ワーファリン服用が身体に及ぼす影響
ワーファリンとは抗血栓薬の一つです。
ワーファリンというと医師や薬剤師が体内における生理作用について述べている記事や動画がありますが、ここでは管理栄養士から見たワーファリンについて記します。
抗血栓薬は,大きく分けると、抗血小板薬、抗凝固薬、血栓溶解薬に分けられます。
冠動脈血栓症などの動脈系の血栓症の発症予防には抗血小板薬(アスピリン,シロスタゾール等)が推奨され,心房細動時の左房内血栓,深部静脈血栓などの血流うっ滞部位の血栓予防には抗凝固薬(ワルファリン等)が推奨されています。
ワーファリンはこの中の抗凝固薬に該当します。
ワーファリンを服用するときは、ビタミンKを控えるように指示されます。
ビタミンKは血液凝固作用があることから、抗血栓薬の作用を弱めてしまうからです。
ビタミンKの制限がないことは身体にとって大きなメリットです。
この記事では、抗血栓症のお世話にならない為の対策についても述べていますので、是非、最後まで記事をお読みいただければと思います。
ビタミンKの働き
このビタミンKの制限が管理栄養士から見ると、かなりのデメリットになります。
そもそもビタミンKの働きには何があるのかと言いますと…
・血液凝固促進
・骨形成
・動脈の石灰化の抑制
これらが挙げられます。
たったこれだけしか効能がないし、ダイエット効果もないの?と思われますが、ビタミンKは骨形成を促進する骨芽細胞を形成させることに関わる上に、骨にコラーゲンを沈着させる働きがあります。
また、血液中のカルシウム濃度が下がると、骨吸収によって骨からカルシウムを溶け出します。
しかし、これによって血中カルシウム濃度が過剰になるとカルシウムパラドックスという現象を起こしてしまいます。
そうなるとカルシウムが血管や骨、臓器等に沈着し、動脈硬化や神経障害、臓器不全等の症状を引き起こしてしまいます。
おまけに、このカルシウムパラドックスの原因であるカルシウムは悪玉カルシウムと言われるものです。
それは人工的に不自然に作られたカルシウムであり、カルシウムが添加されている加工食品に使用されています。
血液凝固とビタミンK
血液凝固抑制剤の働きを抑制してしまうビタミンKには、確かに血液凝固作用があることが知られています。
これを聞くとビタミンKは血液をドロドロにしてしまうのではないかと思いますが、ビタミンKによる血液凝固作用とは、怪我によって出血を起こしたり、鼻血が出た場合、止血を早める作用です。
ビタミンKの血液凝固作用とは次のような流れで体内で行われます。
出血すると、血漿の中のフィブリノーゲンがフィブリンに変化することによって血液が凝固します。
この時、血液凝固因子であるトロンビンという酵素が働きかけます。
このトロンビンの前駆体がプロトロンビンであり、プロトロンビンは肝臓で生成され、このプロトロンビンの生成にビタミンKが必要となります。
血液凝固にビタミンKは間接的に携わります。
だからと言って、ビタミンKを摂ると血液中の中性脂肪やコレステロールが増えて血液がドロドロにするということはないのです。
ビタミンKが豊富な食品は栄養価が高いものばかり
ビタミンKを豊富に含む食品は納豆、緑色の野菜、海藻があります。
これらに共通するのが栄養価が高い事です。
納豆と言えば原料は蛋白質が豊富な大豆。その上アミノ酸スコアにも優れています。
食物繊維も含まれ、発酵食品であることから立派なシンバイオティクスです。
ビタミンB群も豊富であり、癌予防効果にも期待があります。
他にも期待出来る効能がありますが、これ以上話すと長くなります。
緑色の野菜も栄養価が高く、野菜の中でもビタミンCを豊富に含むものが数多くあります。
当然ビタミンAも含まれ、美肌作りをサポートしています。
他にもカルシウムや鉄分、クロロフィル、ルテイン、ゼアキサンチン等も含まれ、僅かながらオメガ3脂肪酸も含まれています。
海藻類も栄養価に優れ、ミネラルが豊富で、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンCが豊富なうえに水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の摂取源となります。
また、現代人が不足しがちなマグネシウムの補給源となっています。
髪の栄養や癌予防にも役立ちます。
しかし、ワーファリンの服用を指示されると、これらの食品を制限しなければなりません。
特に納豆に含まれるビタミンK2は体内に摂り入れられると増殖することから、ワーファリンが処方されれば全面的に禁止となります。
ビタミンKを含む食品が制限されてしまうと…
ビタミンKを豊富に含む食品の栄養について述べましたが、ビタミンK以外にも栄養素が豊富に含まれ、その含有量も多く含まれます。
これらの食品を制限されてしまうということは、これらの食品に含まれる栄養素を食品から充足することが困難となります。
数値的にはサプリメントで補充すれば良いのかもしれませんが、やはり自然な食品には敵わないもの。
ビタミンKの制限がなければ…
・腸内環境が整う(腸内環境改善によって得られるメリットは数多い)
・美肌、美髪効果に期待がある
・骨を丈夫にする
・貧血予防
・目の健康を維持
・癌予防
挙げるとキリがありません。
制限されてしまうということは、このような健康効果も十分に得られなくなり、腸内環境を整えにくくなったり、肌荒れを起こしやすくなったりします。
血栓症の原因
血栓症を起こしてしまうと、これが原因となって脳梗塞、心筋梗塞、肺塞栓症を発症すると言われます。
肺塞栓症とはエコノミー症候群というと分かりやすいでしょう。
例えば…
・日常的に同じ姿勢を続けていることが多い
・暴飲暴食
・免疫力低下
これらは血栓症を引き起こすリスクを高めるからです。
同じ姿勢を続ければ血流が悪くなり、これによって浮腫みが生じます。
浮腫みが起因して血栓が出来たり、胸の苦しみや息苦しさ、激しい頭痛を伴う場合もあります。その一方で自覚症状が見られないこともあります。
血栓症を起こしてしまうと、血管の流れを妨げられるので循環器疾患に至ったり、身体の末端や臓器が壊死してしまうのです。
これに追い打ちをかけるのが暴飲暴食です。
循環器系のトラブルは塩分ばかりとは限りません。
身体に悪い油や精製糖質の摂り過ぎによっても引き起こされます。
おまけに偏食していると、食物繊維や抗酸化成分、抗酸化ビタミンも摂れなくなります。
血液がドロドロになる上に抗酸化作用のある栄養成分が摂れないと血液が酸
化されやすくなり、これが原因で血管に血栓が出来やすくなります。
身体に悪い食品、栄養の偏りは当然ながら身体に必要な栄養が摂れません。
栄養不足、腸内環境を荒らしやすい食品の摂取による腸内環境悪化は免疫力を低下させてしまいます、
ビタミンA、ビタミンB2、ビタミンCが不足すれば粘膜生成に必要な栄養も摂れない為、感染症にも罹りやすくなります。
その他にも偏食は亜鉛不足にも繋がり、ウィルスによる抵抗性も弱まります。
血栓症は感染した時にも発症する場合があります。
ビタミンKの制限を防いで腸内環境悪化や老化を予防するには?
結論を言えば血栓症を予防することです。
・同じ姿勢を続けている環境に置かれている場合はストレッチをしたり、時々歩く程度でよいので身体を動かす
・栄養バランスを摂り、質の良い油を摂る
・食物繊維、発酵食品を摂って腸内環境を整える
・抗酸化作用のある食品(栄養)を摂る
ワーファリンが処方されないうちはビタミンKの制限がありません。
ビタミンKを豊富に含む食品である納豆、緑色の野菜、海藻類は栄養価が高く、寧ろ血栓症の予防に役立ちます。
腸内環境を整える、血液をサラサラにする、抗酸化成分が摂れる…
血栓症を予防するだけでなく、健康維持や疾病予防にも繋がります。
まとめ
管理栄養士から見たワーファリンについて見ていきました。
薬の生理作用、副作用についてはこちらの範疇ではないので割愛させていただきましたが、栄養管理という観点からすると、ビタミンKの制限はダメージがあるものです。
身体は健康であってなんぼ、そのためには自分の身体を守って予防に徹して健康な身体と末永く付き合っていけることが何よりです。