【紀行文】八ヶ岳の縄文文化を訪ねたら想像以上に凄かった~井戸尻考古館編~
八ヶ岳の麓には縄文時代の遺跡がいっぱい
八ヶ岳の麓には、年に一回は来ている。
自分の住んでいる静岡から車で日帰りができる範囲であり、自然や博物館や美術館、ウインタースポーツ、登山、そして蕎麦など、多くのレジャーやグルメがそろっている。
ここ数年、遺跡を訪ねるという目的が新たに加わった。もともと神社仏閣が好きなので名跡を訪ねることはあったが、古墳や縄文・旧石器の遺跡を見る楽しみも友人に教えてもらった。
誘われていったのがきっかけだが、今回は、私の方からこの八ヶ岳山麓の縄文時代の博物館を訪れてみたいと企画した。目的地は富士見町の井戸尻考古館と茅野市の尖石縄文考古館。
遅ればせながら知った「縄文のビーナス」と「仮面のビーナス」を見てみたかったというのが、その動機だ。
先ずは高台にある井戸尻考古館へ
井戸尻考古館は、茅野市の南東富士見町にある。距離はそんなに離れていない。縄文時代の中期の主要な遺跡「井戸尻遺跡群」の一つであり、重要文化財指定されている藤内遺跡の出土品など、貴重なものがずらりとならんでいる。
まだまだ不勉強なので、藤内遺跡が考古学上どれだけの価値を持つのかは解説する力がないが、出土物が指標となりえる遺跡ということだ。
面白き縄文時代の神々
連れの学芸員は、全く興味がないそうだが、ここ井戸尻の土器に数多く刻まれている蛙や蛇は、当時の土器を作る人々の神話観、精神構造を想像することが出来てとても面白い。
さらに発展して、土器や土偶に描かれた人物像を、古事記の神々に比定しているところも面白かった。なぜ、そう考えることができるのか、とてもロマンにあふれる文学的な話だが、考古学者に言わせると科学的でないから好きではないとのこと。
まあ、ちょっと古代にロマンを感じる文系人間には十分面白さがありますけれどね。
蛙と蛇の文様は世界各地でみられるモチーフのようだ。曰く月の満ち欠けに関係する、出産に関係するなど、いろいろ説がある。
呪術的な意図があったのだと想像するけれど、明確な答えは出ず、今後も論争が続くのだろう。それはそれで、今見ている数千年前の土器や土偶を作ったぬくもりすら感じられるこれらの遺物とその文様を見ながら、作者への思いを馳せるのは、楽しい。
ここ井戸尻は縄文時代の高地。何かしらの農耕文化があったと推定されている。人々は星空と月を眺めながら、何を祈ったのだろうか。
ほかにも、水煙渦巻文深鉢、神人交会文深鉢、蛇文装飾深鉢、四方眉月文深鉢などが展示されている。どれもネーミングセンスが素晴らしい。
あまりメジャーではないのかもしれないが、素晴らしい景色と遺物に出会える場所だ。
井戸尻史跡公園(井戸尻遺跡)を歩く
井戸尻考古館から左手下方に史跡公園が広がっている。国指定史跡であり、とてもよく整備されたところだった。古代ハスの池や復元住居があった。この日煙が上がっていたので、何をしているのかを訪ねると、縄文時代の手法で調理をしてみるというイベントだった。
数組の家族が楽しそうに参加していた。いいなあ、こういうの。
歴史民俗資料館もどうぞ
井戸尻考古館のすぐ隣に比較的新しめの建物がある。富士見町の歴史民俗資料館だ。町が集めた歴史と民俗に関する資料が所狭しと並んでいた。
じっくりは見なかったが、武具や古代の鏡コレクションが特徴的だった。
おまけ:信州といえば蕎麦。富士見町の名店「にしむら」へ。
尖石縄文考古館編に続きます。