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旅の予定があるだけで、なんとか僕は生きていける
旅の思い出は、自分自身の人生を支えてくれる、大切な財産になっていく。
……以前どこかで、そんなことを書いた覚えがある。
ところが最近、こんなことも思うのだ。
旅の思い出だけでなく、新たな旅に出る予定があることもまた、ささやかな財産になるのかもしれない、と。
新たな旅に出る予定。それはもちろん、お金と引き換えに手に入れるものだ。航空券を購入したり、新幹線の切符を買ったりして、旅の予定が決まっていく。
僕にとって、そうして手に入れた旅の予定は、支払った金額よりも、もう少し価値のある財産に変わってくれる気がするのだ。
たとえば、沖縄へ行く3万円の航空券を購入する。その航空券の価値は、実質的には3万円でしかない。けれど、沖縄への旅の予定が手に入ることで、それを上回る財産に変わっていく。
なぜなら、旅の予定が未来にあるだけで、日常がほんの少し、幸せに包まれていくからだ。
仕事に追われている夜でも、来月は沖縄へ行けるんだと思うと、もうちょっと頑張ってみようという気持ちになれる。
なんにも面白いことがない日だって、だんだん近づいてくる旅を想像すれば、少しだけワクワクした気分になっていく。
たぶん、旅の思い出だけでなく、新たな旅の予定があることも、自分自身の人生を支えてくれる、大切な財産なのだ。
だから、と思う。
本当に心から好きなものを、たったひとつでも持っていること。長い人生を歩むうえで、それって大事なことなのかもしれない、と。
もちろん、旅じゃなくてもいい。読書でもいいし、映画でもいいし、スポーツでもいいし、アイドルでもいい。
心から好きなものをひとつ持っているだけで、きっと人は、なんとか生きていくことができる。
つらいことがあったとしても、好きなものに触れられる予定が未来にあるだけで、生きる力をもらえるのだ。
たとえば旅好きの僕だったら、よくこんなふうに考える。
3ヶ月後に海外へ旅に出る予定がある。だから、どんなにつらいことや悲しいことがあっても、その旅に出るまでは絶対に生き抜いてみせよう、と。
実際はその旅から帰ってきた後も生きないといけないわけだけど、そのときはまた新たな旅の予定を手に入れればいいだけなのだ。
大げさではなく、「旅」という心から好きなものを持てていなかったら、人生のどこかで挫折していたかもしれない、と思う。
いつも「旅」がそばにあったから、今日まで生きてくることができた。そう思うのだ。
……そんなに旅に散財しなくても、と言われることもある。
でも僕にとって、ただお金を持っているよりも、それを旅の予定に変えていく方が、ずっと幸せな気持ちに包まれる。そして、未来を生きる希望になってくれるのだ。
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いまも僕の前には、いくつかの旅の予定がある。
ふとしたとき、予約した航空券を眺めたり、ガイドブックを広げたりすると、これからの未来が楽しみになっていく。
どんなにつまらない1日でも、旅の予定を思うだけで、日常に旅の香りがほんのり漂って、旅へのカウントダウンを心に感じる。
旅に出ることと同じくらい、旅に出る予定が未来にあることが、僕の人生には大切なんだと思う。
きっと旅というものは、その旅に出る前から、きらきらと輝く光を僕に注いでくれているのだ。
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