アガサ・クリスティーの真実 著者:中村妙子
関連図書の5冊目で紹介した、訳者である中村妙子さんの本です。
こちらの方が5年早く出版されています。
クリスティーの自伝と作品を紐解きながら、考察を深めていくのは「鏡の中のクリスティー」と同じようなスタイルで、クリスティー愛に溢れる作品です。
私が好きな箇所は、
自伝の中からの引用で、
人間がどのように内面的に成長していくのかを、小さい子供を観察することで見出していくクリスティー。この観察力の高さが、数々の人間性を主眼にしたミステリ作品を生み出した原動力なのだ、と紹介する。
さらに、
と、アガサの結婚とそこから生み出されたメアリ・ウェストマコット名義の作品との関連を解説していて、クリスティーのミステリ作家だけではない一面を深く掘り下げている。
第2部では、クリスティーが『NかMか』で引用した
という言葉を残した、イーディス・キャヴェルの伝記(婦人之友に連載されたもの)が掲載されており、作者曰く、アガサの根底に、イーディス・キャヴェルと共通する真実への固執を感じているのです、とある。
伝記を読むと、イーディス・キャヴェルはとても真面目で少々気難しく堅苦しい人物である。
ユーモアがあり飛びぬけた空想力のあるアガサとは性格的には違う面もあるが、精神性の深いところで大事にしている信念、嘘は決してつかないというイーディスが、アガサの作品の「冤罪は許されないこと」「殺人は決して許されません」といった核の部分が共鳴しているように私には感じました。