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【シンガポール歴史散策】東西の美が融合!プラナカン文化が根づくカトン地区を歩く
2023年2月に訪れたシンガポール。その中でもっとも印象に残ったのは、「カトン地区」と呼ばれるカラフルでフォトジェニックな建物が並ぶエリアです。
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シンガポール観光ガイドブックの表紙になるほど写真映えする街並みが広がるカトン地区ですが、マレー半島、中国、そして西洋の文化が混ざり合うプラナカン文化が根づく歴史的な街でもあるのです。
今回は、カトン地区の写真とともに、プラナカン文化についてご紹介します。
そもそもプラナカンって?
シンガポールやマレーシアには、「プラナカン」と呼ばれる人々が暮らしています。
プラナカンとは、マレー語で「この土地で生まれた子」という意味で、15世紀頃に中国からマレー半島へ渡ってきた中国人の子孫たちのことです。
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彼らは常に時代の流れを読み、ヨーロッパ諸国とも交流を重ね、ビジネスで成功をおさめ富を築き上げてきました。
現地のマレーやルーツである中国に加え、西洋の文化が融合したプラナカンは、他に類を見ない食文化、ファッション、工芸品、そして建築を数多く生み出しました。
実際に目で見て感じたプラナカンの芸術の特徴を私なりにまとめると、以下の3つとなります。
南国らしいビビッドカラーが多く用いられている
東西それぞれの美的センスが不思議と調和を保っている
女性的なデザインやモチーフが多い
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プラナカンの芸術作品は非常にカラフルですが、東アジアの陶磁器や着物、建造物などの色鮮やかさとは異なり、配色が明らかに「南国っぽい」のです。
専門家ではないので真実はわからないのですが、鮮やかなピンクやミントグリーンの組み合わせが南国っぽさの正体なのではないかと感じています。
プラナカンのお屋敷「ショップハウス」
カトン地区に立ち並ぶ色とりどりの建物。これらはプラナカンのお屋敷で、「ショップハウス」と呼ばれています。
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ショップハウスはもともと中国南部で見られた建築様式であり、入り口の横幅は狭めですが奥行きがあります。
正面玄関部分を店舗や事務所に、その奥や2階を住居として使用するようです。
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シンガポールのショップハウスはマレーシアにあるものに比べ変化を遂げているものが多く、インド的な装飾が施されていたり、アールデコの特徴を持っていたりとデザインが多岐に渡ります。
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マレーシアにも訪れて、違いを見比べてみるのもおもしろそうですよね。
和製マジョリカタイルが暗躍!
プラナカンのショップハウスは、数多くのタイルで装飾されています。
草花のデザインが美しいタイルの中には、日本製のものが多く含まれているとのこと。
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シンガポールでは元々、イギリスをはじめとするヨーロッパ諸国からマジョリカタイルを輸入し、建造物の装飾などに使用していました。
しかし第一次世界大戦後、ヨーロッパ諸国でのタイル生産は下火となってしまいました。
そこで、明治時代よりイギリスのマジョリカタイルを研究し、「和製マジョリカタイル」の作製に成功していた日本から、タイルを輸入するようになったのです。
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海外を旅していると、思いがけないところで日本との繋がりを発見することが多くあるように思います。
今回の旅行ではカトン地区の街並みを外から見学するに留まりましたが、次回シンガポールを訪れる機会を得た際には、ショップハウスの内装や、建物以外のプラナカンの文化にも触れてみたいです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
参考文献:『私のとっておき マレー半島 美しきプラナカンの世界(株式会社産業編集センター、2007)』