見出し画像

発刊順:19 エッジウェア卿の死

発刊順:19(1933年) エッジウェア卿の死/福島正実訳

その夜のカーロッタ・アダムズの舞台は素晴らしかった。特に圧巻だったのは人気女優ジェーン・ウイルキンスンの物真似―ポアロもヘイスティングズもその演技にすっかり魅了された。ジェーン・ウイルキンスン、現エッジウェア男爵夫人。結婚で舞台生活を閉じながら、ゴシップには事欠かず、舞台に舞い戻った女―奇しくもその彼女がポアロに依頼をもちこんだ。夫と手を切りたいのだが、離婚をこばむ男爵を説得してほしいという。ポアロは純粋に心理学的興味から承諾した。だが数日後、当の男爵は何者かの手で惨殺されてしまった!

ハヤカワ・ミステリ文庫の裏表紙より


ポアロ曰く、この事件は彼の失敗作のひとつであるため、事件解決にポアロの名を出すことはしなかった。
後日、ヘイスティングズの手記により公表されるというスタイル。
 
なぜ失敗したのか。
ポアロほどの頭脳であっても、騙されるのだ。
前作の「邪悪の家」と似たようなある状況下において…。
 
ポアロが事件に関与している面前で第2、第3の犯行を重ねる犯人の度胸がすごいです。
ただ、前作でポアロが語るとおり、殺人を犯すのは「署名をするようなもの」なので、繰り返すごとに綻びが出てきて、ポアロの間違いが大きく修正されるのだ。
 
殺害の動機は利己的だけれども、この犯人ならば…と思わせる。
「真相」まで、犯人誰?って思ってた。
 
再読ですが、初めて読んだ気分です。

「人は決して他人から習い覚えるべきではない。各々の個人は、その個性をこそ限界点まで伸張させてしかるべきで、決して他人の真似をすべきではないのだよ。ぼくはきみが第二の、もしくは二流の“ポアロ”たることを望まない。きみが最良最上の“ヘイスティングズ”だ。きみの内部には、ほとんど完璧に近い正常(ノーマル)なる人間精神がある」

本文より

ポアロは、自分にはないヘイスティングズの「ノーマルな人間性」や、普通の人が感じる反応を頼りにしているんだよ~っと語る。
ヘイスティングズは、ちぇっ、ばかにして…とか思うけど。


HM1-61 昭和61年1月 第10刷版
2022年4月12日読了

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集