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アガサ・クリスティー関連図書3

アガサ・クリスティーの秘密ノート(上)(下)

アガサ・クリスティー&ジョン・カラン
山本やよい・羽田詩津子訳

クリスティーの屋敷で、小部屋の奥にしまいこまれていた70冊以上のノート。そのページには、ミステリの女王の創作の秘密が……興奮に震えながらノートを調べると、さらなる驚きが待っていた。そこには、未発表の短編、それも名探偵ポアロが活躍するオリジナルの短編ミステリ2作が眠っていたのだ!さまざまな事情から陽の目を見なかった幻の作品をついに完全収録。世界を驚かせた話題作!

ハヤカワ文庫の裏表紙より

アガサ・クリスティーの孫であるマシュー・プリチャード氏の友人となった著者のジョン・カラン氏が書き上げた本書は、70冊以上ものノートすべてに目を通し、ばらばらになっている情報を作品ごとに解説していて、マニアにはたまらないクリスティー直筆のメモの写真なども掲載されている。

また、作品の裏話的なものがノートには書かれていて、

『ナイルに死す』はじつをいうと、マープルものになるはずだった…
『そして誰もいなくなった』は、初期の段階では登場人物が10人以上いた…

本文より

などなど…、クリスティーが一つの作品を書くにあたって、多くのものを生み出し取捨選択していった様子が伺える。

ジョン・カラン氏は、クリスティーの文章について

クリスティーの文章はけっして格調高い名文ではないが、よどみなく流れていて、登場人物はいかにも現実にいそうな感じで、一人一人の特徴がくっきりと描きだされ、どの作品も会話が多くを占めている。長ったらしい質疑応答の場面も、微に入り細を穿った科学的説明も、登場人物や場所についての冗漫な描写もない。しかし、このそれぞれがほどよく使われているおかげで、作中の場面も、主人公たちも、読者の心に鮮やかな印象を刻みつける。

と語るが、ここに書かれていることが、まさに私がクリスティー作品を愛読書として読み続けられたエッセンスなのだ。クリスティーのトリックや展開に、物足りなさを感じる人もいるだろうけれど、そここそが私の好きな作風なのだと改めて思う。


登場人物がいかにもいそうな感じ…というのはとても重要で、たまに男性のキャラクターが「女子っぽい」ように書かれてどうも違和感…という小説があるが、クリスティー作品はおじいちゃんはおじいちゃんだし、子供は子供、男女の書き分けもきちんと書かれており、日頃の観察力が物語の展開により都合よく歪むことなく描かれている。

クリスティーのノートは閲覧不可となっている(この本が出た時点では)ので、とても貴重な資料であり、本書を読むことでまたその作品を読みたくなり、更なる無限ループ、沼へと入り込むのだ。

というわけで?今またクリスティーの『スタイルズ荘の怪事件』を読んでいるtabitoでした😄📖


2010年4月 初版
クリスティー文庫101、102



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