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土と石炭 『大地の五億年』より

地球の歴史46億年の間、最初の41億年には土が無かった。
最初の単細胞生物は38億年前に海の中で誕生したと考えられている。その後も生物は海の中で共生によってミトコンドリアや葉緑体などの細胞内器官を発達し、10億年前に多細胞生物が誕生した。

アオミドロの仲間(藻類)から5億年前に陸に上がったのは、コケ植物と地衣類である。地衣類はカビ(菌類)と藻類が共生した生き物だ。コケ植物も地衣類も岩との接触面で有機酸を放出して溶かし、生きるのに必要なリンやカルシウム、カリウムなどを獲得する。この影響で砂や粘土が形成され、地衣類やコケ植物の遺骸である有機物と混ざり合って土が誕生する。

このことが繰り返されさらに1億年かけて水辺に砂や粘土が堆積し、やがてシダ植物が誕生した。シダ植物は水と栄養分を運ぶ根と維管束を持ち重力に抵抗して成長できる最初の植物である。今から4億年前の地球は現在よりも温暖湿潤な環境にあり、また二酸化炭素濃度は10倍程度だったため、シダ植物はおおいに繁栄した。

シダ植物は湿地帯に繁茂しており枯死したものは水の中に沈み込む。水の中は酸素が少なく微生物による分解が進まず、やがて泥炭土が生成する。泥炭層は数万年から数億年かけて地中深くに埋まり、地下の高熱・高圧条件で変質を受けて、炭素の化石である石炭となった。

シダ植物の大森林の根は酸性物質を放出して岩石の風化も加速させた。岩石から放出されたカルシウムは、大気中の二酸化炭素と結合して炭酸カルシウムを生成した。こうしてシダの森は地上だけでなく地下でも大量の二酸化炭素を固定した。1億年かけて大量の二酸化炭素を吸収した結果、3億年前には7℃も地球が寒冷化した。一方、酸素濃度は現在の2倍近い35%まで上昇し昆虫の巨大化を引き起こした。

3億年前には種子を作る裸子植物も誕生した。裸子植物は「リグニン」と呼ばれる木質成分を発達させ、雨風や害虫への防御力が高めた。リグニンは微生物に分解されにくく泥炭となりやがて石炭となった。この頃の地質年代は石炭紀と呼ばれている。

3億年前の大地では、担子菌のキノコは少なくリグニン分解能力も無かった。今から2.5億年前、キノコの種数がどんどん増えはじめる。ごく一部のキノコは菌糸からペルオキシダーゼと呼ばれる酵素を放出し、このことでリグニンを分解する仕組みができた。キノコの進化は有機物の分解を促進し、倒木や落ち葉が分解されるようになって、石炭紀を終焉させた。

(写真は星野道夫さんの本より)


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