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広告代理店では難しい?デジタルの用方。

こんにちは4月からWHITEでサービスデザインをしている原田忠明です。
広告代理店で10数年デジタル領域の仕事を行ってきた経験をもとに日々変わっていくデジタルなるお仕事について書いてみたいと思います。また、WHITEに来て個人的に感じた広告とサービスデザインにおけるデジタルの使い方の違いも合わせて触れてみます。

爆発的に業務領域の広がるデジタル領域、一昔前にくらべ依頼される内容も様々になり、依頼する側の得意先内でも課題や与件を整理するだけで大仕事となってきました。

広告代理店はこの辺りを受け止めて生活者のデーターを元に調査を行い包括的にRFPをまとめ、『広告業務』へと着地させることが得意でした。ところが、最近はデジタルの範囲が広がりすぎて広告発想だけではカバーしきれなくなってきました。まずはそのあたりから大雑把に整理したいと思います。

「大きな声で呼び込む」が通じない

まず広告代理店では生活者にむけて大きな声を上げ、振り向いてもらう。というプロモーション発想で物事を考えます。

つまり広告の枠とか流通の棚をおさえ、それらを大規模に展開して認知をとることで販売に結び付ける。その中の一つとしてデジタルもやるという発想です。(下記図)

だだ現状、「情報シャワーの中で覚醒しているお客様」には「大きな声で呼び込む」だけでは伝わらなくなって来ています。簡単にいうと「これはいいものです!」に対して「本当に?」を調べる術をお客様が持ってしまった現状では、一方的な大きな声は裏取りされ、例えばamazonのユーザーレビューのほうが信憑性が高い情報として大きな声以上に流通してしまうのです。

いままでのように大きな声をあげて呼び込んで認知を得ても、お客さまに届いているとは言えない状況が生まれているのです。そこで、ユーザーに寄り添うためにSNSなどを使って施策を打つのですが、広告という発想から入っているため、どうしても「本当に?」の目線から逃れられず、結果的にお客さまに伝わっていないことになってしまう。この媒体で何やりましょうか?でクリエイティブ班出動だ!だと、なかなか拾えない領域で情報が流通しているのです。

“ アロケーションありきだとデジタル主語にはならない”
“アロケーション発想は媒体発想、お客様発想ではない”
“ 広告はどこまで行っても広告に見えてしまう”
“ お客さまは広告を冷静に判断する”

UXという概念が広告業界に入ってきた

さまざまな情報が溢れ、しかもお客様が自分本位の情報キュレーションしている現在、そのお客さまの「本当に?」に答える突破口の一つとしてUXという発想がフィーチャーされています。本質的なUXの定義は取り敢えず横に置いておいて基本は言葉のとおりユーザー体験です。

その個人的な兆しというか目覚めは2009年のカンヌ広告祭でサイバーライオンのグランプリを受賞したFIATのECO DRIVEだったように思います。

当時、環境意識が高くなりCO2排出が問題となる時勢の中、運転の技術や、くせなどのデータが蓄積され、それが燃費のいい走りかどうかが判定されるというもので、車のログを取ったUSBを経由してWebでダウンロードした専用のアプリケーションで解析、結果が見られるというものでした。
 
「よい運転をする事でCO2は減って、燃費も向上するよね!」というユーザー体験を通して、その体験が広告メッセージになるというもので、そのスマートさに感動したのを覚えています。

広告という枠でとらえるには余りに「サービスそのもの」なのにもかかわらず企業のメッセージもしっかりと伝わる。車自体にも仕掛けを施す必要があるこの施策を一体どのようにしてアウトプットまでたどり着かせたのだろう?と、当時、媒体ありきのアロケーション発想で動いていた自分には想像もできずに絶望したものでした。

“ お客様は情報をキュレーションする”
“ 自らの体験を通してなら受け入れる”
“ 体験(UX)はサービスの延長にある”
“ 体験(UX)はメッセージになる”

おまけとしてデジタル! という発想は…

広告代理店内部でECO DRIVE的なるものを実施できなかった理由は書いたとおりですが、WHITEに移動して『大きな違い』がありました。それは、デジタル主語でサービスを開発できることでした。

代理店で自分と企業をつなげてくれていたのは、それぞれの企業を担当している優秀な「広告の営業マン達」で、彼らが向き合うのは広告宣伝部署がほぼ全て。なので当然、告知が主語でプロモーションをメインに業務を行っており、初期にアロケーションを設計するのは当たり前でした。逆にいうとこれができない営業マンは問題外という状況の中では先ほど話したようにデジタル自体が主語になることはありません。当然、ECO DRIVEの様なサービス体験を通して絆とメッセージを配信することは広告アロケーション発注モデルでは実現が難しくなります。 

しかし、
「いい物を作れば売れる」という時代ではなくなった昨今、お客さまにとって嬉しい体験としてサービス価値を提供し、結果として企業(商品)との絆をつくっていくことが、ますます重要になってくる。そういう意味では今後、お客様に寄り添いながらものを考えるR&Dなどの部署が広告とは違うサービスそのもので絆やブランドを作っていくことになると考えられます。

更に言えばシェアリングエコノミーが生活者の中心になっていく世の中で、企業が事業ドメインを変化させる。なんてことは必ず必要になってくる、それこそ企業内の様々な部署を巻き込み、より新しいサービス体験を提供することを企業全体で求められてくるはずです。そんな時、もはや生活に欠かせないデジタルを主語にしながらにお客様と関係を作り、向き合っていけるような【動き】が出来ることは企業が生き残るために必須のポイントになっていくのではないでしょうか。

• 体験(UX)がお客様との関係をつくるキッカケになる
• お客様へ耳を傾けたサービス開発が絆をつくる
• 広告宣伝だけがお客さまに向き合う方法では無くなる。