見出し画像

【紀行文】アースダイバーは縄文を幻視して歩く その2~高井戸東遺跡と久我山稲荷神社

白い巨塔は死のタナトス

 しばらく歩いてみることにする。高井戸・久我山方面に向かっていく。
 神田川沿いには多くの公園があり、球児が声援を浴びながら、練習をしていた。その箇所があまりに多いので、ずいぶんと野球が盛んな地区だと思っていたが、どうやらその理由は、この神田川沿いにある国学院久我山にあるのではないか。国学院久我山は、野球の強豪校としても有名である。

右上のような高台に公園やグラウンドが整備されていた

 高井戸駅に近づくあたりで、一際目立つ白い塔が見えてきた。
そのアースダイバーは縄文を幻視して歩く その1~高井戸 塚山古墳1で記した通り明大和泉キャンパスからも見えた白塔だ。
 これは以前三鷹に行った時にも見えていた記憶がある。
 高い白い塔である。

だんだん近づいてくる白い巨塔

 その時は、調べて杉並清掃センターの塔であると知ったが、実際に現場を見たわけではなかったので、半信半疑であった。それがこの神田川沿いにあると今回分かった。近づくと確かに清掃工場であった。付近には高いビルがほとんどないので、一般の人々が住むこの住宅地の中にひときわ高く白くそびえ立つバベルの塔のようである。
 青い空に屹立する何かの象徴のような、その白々しさが不穏な気配、違和感を感じさせるものであった。清掃工場は廃棄物を焼く場所である。それは死を意識させる。
 タナトス、そんなイメージが浮かんだ。
 そこはおそらく何か古墳であったじゃないかと思った。高低差が激しいところもあり、やはり何か土地の感じも憂鬱だった。これは少し感じるところがあった。
 調べてみると、やはりここは古墳だった。

 土地に色濃く残る匂いが今に残っているのだと感じた。
 ようやく、アースダイバーに私は近づいてきたようだ。

四柱のモニュメントを見て思う

 少し進むと、やや陰鬱な感じのところがあった。公園は荒れており、管理されていない竹林があった。ちょうど京王線の停車場等があるあたりで、何やらいわれのある場所なのかもしれない。

急にウエットな感じになった
荒れた設備と高台に建つ瀟洒な家の対比

 川べりを歩いていると所々に石で作られたものが散見された。 

陽物状の止め
環状の石
巨石のモニュメント

 写真のような車止めとして使われている陽物、環状に並んだ石、神社近くにあった巨石、川沿いの住人が製作したと思われれる石像があったりなど面白かった。
 ある公園では石を囲み、4つの柱が立しているオブジェのようなものがあった。おそらくは噴水かミストが出るものであり、柱はスチール製であり、新しいものであることは明白なのだが、これは何かミシャグジや諏訪信仰を感じさせるもので、これも面白かった。
 鎌倉街道を介して諏訪とつながりがあったことが、今ここに立ち現れているのかもしれない。

諏訪大社の御柱を想像させるモニュメント

久我山稲荷神社は秦氏ゆかりの地か

 高井戸駅についた。駅前のミスドで一息つきながら付近を調べてみた。
 高井戸には温泉がある。そしてその温泉のすぐ傍に栗の林が広がっている場所がある。内藤さんという方が栽培している栗のようだ。
 マップで見ると、そこだけ広い畑が広がっており、何か不思議な感じがする。さらにそのマップをよく見てみると、皇紀2600年記念碑というのがあった。

 人も車も多く行き交う高井戸でかなり広い範囲に広がる栗林が珍しくもあり、栗は縄文時代の常食であったことや栽培もされていたことを踏まえると、ここも縄文的な感性を持ち続けている場所なのかもしれない。

 少し疲れたが、ここから久我山稲荷神社まで歩くことにした。
 相変わらず人の往来は盛んだった。久我山の駅に近づくと玉川上水関係の写真を展示した喫茶店があるらしかったが、私は見つけられなかった。

 久我山駅にたどり着き、そこから久我山稲荷神社を探した。駅からは少し高台にあり、近かった。
 やはり住宅街の一角にあり、こじんまりとしているが、佇まいが落ち着いており良い感じを受けた。階段を上ると、やはり朱塗りの鳥居が見えた。地元の崇敬を集めているようだった。この日も何かの会合があり、その後片付けをしている一団があった。 

少し小高いところにある神社
御祭神は大日霎貴神や保食神など
別の場所にあった神社の祭神を合祀している
ここでは、湯立神事が行われているとのこと

 境内には富士講の石碑があった。この近くには、富士見町と言う地名がある。やはり富士山が見えたのであろうか。石碑を見るとかろうじて「富士山仙元大菩薩」と読めた。浅間のことであろうか。字が異なるところが面白い。

富士講の石碑
摂社の天神様と八雲大神(スサノオ)
パワーの強い神様が勢ぞろいだ

 この久我山稲荷神社のことを調べてみるといろいろ面白い。幾つか箇条書きで上げてみる。
・湯立神事とは、盟神探湯(くがたち)という神話・神事に由来する。久我山という地名と重なる部分がある。
・朱塗りの鳥居に「秦氏」の名がある。どうやら古来より秦氏の崇敬を集めている神社のようだ。秦氏は、渡来人であり、稲荷神社の総本山、伏見稲荷の創建に関わっている。
・稲荷神社の境内には、金玉均という朝鮮開化運動を戦った人に関係する日が建立されている。秦氏との関係もあるのだろうか。

 気持ちの良い場所であり、日本の古代史に深く関係していそうな、そんな気配がする神社である。

雑然とした吉祥寺にてオーラを占う

 久我山あたりで歩き始めて二時間が経過しようとしていた。そろそろ足が痛くなり息も上がってきた。私はここで一旦切り上げ、吉祥寺までは電車で向かった。
 吉祥寺で降りる。非常に多くの人々がいた。もう何かここは全く別の世界のようだった。吉祥寺駅前の商業施設を通り抜け、井の頭公園に向かった。 
 井の頭公園の近くになると、雰囲気が変わる。古着屋や古美術、美術商、そうした何か蚤の市のような雑然、猥雑さが支配する空間だ。
 若者で賑わっているのだが、洗練されていないウェットな感じがあった。

偶然見つけた岩座(いわくら)というお店。面白かった。

 私はそこで岩座(いわくら)という神社グッズや石(パワーストーン)を売るお店に入った。そこでオーラ診断を行った。
 500円と3000円のコースがあるのだが、せっかくなので3000円の診断を依頼。診断自体は、鑑定装置に手を触れつつ写真を撮るだけなので、五分程度で終わった。すぐにオーラの色やチャクラの形、色がわかり、その状態に合わせた石を紹介してもらった。
 手軽にできるうえに、詳細なレポートが面白いので、興味がある人はお薦めしたい。石の購入を強く勧めてくることもないので、気持ちよく日本文化やスピリチュアルに触れることが出来るお店だ。

 店を出ると井の頭公園方面の写真を1枚撮った。そこは水辺のやはり独特な落ち着いた雰囲気があった。私はこの吉祥寺を以て、本日の旅を終える予定であったが、旅のもととなった「アースダイバー」の地図を開くと、私が通り過ぎた西永福に大宮神社という大きな神社、そして古墳があることがわかった。
 日暮れまでまだ少し時間があった。私はそこを本日最後の場所とすることにした。

吉祥寺から近い井の頭公園 そこに至るまでにあるショップ群の猥雑さが好きだ

※次回は、3/27ごろの更新を予定しています。

この記事が参加している募集

サポートいただけたら、より勉強してよい記事を書いて行きます。ちょっと遠くの気になるあの場所の紀行文を書きます。