短編ミステリー『アムネシアの夜』事件簿その1
1.カヴェコのシャーペンを追え
『アムネシア(記憶喪失)の夜』とは、過去にタキオンが購入したものの、買ったことさえ忘れてしまっているような――いわば、お蔵入りになった――アイテムたちをピックアップして、「いつ、なぜ購入したのか」を読者と一緒に思い出そう、というセルフ推理小説である。
今回の依頼物は、ご覧の通りだ。素敵な缶ペンケースに入った銀色のシャーペンである。
KAWECO(カヴェコ)社を知らない人のために、以下に説明しよう(日本語のwikiがなかったので、代理店のHPから引用する)。
このシャーペンの金色バージョンを持っていたような気もする……が、記憶が定かではないので、早速調査を開始する。
私がこの手の文具を買うとすれば、利用するお店は「分度器ドットコム」だろう。購入履歴を調べようと思ったが、久しく利用していなかったので、パスワードを失念している。
パスワードを再設定して潜入に成功した。購入履歴を見ると……
「あった」と思いきや、これは黒色バージョンの購入履歴だ。私が持っているもう一本のペンシルスペシャルは、金色バージョンではなく、黒色バージョンだったことが判明した。しかし、肝心の銀色バージョンの購入履歴が見当たらない。
Gmailに聞き込みを行ったが、何の情報も得られなかった。
Evernoteはどうだろう?「KAWECO」狙いで張り込みを行ったところ、3件のノートが捜査線上に浮上した。が、そのどれもが黒色バージョンの情報だった(黒色なのにシロである)。続いて、「カヴェコ」で当たってみると……あった。洋書と輸入文具の店「FLANNAGAN」のノートだ。
意外とあっけなく購入先が分かった。
私は、2013年1月31日に黒色のペンシルスペシャルを分度器ドットコムで購入した後、2013年3月26日頃にFLANNAGANで銀色のペンシルスペシャルを購入したようだ。
しかし、購入の動機が分からない。というのも、私は普段シャーペンを使わない。だから購入したとしても無用の長物と化してしまう。
――実は、私は使いもしないシャーペンを収集する癖がある。このペンシルスペシャルも、そういう私の収集癖によって、お蔵入りさせられてしまったかわいそうなアイテムの一つなのだろう。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?