2024年9月 観た映画感想文
タイトルの通り、2024年9月に観た映画の感想文です。
対象は映画館で観た新作のみ。
ストリーミングで観た分や再上映で観た過去作品、テレビアニメなどの総集編作品、観るのが2回目以上の作品などは末尾にタイトルだけ備忘録として書いておく感じでいきます。
前月の分はこちら↓
ポライト・ソサエティ
友情有り、努力有り、勝利有り、恋愛有り、感動有り、笑い有り、涙有り、ダンス有り、歌有り、カンフー有り……と、ありとあらゆる要素を無理やり一つの箱の中に詰め込んだような印象の一本。
どうやらインド映画っぽいノリとテンションにイギリスっぽいユーモアセンスを投入して煮詰めた結果この映画が生まれたらしい。まぜるな危険とはこのことである。
物語の軸になるのはスタントアクターになることを夢見る女子高生のヒロインとアーティストになることを夢見ながら美大へと通う姉。二人は仲睦まじい姉妹であると同時にお互いの夢を尊重し合う戦友であり、お互いを最も理解しあう一番の親友でもある。しかし姉の方は絵を描くことに挫折気味で現在休学中……。
それでもヒロインはもう一度姉が立ち上がることを信じて日々空手道場で(戦う時はカンフーっぽい描写なのに空手?)鍛錬に励む……と思いきや、姉がひょんなことから婚約!夢を諦めて男にうつつを抜かすなんて許せない……それに相手の男には必ず何か裏があるはず!そいつを暴き立てて、この婚約とその裏で蠢く陰謀を阻止せねば!!
こうしてヒロインの身勝手な暴走が始まり、観客である我々は目いっぱい共感性羞恥を掻き立てられることになるわけだけど、次第に風向きが変わってきて何もかもがハチャメチャに転がり始める。
終盤にかけて展開される怒涛の「そんなことある〜?」なシーンの連続も、物語の勢いに押されて「まあ……そういうもんか……」と一旦飲み込まざるを得ない。ブルドーザーのようなパワフルさでもって一切の躊躇いなく観客を引きずり回すタイプ。あるいはジェットコースターみたいな問答無用さがある。
細かいことを気にする人は泡吹いて倒れる仕上がりで全体的に力押しな感じは否めないけど、段々とそれがむしろ心地良くなってくることでしょう。多分、きっと、恐らくそうなるんじゃないかな。
頭空っぽの状態で楽しめるエンタメ作品です
ラストマイル
久しぶりに邦画観た。『アンナチュラル』と『MIU404』の二つの別のテレビドラマ作品と世界観を共有する作品だけど、とはいえわざわざ予習しなくても大丈夫って話を聞いて足を運ぶなどした。
実際過去作の登場人物がほぼファンサービス的にチラ見せされるだけで物語の本筋にはまったく関わってこないからシリーズ初見でも十分楽しめたと思う。これは非常に助かる。どっちのドラマも家族が飯の時間に録画を見てるのを横目に眺めてたくらいの知識しかなかったから予習必須となるとかなり重くなって観に行くことはなかったんじゃないかな。むしろこの映画をきっかけにこのユニバースを堪能するというルートもありかも?という感触がある。
いやしかし本当によくできた作品だな〜と思った。物語が隅から隅までちゃんと設計されているというか、ものすごく几帳面に紡がれているような印象を受けた。「どうすれば観客の感情をコントロールできるか」について熟知している人が深い吟味を重ねて書き上げたストーリーって感じ。
序盤の風呂敷を広げるパートはドキドキワクワク。
中盤の謎が謎を呼ぶ多層式の展開は良い意味でじれったい。
終盤の展開を溜めに溜めてから始まる怒涛の伏線・布石回収パートなんかは圧巻の一言。
全ての謎がものすごいスピード感である一点に向けてギューッと収斂していくのがもう脳みそ弾けるんじゃないかってくらい面白い。
全体的にハイテンポでズンズン物語が進んでいくんだけど、この映画の何がすごいってそんな駆け足気味なテンポの割に無理矢理な感じが微塵もないところ。
駆け足なことを自覚しつつそれを意識させないよう観客を誘導するための動線を丁寧に丁寧に引っ張る。尺はないけど説明を雑に省いたりしない、というよりむしろ尽くしすぎなくらいちゃんと説明をしてみせる。その代わり主要な登場人物は舞台設定を工夫することで最小限に留め、なおかつめちゃくちゃ早口でセリフを喋らせることで情報の質を物理的に高める。もちろんキャラクター造形で「コイツらは早口であって然るべき」と観客に納得させることを忘れない。
物語を構成する要素の何もかもが綿密に組み上げられていて、その全てに合理的な裏付けがあって、いや〜ほんと改めてすごい作品ですよコレは。
ところで、物語の主要な舞台である最先端の自動化倉庫、これセットとCGの組み合わせで作ったのかな〜と思ってたんだけど、エンドロールの中で「特別協力 トラスコ中山」って文字が流れてきたのを見た瞬間「あぁ〜〜〜〜!!!」と全てに合点が入った。確かにトラスコが何かすげぇ倉庫を作ったってニュースどっかで見たわ〜と記憶が呼び起こされ、突然まったく関係ないと思ってた点と点が結ばれたような感覚が完全にアハ体験だった。何ならこの映画観ていて一番盛り上がったのがエンドロールかもしれんってくらい俺は興奮した。
(多分映画館内で自分と同じ気持ちになってる人はいないんだろうな……と思いつつ)
純然たるエンタメ作品として綺麗にまとまってるし抜群に面白い映画です、オススメ。
トランスフォーマー/ONE
映画トランスフォーマーシリーズ、新作が公開されると何だかんだ観に行っちゃうんだよな~。色々と文句のつけどころはあれど、結局観客が観たいものはちゃんと提供してくれるからある意味で安心感がある。
ただこれまでの映画シリーズが基本的に実写とCGを組み合わせた現実世界の人間とオートボットたちの物語だったのに対して、今回はまたガラッと趣向が変わって完全に3Dアニメ作品として新しいフランチャイズを始めたっぽい。ただ実際観てみると思っていたよりもずっと骨太で歯応えのある作品だった。
オプティマス・プライムとメガトロンのオリジンを再解釈・リブートして、かつて志をともに共闘した若き日の二人の姿を描く……といったストーリーラインからは「ここから長く続けていくぞ!」という気合いが感じられる。
一見すると少年マンガっぽいストーリーラインでいかにも子供向けな印象を受けるが、「奴隷のように扱われる労働者」と「言葉巧みに労働者達を騙し搾取を続ける支配者」の階級間闘争がさりげなく描かれてもいて、実は結構社会派な側面もあったりする。「子供に乞われて一緒に観に来た大人たちの心もガッチリ掴みに行くぞ!」という気合いが感じられる。
トランスフォーマーって何?オートボット?ディセプティコン?サイバトロン星?というシリーズに通底する基本的な設定もその端緒から丁寧に描写されていて、まさにトランスフォーマーへの入門編のために作りましたとでも言わんばかり。「ご新規さん獲得して顧客をドンドン増やすぞ!」という気合いが感じられる。
それと同時に、オプティマスとメガトロンという作品の象徴とも言える二人の関係性を過去の時間軸から徹底的に掘り下げて描写することでTFシリーズの長年のコアなファン(もといオタク)にも満足な仕上がりになっている点もキーポイント。「これまで支えてくれたオタクも満足させてみせるぞ!」という気合いが感じられる。
そう、この作品、徹頭徹尾「やってやるぞ!」という気合いと情熱に溢れているのである。これってもはや愛ですよね。続編にも期待。
ストリーミングで観た作品など
◆きみの色(2回目)
◆機動戦士ガンダムSEED FREEDOM 特別版 第1弾(何回目かわからないくらい観てる)