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水やり瞑想し鬱鬱勃勃も

お元気ですか?
わたしはこのお決まりの挨拶を使わなくなって長い。手紙の書き出しフレーズとしても、20代は考えなしに使っていた。寝不足であろうが徹夜をしようが元気があった。公園でフリスビーをすれば、犬のように飛びついてキャッチしていた。けれど、「お元気ですか?」とわたしに投げられた時に「はい、元気です!」とはいつしか即答できなくなり、人に対しても使わなくなっている。

4時半に目覚め午前5時。京都の六曜社珈琲店で買ってきた100g/550円の少しお得な価格のオリジナルブレンド(中・深煎り混合ブレンド)を、ミル代りに使っている小型電動ミキサーでガーッと中細挽きにする。黒光る深煎り豆を好む〝苦コク派〟なのだが、六曜社珈琲店のブレンドは薄茶色の豆が混じっているのに酸味も出ず薄くなくて、深煎り好きをも満足させてくれる味わいがある。
100均ペーパーフィルターの2辺を折りドリッパーにセット、挽いた粉を入れドリッパーを揺すって粉の表面を平らにする。カップにはお湯を注ぎ温めておく。手鍋で沸騰させた軟水をステンレスのドリップポットに移す。コーヒーの粉が湿る程度にドリップポットからお湯を注ぎ20~30秒待って蒸らす。その後、お湯を細くゆっくり注ぐ。むくむくと粉がふくらみ盛り上がってくる様子を注視する。こんもりと茶色い山ができる。コーヒー山と自分だけの時間、無になる。
粉を購入すると、挽いたばかりのものであっても一週間過ぎると山ができなくなってしまう。粉の状態は鮮度が落ちていく速度が早く、コーヒー豆の中の炭酸ガスが抜けてしまうために、ふくらみにくくなるらしい。コーヒー山を見れない感覚は、富士見台に行って天候不良で富士山が見えなかったときの不発に近い。それを避けたいので豆は自宅で挽く。お湯がコーヒーサーバーに落ちたら、またお湯を注ぐ。手間入りなコーヒーを淹れる動作は全く苦にならない。比べたらトイレに行ってパンツを下ろす方が、だるい時がある。

コーヒーは砂糖なしで。子どもが幼かった頃についた立ち飲み習慣が抜けず、たいていは立ち飲み。すでに日焼けしている顔と腕に、一応日焼け止めクリームを塗って植物の水やり作業に入る。
カーテンレールにぶら下げている2つの板付ビカクシダをベランダへ移動させる。室内出窓に並べている15cm前後の小さなホヤ(サクララン)鉢もベランダへ出す。スプレーボトルで霧吹きを行う。次々にシューシューと、ベランダで育てているクワズイモ、クチナシにも霧を吹く。土が乾いていればジョウロで水やり。30個ほどの植物への水やりの時間は何も考えていない。植物の調子は目視しているはずだけれど、何も見ていないようなうっすら緑色の景色の中、無に近くなっている。水やりは瞑想なんじゃないか。
2年前にもらった一つめの鉢を枯らさなかったことに気を良くして植物を増やし、12個あたりで瞑想の感覚に気付いた。庭付き一軒家+事務所で100以上の植物を育てている先輩に、「水やりって無になるから、ほぼ瞑想ですよね?」と確認すると、「YES」の返事が返ってきた。子どものころ、朝や夕方にホースで庭の植物に放水している無表情のおじさんをご苦労様と思っていたが。園芸家は水やり瞑想で整っていただけなのだ。
植物を1個2個だけ育てていたこともある。労力としては少ないはずなのに水やりを忘れたり億劫になったりで、毎度枯らせてしまっていた。水やり瞑想に入れるようになってからは、30以上の植物の世話は負担にならない。もちろん植物は健康だ。

朝の家事を始めんとすると途端に体が重い。さっきまで忘れていた疲れの感覚が簡単に戻ってくる。疲れていない体がほしい。疲れない体がほしい。ほしがる自分を星野哲朗に重ねる。銀河鉄道999の星野哲朗は「機械の体がほしい!」と長い旅をして、〝限りある命こそが人間の人生の素晴らしさ〟という答えにたどり着く。ずっと元気でいられない方が人生には味があるのだろうか?
昨日食パンを買っておいたから今朝はサンドウィッチで。具材も冷蔵庫にちょうど揃えてある。アボガド、ハム、ケール、ゆで卵、紫たまねぎ、ビーツ、などを重ね断面をきれいに出そうと夢中になれる。ささっと準備するときこそ、やる気レスな体を無理やりに動かしているからぐったりくる。ドーパミンが出る時、わたしは疲れを忘れている。だから、ささっと済ませていかねばならない家事中心の母業が18年間不向きでしかない。

「ばばかよさんのnoteを読んで、自分が感じている事は変ではないんだ、誰かのものとしなくて良い、という強い励ましをいただけました。私は今、公務員で、いつも気を張って、心から笑ったりできません。けれど、ふと若い時、ばばかよさんの漫画や言葉を励みにしていたな、と思い出して、noteを見つけ、読んで見たら、不思議と元気になりました。(中略)これからも応援しております!」
9月7日、ほとんど通知のないインスタの一般(フォローしていない人からの)メッセージを半眼で開いてみると、この本文! スマホ画面から閃光。いきなり心にぶわっと勢いよくエネルギーが流れ込む。聞かれる前からはっきりと答えられる、「はい、今、元気です!!」。

1年7ヶ月ぶりにnoteを書いてしまった。Cさん、こちらこそありがとうございます。

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