21歳女 平日の昼から寄席に行く
一月の吉日。平日の真っ昼間。
私は池袋西口で池袋の演芸場が開くのを待っていた。
いつも池袋は東口周辺をたむろしているので、「別にこれは西口に浮気したわけじゃないから。」と自分に言い聞かせる
今日演芸場に来たのは特に理由はない。
強いて言えば、先日お世話になっている先生のお誘いで落語を一席聞かせていただく機会があり、久しぶりに寄席にでも行こうかと思ったくらい。
ちょうど「ひとり旅」の一環として、まだ行ったことのない近場のスポットを探していたら池袋の演芸場が出てきたので、まあ。テスト休みだし。
「学生一枚ください」
さも当然 という声色でチケット売り場のおばちゃんに声をかけたが、ここに来るのは初めてだ。
私は実は私は落語研究会にいたことがある
まあつまり辞めたわけで。
「大学生になったら落研(落語研究会)に入る!」と言っていたほど、お笑いオタク高校生だった私。
15にして既に一通りテレビでやっているネタは見尽くしていて、更なる刺激を求めて若手漁りをしていた。
Youtubeの閲覧履歴はAマッソ、パーパー、かが屋、ラランド、トンツカタン…当時はまだ地上波にあまり出ていなかった若手芸人のネタを片っ端から見ていた。
当時運営していたTwitterのお笑いアカウントには「#笑クラさんと繋がりたい」(お笑い好きさんと繋がりたい)のタグをつけたりしていて、今考えるとなんか恥ずい。
そんなコテコテのお笑いファンだったため、初めて落研の門を叩いた時には随分と歓迎された
しかし、最初に覚えさせられる一席をマスターした頃から「思ってたんと違う」と思い始めていた。
コロナ禍ということもあり、サークル活動もzoomのみ、合宿や新歓もなし。先輩たちとはほとんど対面で会ったことがない。
何度稽古しても上達しない自分の落語、会得できないおじさんの江戸言葉
お笑いを「見るのが好き」なのと「やるのが好き」は全然違う。
そもそも、先輩の思う「面白い」と私の好きな「オモロい」はズレていた
気づけばお笑いを見ること自体も辛くなって、
毎年楽しみにしていた賞レースも、若手芸人のYoutubeを見ることもしなくなっていた。
だから私は落研から、お笑いからは離れることにした。
「学生一枚ください」
チケット売り場のおばちゃんから受け取ったピンク色のチケットは風に飛ばされそうなほど小さい。古めかしいエレベーターに乗って、私は薄暗い地下の演芸場へと吸い込まれていく。
…前に来た新宿末廣亭とはかなり雰囲気が違うんだな。
演芸場の100席ほどある座席にお客がたった15人。
私以外はみんなおじさまおばさまばかり
強烈な「一限様お断り」ムードに、百戦錬磨のひとり旅人である私も一瞬たじろぐ
せめてミニスカートを履いてくるのはやめればよかったと後悔した。
一番最初の前座さん。
以前はわからなかったが、語りの荒さや緊張がわかるようになってしまった自分に驚いた。同時に、自分の落研時代がちらついて、やっぱり来たことを後悔した
そこからは古典に新作、漫才にジャグリング…
ゲラゲラ笑えるものもあればクスッと笑うものもあるし、(多分人生の経験値的に)てんでわからない噺もある
2時間も3時間も噺を聞いていれば緊張も後悔も忘れるわけで、すっかりお笑いに夢中だった高校生の頃の気分に戻って楽しんでいた。
5時に演芸場を出るときには、よく勉強した日のような心地よい疲れを感じて、狭いエレベーターの中でひとり、のびをする。
あーあ、よく笑った。
たまにはお笑いもいいかもしれないね
もう自分でやることはないけど、また今年は賞レース予想とかしてみようか。
こうして私はまたただのお笑いオタクへと戻ったのである。
P.S.ジャグリングってすべり芸なんですかね
私コミケ帰りとか必ず見るんですけど、ジャグリングの方の喋りってほとんど自虐ネタのような気がする
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