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ブラームスを読む

自分にとって、秋はブラームスの季節。(この記事を書こうと思っていたらあっという間に年末になってしましましたが。)

灰色の空に紅葉した葉、、、少し暗く落ち着いたカラーの季節です。

学生時代の11月にウィーンを訪れてたことがあるのでその印象が強いのかも知れません。実際、楽友教会でドイツ・レクイエムを聴きましたし、ピアノのレッスン曲もブラームスのOp.118でした。


ブラームス作品の印象

初めてブラームスを聴く人は、暗いとか渋いといった印象を持つことが多いです。明快でわかりやすい曲があまり無いしトーンにあまり変化がない曲も多いので、CDを一回聴くだけで理解・納得できる作曲家とは言えないでしょう。

何回も聴いたり、ブラームスの本や楽譜をじっくり読むことで作品の良さがようやくわかってきます。その深みこそブラームスの音楽の楽しさ、面白さです。

また彼の人生はとても興味深く、特に様々な人との出会いがあります。ヴァイオリニストのヨアヒムや、シューマン夫妻との関係は作品に直結するものですから、ブラームス作品を演奏する際はぜひ勉強していただきたいです。


ベートーヴェンとブラームス

ブラームスを語る上でベートーヴェンの存在はとても重要です。

ブラームスの第一交響曲はベートーヴェンの第九交響曲を強く意識して作られているし、他作品においても同じモチーフの反復やアクセントの使い方など楽譜の書法もとても似ていて、ブラームスがベートーヴェンを学んで作曲していたということがよくわかります。

ということは、ブラームスを演奏したり勉強するためにはベートーヴェンを勉強しなけらばならないということになるし、それが近道です。

※ブラームスやブルックナーらは新古典派などとも言われていますが、これは彼らが古典的な考え方を大切に作曲しただけであって、時代的な流行ではありません。私個人としては、この時代区分のような表現は間違っていると考えています。


ブラームスを読む

今回はブラームスの交響曲第二番から第四楽章の第一主題中間辺りを取り上げます。まずはこの楽譜をご覧ください。

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これは32小節からの1st.ヴァイオリンのパート譜です。sf(スフォルツァンド)とff(フォルティシモ)以外に指示は特に書かれていません。音楽的にただ読もうとすると次のようになると思います。

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レガートの掛け方は色々と考えられますが、基本は上行と下行でフレーズを考えるとこのようになります。しかしこれではブラームスではなくなってしまいます。

そしてベートーヴェンを学んだ後にこの楽譜を見ると、次のように見えてきます。

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6小節にわたるsfは1小節単位のリズムモチーフで繰り返されます。これがとても特徴的で、まるでベートーヴェンのようです(譜例※)。sfは重ねるごとに音量も必要になります。

付点四分音符と八分音符の形はスラーで繋ぎたくなりますが、ブラームスは書いていません。ということは八分音符もはっきりとマルカートで演奏するべきではないでしょうか。弓も一音ずつ返せば次のsfも演奏しやすいですね。私はここに載せている部分の楽譜は全て弓を返して演奏するべきだと考えます。ブラームスはそれを狙って書いたのかも知れません。

38小節にffがありますが、音楽的にこれは通過点であり、目的地は44小節です。この楽譜では見れませんが、38小節の和音はⅠの第一展開形で若干不安定さが残り、ドミナントを経て44小節で基本形に解決します。

38小節2拍目からのアクセントを書いたのは、40,41小節のしつこい同形を見ればブラームスが聞かせたいのは明らかだからです。直前の37小節2拍目からモチーフが先行しているのも興味深いですね。

42小節でドミナントの緊張が最大になり、44小節へ導かれます。総じて32小節から44小節までは適度なクレシェンドが必要です。


(※譜例:ベートーヴェン交響曲第5番 第1楽章 34小節~ 1st.ヴァイオリン)

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この譜例でもcresc.は44小節まで続けるのが一般的な考え方です。


まとめ

いかがだったでしょうか。ブラームスの楽譜はベートーヴェンと似ていていることがよくわかったと思います。音楽の歴史は古くから続いていますので、様々な作曲家がリンクしていることは言うまでもありません。

一曲をたださらって演奏するだけではなく、ぜひ周囲の作品や作曲家に触れて音楽に深みを持たせてください。


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田畑 仁愛(指揮者、ピアニスト)
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