TABETEクラブvol.3 食への感謝を学ぶ
「いただきます」 「ごちそうさま」の気持ち
TABETE クラブ第3回は、日本に伝わる「食への感謝」を感じる会。参加メンバー全員で神田明神を訪れました。
前半の時間では、神田明神権禰宜である岸川雅範さんのお話を伺いました。わたしたちが日頃から口にしている「いただきます」「ごちそうさま」。日本の文化、特に神道のことを学びながら、この言葉の意味を改めて考えました。
後半は、レストラン益々(ますます)に移動して、神道における食事作法を体験。食前・食後に感謝の歌を歌う儀式を実践しました。
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日本の文化は絶えず進化している
まずは、岸川さんに「日本の神」について基礎的な事項を教わりました。「八百万」(やおよろず)という言い方があるように、日本には数え切れないほど多くの神々がいます。
その中にも神の種類があり、たとえば「町を守る神様」である氏神、実在した人物を祀る人神などが挙げられます。
神々の食事「神饌」(しんせん)
続いては、「食」にまつわるお話。日本の祭り・神事を行うときは、神々に神饌を供え、神と共に人が食事をします。(神人共食事)
神饌を用意するときには、神様が食べやすいように、お水やお箸も添えるそうです。(お供えする内容やルールは、『神社祭式』(1875)という本に従うのが一般的です。)
そして、神に供えた食べ物を「お下がり」として私たちが頂くところまでが“お供え”の一連の流れです。
神道における食事作法を体験
神職の研修の際には、食事の前後に食前感謝・食後感謝の儀式を行うんだそうです。その食事作法を、みんなで体験しました。
具体的には、食前と食後に
姿勢を正す → 一拝一拍手をする → 伊勢の神宮の神への感謝の歌を歌う
→ 頂きます/ 御馳走さま
という所作を行います。また、食べている間は無言のまま食事を終えます。
感謝の歌とは?
本居宣長による和歌のうち、食への感謝を詠ったものを儀式に使っているそうです。(『玉鉾百首』(たまぼこひゃくしゅ)/ 1786年)
◎食前感謝の歌◎
「たなつもの ももの木草を 天照らす 日の大神の恵み得てこそ」
意味
稲草はじめ野山の木草すらもみな天照大御神(あまてらすおおみかみ)の御恵みにより成長するのである。
◎食後感謝の歌◎
「朝夕に もの食ふごとに 豊受の 神の恵みを 思へ世の人」
意味
朝夕に食事をするたびに食を司る豊受大御神(とようけのおおみかみ)の恵みにより人は生かされているのである。
天照大御神が豊受大御神を傍近くに手厚く祀らせたのは、大御神の御食神(みけつのかみ:食物を司る神。)だからである。それほど、食は大事である。
※和歌の表記や意味の記載は、TABETE クラブ当日資料による
今回は、詩吟のようにしてリズムをつけて歌う練習もしました。
会の後半では、レストランに移動して、実際にうたいます!
特製レスキューメニュー! デザートプレート
料理長の計らいで、特製のレスキューメニューを頂くことができました。
いただきます!とする前に、食前感謝の儀式を行います。
姿勢を正す → 一拝一拍手をする → 伊勢の神宮の神への感謝の歌を歌う
→ 頂きます
そのあと、皆ひとことも喋らずにすべての品を完食。続いて、同様に食後感謝の儀式も行いました。
ちなみに、デザートプレートの内容は溶けたアイスを活かした品や、ケーキの端っこを美しく盛ったものなど。どれも抹茶の風味がほろ苦く、美味しいスイーツでした。一番左にあるのは塩昆布。とても上品な口直しの一品でした。
エビベジの規格外野菜に食のありがたみを感じる
レストラン益々(ますます)のスペースをお借りして、エビベジの規格外野菜についてお話しする時間も設けました。(参考:TABETE クラブvol.2 エビベジと規格外野菜のnote)
参加された皆さんは見事な野菜に驚き、それらが廃棄される運命にあることを知って更に驚いていらっしゃる様子でした。
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神との向き合い方も、食文化も、革新こそが伝統をつくる
岸川さんによれば、神事のルールは戦後に作られたものが多いんだそうです。お祈りや祭典にまつわる決まりごとは、古くから変わらずに伝承されているイメージがありますが、時代と共にアップデートされているんですね。
岸川さんは「その時代における革新こそが、伝統をつくる。なぜなら、進化せずに平凡なことを続けていては、次第に見捨てられ淘汰されてしまうから。」ともおっしゃっていました。
食文化やその他の生活スタイルに関しても、同じことが言えるのではないでしょうか。
食卓の風景や料理の仕方は、時代と共にどんどん変わっていきます。今の時代を生きる私たち一人一人が、自発的に「この時代において幸せな生き方・食べ方」を探求することが、食の伝統をつくる第一歩なのかもしれません。
TABETEがもたらす新しい食の選択肢も、食文化や食の伝統をつくる1ピースになっていくと、私たちは考えています。これからもみなさんと一緒に、新しい「食」のあり方を探求していけたら素敵だなぁと思います。
取材・編集 山田晴香
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