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八ヶ岳から伊那盆地までぐるりと絶景! 入笠山と大阿原湿原【登山記】

 静岡県東部から信州の諏訪辺りまで、車で行けば2時間少々で着くが、たまには電車で行くのもよいと思った。
 10月の頭に富士見町から伊那市に跨る標高1,955 m入笠山(にゅうかさやま)への登山に誘われた。ここ数年誘っていただいているグループである。
 9時に富士駅から身延線に乗り甲府まで。途中富士川や身延山、下部温泉などを経由していく。行楽シーズンであり、登山リュックを持った人々が思い思いの駅で降りて行った。
 甲府から特急あずさに乗り換え、富士見駅まで。駅舎は素朴な木造だ。そこから、タクシーで富士見町の小さな町中を抜け、富士見高原に向かう。
 町を出るとすぐに田園や高原の風景が広がり、のどかな草原が顔を現す。 
 駅から、富士見高原リゾートまでは20分ほどで着いた。富士見高原リゾートは、冬は高速道路からわずかな時間でアクセスできるため、人気の富士見パノラマスキー場となる。
 そして、スキーのオフシーズンは多くの高原リゾート客で賑わう。マウンテンバイクの競技大会会場でもあるため、その愛好者が多くいるようだった。

富士見高原リゾートの駐車場から 素晴らしい天気だった 高原らしく清らかな空気もうれしい
冬のスキー場のメインゲレンデ 今はMTBのコースになっていた

富士見高原リゾートのゴンドラに乗車 八ヶ岳のふもとに広がる茅野平野

 今回、富士見高原リゾートのキャンペーンにより、静岡県民は無料でゴンドラに乗ることができる。横目にスキー場のメインゲレンデを見つつ、ゴンドラのある麓の駅に向かった。マウンテンバイクを持った人も多くいた。

ゴンドラのある駅
山頂は7℃、山麓は12℃と暑い下界とは別世界だ

 高速運航のすずらんゴンドラは、勢いよく山すそを駆け上がっていく。ゴンドラからは八ヶ岳連峰がよく見えた。
 この日は、あいにく八ヶ岳の頂上付近に雲がかかっており、その山塊の頂の部分がよく見えなかったが、その他は素晴らしく晴れ渡っており、八ヶ岳山麓に広がる広大な茅野と諏訪の平野がよく見えた。
 かつて八ヶ岳の山腹で取れる黒曜石を掘り、そして諏訪に暮らした縄文の人々、そして諏訪湖から旅立ってゆく多くの縄文の旅人を思い浮かべた。

ゴンドラの中から。八ヶ岳の山麓が雄大に広がっている景色は圧巻だ

 わずか10分ほどで山頂駅に着いた。山頂駅に着くと、そこはマウンテンバイクの競技コースの入り口になっていた。

MTBの専用コースの入り口が、山頂のゴンドラ駅の近くにある

 MTBコースに向かう人もいるが、ほとんどの客は入笠山の方に向かっていた。この富士見高原リゾートは、花のリゾートとして知られ、5月6月ごろには、すずらんの群生地となり、可憐な花を求めて多くのハイキング客で賑わうそうだ。
 この秋のシーズンは、紅葉を楽しめるのであろうが、今回紅葉には少し早く、花の盛りも過ぎていたため、目で楽しむものは少なかった。しかし、下界ではいまだに続く真夏日。それが全くここでは感じられない。
 清々しく綺麗な空気が心地よかった。「空気が違うねぇ」と同行の方も、満足そうに言っていた。

入笠山周辺のハイキングルート

入笠湿原を経由していざ!

湿原には板の道が走っている

 入笠山への登山口を目指し歩き始める。多くのハイカーが思い思いに歩いている。木陰の道を抜けると、湿原が始まる。湿原の中を走る板敷きの道を歩いていると、昔行った尾瀬を思い出した。
 色づき始めた草を近景に、遠景には青空と印象的な信州の山々があった。

四季を通じて楽しめる湿原リゾート
秋の気配を感じながら木道を歩く

 入笠湿原を気持ちよく歩き、鹿除けのゲートをくぐると、山彦荘があった。宿として宿泊できることはもちろん、軽食を食べることができるようだった。
 そしてさらに先に進むと、マナスル山荘(現 ヒュッテ入笠)があった。ここでは天文ショーなんかもやっているようだ。
 このマスナル山荘の辺りから、入笠山の登山道として本格的なところとなる。

山彦山荘前
マナスル山荘(現 ヒュッテ入笠)
マスナル山荘の近くから本格的な登山道が始まる

木陰の中を歩き、あっという間に入笠山山頂へ

 初心者向け、家族向けの山と言うだけあって、そこまできついところはない。よく踏まれた土の上をぐいぐいと上がって行く。程よく木々が覆っているため、木陰の中を登っていく感じだ。暑さをほぼ感じることなく、快適に足を運ぶことができた
 マスナル山荘から20分ほどで「岩場コース」と「う回コース」に分かれる。私たちは岩場コースを選択した。
 といっても、以前登った八ヶ岳の登山道などに比べれば、何でもないようなもので、程なく岩場を抜け、さらに歩くこと10分程度で山頂に着いた。

山頂では多くの人が景色を楽しみながら、昼食をとっていた

 山頂はぐるりと一周が見渡せる大パノラマだ。東には八ヶ岳連峰が見える。先程と同じく山頂は、雲に覆われていたが、その他は素晴らしいブルーだ。ゴンドラからよりもクリアにきりりと八ヶ岳山麓の平野部が見えた。
 ぐるりと西の方向に目を向けていくと諏訪湖が見える。諏訪湖の手前に、今年の四月に登った守屋山があった。

 そしてさらに南には、伊那盆地が、またさらに向こうには駒ヶ根の町であろうか。本当に南信州一帯がよく見渡せる場所なのだった。

諏訪湖 その手前には、今年4月に登った守屋山がみえた
遠くに見えるのは、伊那盆地、駒ケ根の町だろう

入笠山から大阿原湿原へ

山頂からのピストンでは物足りないので、大阿原湿原を経由して戻ることに

 けして健脚とは言えないが、少し物足りないので、入笠山から仏平峠〜大阿原湿原を経由して、ゴンドラ駅に戻ることにした。
 大阿原湿原に向かう下りの道も、のどかなもので、あまり苦労せず、気持ちよい初秋の雰囲気の木立の中を歩くことができた。

気持ちよく柔らかい道を下る
仏平峠 印象的なところもあり、変化を楽しめる

 20分~30分ほどだろうか、下りが終わり「首切り清水」という場所に出た。この物騒な名前は、高遠藩の侍が近道でこのあたりを通り、この清水で喉の渇きを潤そうと思ったところ、後ろからばっさりやられたという伝説から来ているようだ。
 現代は、直ぐ近くを舗装道路が通り、至って治安は良さそうだ(笑)

物騒な伝説のある首切り清水

 この首切り清水から、大阿原湿原までは徒歩で10分ほどらしいが、示されているルートは、湿原の水が入り込んでいるのか、大変に足場が悪く、少し歩いて「こりゃ、だめだ」と判断し、並行する舗装道路を歩くことにした。

大阿原湿原をぐるりと歩く

 大阿原湿原は、富士見町側に入口があり、大部分は伊那市になるらしい。日本の高層湿原としては最南端というような解説版があった。
 花の百名山として知られる入笠山の楽しみの一つとなる場所だ。
 紅葉や花はここでも楽しめなかったが、静かに広がる湿原の中の木道を歩きながら、歩くことの楽しさをしみじみと味わった。
 赤とんぼが飛んでいた。赤とんぼは羽化したばかりなのか、個体が小さく可愛らしかった。(注:赤とんぼは、6~7月に羽化するそうで、秋に群れるのは、涼しくなってきて一斉に平地に現れるからだとか。)

苔むした林の中を歩く場所もある 雰囲気がとてもよい
色づいた湿原も枯淡の味わいがあって心が落ち着く

 この大阿原湿原も耳をすませば、草むらの下に清流が流れているようで、微かな水を音がする。
 シーズンさえ良ければ、ここには水芭蕉や鈴蘭などがたくさん咲いているのであろう。

途中このような水の流れが見えた
途中見かけた巨岩。二つに割れた印象的な姿から祭祀場ではないかと思ったが、特に看板もなく、岩陰を探ったが何もなかった。

 この日は、赤とんぼを身に纏うようにして、ぐいぐいと歩いて行った。あたりは静かだった。湿原の草は、緑から紅葉に向けて赤くその身を染め始めていた。
 山々も色づき始める準備をしているといったところだろうか。全体的に彩度が落ち、夏が明らかに終わりを告げ、秋の気配が濃くなっていた。

赤とんぼが悠々と飛び回り、看板で羽を休めていた。かなり近づいても飛び立とうとしない。

 大阿原湿原では、ゆっくり歩いて約30~40分ほどで湿原の木道を一周できる。

この日は富士見町の山路ペンションに宿泊

 大阿原湿原の散策を楽しんだ後は、山頂のゴンドラ駅まで戻った。湿原から60分ほどだろうか。
 ゴンドラ乗り場に着いたのが朝の10時ごろ。そして入笠湿原~入笠山~大阿原湿原と回って戻ってきたのが15時ごろだ。
 約4時間で入笠山・大阿原湿原コースを回ったことになる。健脚でなくとも安全に回れるおすすめのコースだ。花の季節に行けば、更に楽しめることだろう。 

再びゴンドラの山頂駅から八ヶ岳方面の眺め

 山頂のゴンドラ駅から麓に降り、その日のハイキングは終わり。富士見高原リゾートの近くにある、山路ペンションにその日は宿泊した。
 瀟洒な素敵な宿だった。

瀟洒な山路ペンション 料理もおいしかった。

この次は、二日目の朝、朝霧棚引く富士見高原の美しさと諏訪大社巡りの様子を書きます。

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