2024年11月 観た映画感想文
タイトルの通り、2024年11月に観た映画の感想文です。
対象は映画館で観た新作のみ。
ストリーミングで観た分や再上映で観た過去作品、テレビアニメなどの総集編作品、観るのが2回目以上の作品などは末尾にタイトルだけ備忘録として書いておく感じでいきます。
前月の分はこちら↓
ロボット・ドリームズ
フランス初のアニメ作品。全編にわたって台詞は無く、簡単な間投詞とロボットの口笛、音楽、演出、キャラの表情だけで物語は進められる。
誰が何と言おうとこの映画はまさしく「愛」について極めて真っすぐ描いた快作だと思う。最後のシーンとかちょっと泣いちゃった。
Earth, Wind & Fireの『September』が物語の鍵として節々で挿入されるんだけど、この曲の歌詞が「9月の出来事を12月に追憶する」ってストーリーであることを事前に知っていると、「この映画マジで歌詞の通りすぎる!」と感激すること間違いなし。
掛け替えのない存在との出会い、そんな相手との理不尽な離別、その後に訪れる新たな出会い、過去との朗らかな決別。離れ離れの最中にあって片時も忘れたことのない相手へ別れを告げること、それ自体にネガティブな思いは一切なくて、お互いがそれぞれの道を歩んだ結果でしかないと納得できている。それでもやっぱり一抹の寂しさだけは残るから、最後にそれぞれ違う場所から「say, do you remember?」と声を揃えて歌うんだよな。
こんなにも清々しい別れのシーンはなかなか観られないと思った。
以前は心の底から仲良くしていたし、別段喧嘩別れしたってわけでもないのに、様々な事情で今現在は連絡を取らなくなってしまったかつての友達……そういう存在って誰しもにいると思う。鑑賞後ふと彼らの顔が浮かんで、何だかノスタルジックな気持ちになった。
SF的な視点からするとロボット側を少し人間臭く描きすぎでは?と感じてしまう部分はある。タイトルにも関わる「ロボットは夢を見るか?」というSF界ではある意味象徴的と言える問いにも、サックリと「見ますよ〜」と回答してしまっているし、SとFが1:9くらいの比率であることは間違いない。
ではこの作品はSFではないのか?というと案外そうでもないんじゃないかというのが個人的な感想。というのも、実はこの映画の裏には非常に骨太な隠されたテーマがあるんじゃないかと思う。それは、果たしてロボットは、もっと言えば「最上の友となることを目的に設計されたプログラム」は、その目的通り人類にとって最上の友となり得るだろうか?という哲学的にも思える問いかけである。その問いに対してこの作品はかなり前向きな答えを示してくれるんだけど、「所詮はプログラムじゃないの?」と冷めた感覚になる人がいたとしても不思議ではないかな。
ただ個人的にはこの映画が示す結論の方が楽しそうだからそっちを支持したい気持ちが強い。本来はこんな感じで小難しく捉える必要ないのかもしれないけどね……。後味が爽やかな一本です、オススメ。
グラディエーターII 英雄を呼ぶ声
まさかの続編ってことで一体どうなることやらと思いながら観に行ったんだけど、超硬派で無骨な作風だった前作とまったく異なるアプローチというか、何ならもはや微塵も寄せる気を感じられないほど思い切ったことやっててある意味圧倒された。
作品の権利を買い取った大手製作会社がネームバリューだけで全く異なる作風の続編を作って「なんじゃこりゃ」となるような事例を世の中に生んでしまうパターンはこれまでも多々(具体的に何というわけではないけど……)あったわけだけど、まさかのリドリー・スコット本人がコレをやってるわけだから何も文句がつけられない、あまりにも無敵すぎる。しかも1本の映画としてちゃんと面白いのだからなおのことである。
コロッセオに人食い鮫が泳いでいていいんですか?
いいんです、なぜならリドリー・スコットが泳がせているから。
どうやってコロッセオ内に海戦を再現できてしまうほど大量の水を張ることができているのですか?
そんなこと聞いたってどうしようもないですよ、現にリドリー・スコットは水を張って海戦を再現できるようにしたし、ついでに人食い鮫も泳がせてます。
あと海戦再現自体は史実に則しているだなんていう話もあるよ!
この映画ってもしかして鮫映画なんですか?
鮫映画ではありませんが、鮫映画と酷似したパッションを持つ同胞ではあるかと思います。
マジで何なんだよこのトンチキ映画は……。
いやしかしただトンチキなだけでは済まさず、ちゃんと〆るところは〆て大作映画に相応しい作りになっているところは流石巨匠と言わざるを得ない。物語のスケールもデカくて歯応えがあるし、決してチープな映画というわけではない。てか何であんなにめちゃくちゃやってるのに作品全体が重厚感に満ち溢れているんだろう、不思議な感覚。
あと主演のポール・メスカルの雰囲気が若き日のラッセル・クロウにめちゃくちゃ近くて「よくキャスティングしたなぁ!」って思った。ぜひ1作目を予習してからお楽しみください。
レッド・ワン
予告編とかあらすじを眺める限り良くも悪くもノリはB級な感じなんだろうな〜と予想してたんだけど、蓋を開けてみれば思っていたよりもずっとしっかりした作品で驚かされた。あとで調べてみると『ジュマンジ』のリブートを作った監督の最新作と聞いて納得。主演ドウェイン・ジョンソンもその縁でのことなんだろうな。
クリスマスの直前、サンタクロースが何者かによって誘拐されてしまった!っていう導入だからもっとコメディチックな雰囲気になるかと思ったし、実際結構ノリは軽いんだけど、一方でドウェイン・ジョンソンがいることにより画面の圧力が上がっていい塩梅にコメディ感が薄まる……という不思議な効果が生まれていた。一晩で世界中にプレゼントを配って回るサンタクロースという存在は一体何者なんだ?という手垢の付きまくったテーマでここまで新しい物語を作ってみせたところはお見事。
サンタクロースを巡るストーリーな一方、肝心のサンタクロースを物語の主軸に置くのではありきたりになってしまう。
→あれだけの大仕事をするわけだから、サンタクロースの周囲には彼の仕事をサポートする面々がいるはずだ。
→スポットライトをサポート側に向けた上でサンタの腹心を主人公に据えたバディものを展開すれば面白くなるのでは?
恐らく↑こういう流れでプロットが形作られていったんじゃないかと勝手に想像してるんだけど、どうやったらそんな発想が出てくるんだ!と素直に感心。
しかもあのホリデーシーズンっぽい浮き足立つような朗らかさがちゃんと芯に残った作品に仕上がってるバランス感覚も凄い。「面白い」というよりも「楽しい」と表現した方がしっくり来る感じ。クリスマスに向けて助走をつけるのに最上級の娯楽作品だと思います、オススメ。
ヴェノム:ザ・ラストダンス
ヴェノムシリーズは1の頃から結構好きで、そこから正統派進化系って感じの2が飛び出してきて、今回ついに満を持しての三部作完結編ってことでめちゃくちゃ楽しみに観に行ったんだけど、何か丸くまとめようとし過ぎて結果的に良さが削がれてしまっていたように感じた。
ストーリーに味がせず、戦闘シーンの迫力も何だかイマイチ。何よりヴェノムのキャラ付けを可愛さに寄せすぎた結果ただのマスコットになってしまっていたのが本当に致命的。「吐く台詞から何だか人間味を感じられてどうにも憎めないが根本的な部分で倫理観に欠けている人外」というのがヴェノムというキャラクターの最大の特長だったはず。しかし今作は何を勘違いしたのかその部分を「倫理観に欠けた人外だけど何だか人間味のある憎めないヤツ」に書き換えてしまった。前者と後者とでは含まれる要素は同じだけどニュアンスが全く異なる。
加えて、これまではエディとヴェノムの奇妙なバディ物って部分が物語の面白さの根っこにあったのに、今作はヴェノム側の物語にフォーカスしすぎて作中の大半でエディが喋るだけの舞台装置になってしまっている。これまで築き上げてきたシリーズ全体の魅力を全てかなぐり捨てるかのような蛮行である。
脚本家が変わったのか?と思うくらいブレていたけど、調べると1と2の両方に脚本で参加してた人が今作も手掛けているし……だとしたらどうしてこんなことに?個人的には脚本家の人数が1の時は4人、2の時は2人(そのうち1人は主演のトム・ハーディ)だったのが今作は1人だけになっていること、1と2では監督と脚本家は別々だったのが今作では脚本家が監督も兼務して回していることあたりが怪しいのでは?と睨んでいるけど、さすがに邪推の域を出ない。
一人のファンとして非常に残念なことだけど、リブートが入らない限り、恐らくヴェノム単体の映画はコレが最後になってしまうんだろうと思う。エンディング後のCパートで何だか続きそうな引き自体はあったけど、興行的にも批評的にもコケてしまったしな……という気持ち。一応ソニーズ・スパイダーマン・ユニバース(SSU)っていう大きな世界観の中に属する作品だから、今後何かしらの展開が続く可能性もゼロではないんだろうけど……どうなんでしょうね?。それにエディとヴェノムの物語自体は今作で曲がりなりにも終わってしまったし、ここから続けるのはそれはそれで野暮だとも思う。いずれにせよあんまり期待せず続報を待とうと思います。
チネチッタで会いましょう
イタリア映画はめちゃくちゃ久しぶり?に観たかも。
気難しく、頑固で、自分の中の決まったルールに基づいてでしか行動したくない、偏屈の極地みたいな映画監督のおっさんが主人公。このおっさん、なまじ映画監督としては押しも押されもせぬ巨匠であるため、周囲の人間は「また何かやってんな……」と思いつつそんな彼のワガママに付き合ってあげていた。
物語は彼が新作映画を構想し、撮影を始めるところから始まる。しかしそんな折、彼はプロデューサーとしてこれまで二人三脚で映画作りをしてきた愛する妻からついに三下り半を突きつけられる。妻は神経質な彼に付き合い続けてすっかり消耗してしまっており、カウンセリングに通いながら新しい自分を探すため着々と離婚に向けた準備を進めていたのだった。
そこに至るまでたっぷりとおっさんの偏屈ぶりが映されるのもあって、観客からしてみれば「そりゃそうだろ」としか思えないわけだけど、ただ彼からしてみれば青天の霹靂である。しかもこの後に及んでなお自分の何が悪かったのかを全く理解していないところが本当に救いようがない。
だがしかし今は新作映画の制作中。撮影では彼と似て一癖も二癖もある俳優たちが彼の言うことを聞かず隙あらば勝手にアドリブを入れようとしてくるため、それをいちいち指摘しつつ何とか現場を回さなければならない。現場にはプロデューサーとして妻がいることもあり、その度に説得しようとするも梨のつぶて。そんなこんなで気を揉んでいると今度は愛しい一人娘が唐突に思わぬ相手と結婚すると言い始め事態はより一層大混乱。
今までは同じやり方で何もかもが上手くいっていたのに、今となっては同じやり方では何もかもが上手くいかない。
そうしてフラストレーションに塗れた彼は、ついにたまたま足を運んだ他人の映画の撮影現場で好き勝手に指示を出すという暴挙に出る。しかしこれがトドメの一撃となって、とうとう彼は己がいかに間違っていたのかを痛感することとなる。
これまでの愚行を内省し、妻の思いを受け入れた彼は、自分が書き上げた映画の結末を大きく書きかえて、これまでの作風とは全く異なる新たなエンディングへと物語を導く。ただこの最後のシーンがあまりに抽象的すぎて何が言いたいんだかいまいちよく分からなかった。着地がフワッとしていて、最後の最後で締まらない印象になってしまったのは少し残念だった。
ストリーミングで観た作品など
◆ルパン三世 カリオストロの城
◆インターステラー