだと思っています。
「不得手」だとおっしゃることのほとんどが「市場や顧客のニーズを知らない」ことや「事業をよりうまく展開するためのアイデアの提供」です。私の経験では、知識の獲得と考え方の訓練で、どんな方でもある程度までうまくいくと感じています。発想力とかは、実はそんなに関係なかったりします。
繰り返しになりますが、事業をうまく展開するためのアイデア提供のために、まずできること。 読書。
多忙な金融機関の皆様には、事業アイデアの提供のために割ける時間も限られていると思います。そんな中でもまずやっていただきたいのは、参考になる書籍を読むことです。読んで、知識を高め、その知識を実際に使っていただくことです。なんともアナログな手法ですが、、、Kindleなどの電子書籍も活用すればスキマ時間ででき、お金もそれほどかかりません。
地域金融機関の皆様にとって見慣れた「決算書」。その決算書を手がかりに、支援先の次の一手導き出す方法を教えてくれるのが、第4回目の本です。
『決算書で読む ヤバイ本業 伸びる副業』(日本経済新聞出版社)です。
最近、本業(とイメージされている事業)とは全く異なる事業で、実は最も多くの利益を稼いでいる企業が増えているそうです。
例えばですが、「楽天(EC)は、日本におけるamazonのライバルか?」と聞かれたら、どう答えますか?
多くの方は、楽天とamazonはEC業界の競合同士だと答えると思います。しかし実は、amazonはECではほとんど利益がありません。しかし、クラウドサービスのAWSで大きな利益を確保しているのです。また楽天も、ECでは十分に利益確保しているとはいいにくく、金融事業(楽天カード事業など)が実は主戦力なのです。これらのことは、それぞれの決算書のセグメント情報をみれば読み取れます。つまり、一般的な企業イメージと利益の源泉にギャップがあるのです。ということは、例えば地域の中小事業者がECをスタートする場合、アマゾンや楽天をモデルにしても、十分に利益確保ができるとは言い切れない、ということになります。
また、アドバイスの時にお話されることが多いと思われる「●●(企業名)みたいに」といった典型事例を紹介する時に、その会社が本当にその事業で利益を出せているのか、よくよく注意する必要があることも学べます。
新型コロナの影響による、事業方針の転換を検討しなければならない時に。
本書には、富士フィルムのように、強固な本業がかつてあり利益も確保していたが、環境の変化により事業の方針転換をせざるを得なかった事例も掲載されています。新型コロナによる影響は弊社の支援先の現状を見ても大きく、消費者の購買行動の変化にあわせ、事業そのものを大きく転換せざるを得ない場面がこれから増えるのではないかと感じています。決算書でいえばセグメントの増減が起こる、ということです。
今までやってきたことがあるから、これから取り組めることを発見できる、はずです
ご存知の通り、企業の決算書にはいろんなセグメントがあります。このセグメントはつまり「事業の組み合わせや関係性」です。(もちろん他社の買収から新しいセグメントが生まれ、必ずしもセグメント間にシナジーや関係性があるとは限らないのですが)その組み合わせや関係性はなぜ生まれるのか?本業として見えている事業より副業が稼ぐのはなぜなのか?そこを手がかりに、支援先の中小企業の決算書に新しいセグメントを追加できるような、次の一手のアドバイスが可能になるのではないかと思います。
amazonの場合、あれだけのお買い物体験を可能にするECを展開していれば、クラウドサービスもきっと気の利いた充実したサービスを提供できるはず、だと想像できます。この事業では儲けが薄いが、事業展開により蓄積された知見やノウハウを活用し、利益を確保できるサービスを生み出せるはずです。
「これまでは稼げた」ビジネスモデルにも賞味期限があることも、決算書が語ります
例えば、本書で事例として取り上げられているインターネット関連サービスでも紹介されていますが、かつては利益確保に大きく貢献してきた「広告モデル」「有料会員モデル」が必ずしもこれからも利益を確保してくれるのか??? なんとなくぼんやりと感じていたことが、決算書をみればクリアになることは、言うまでもありません。
もし、あなたが、地方自治体の方とお付き合いがあり、今後の中小企業支援についてすでに話しあっていらっしゃるような場合は、他社や他地域の成功事例を参考にされるときに、その企業のイメージではなく、具体的な数字ベース(できれば決算書)でお話される方が、地域支援をミスリードするリスクを限りなく回避できると思います。
読み方の注意ポイント〜決算書を読む基礎知識と最新情報
もちろんのことですが、決算書を読む上での知識を解説するページもそれなりに割かれています。ですが、地域の金融機関の皆様にとっては既知の事柄ですので、その分、読了時間は省けるとおもいます。また、本書が出版されてからだいぶ時間が経っています。紹介されている企業の事例については、ぜひ最新の決算報告で現況をご確認ください。
今回も長文にお付き合いいただき、ありがとうございました。
次回は、地域の金融機関の皆様から頻繁にご相談を受ける「ブランディング」に役立つ書籍とその活用方法をご紹介する予定です。
作成者:株式会社ただいま(サイトはこちら)
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