歌と、生姜の甘酢漬け

ルパン三世と、ひょっこりひょうたん島が見たい。

九州のおばあちゃんから荷物が届いた。到着予定日は終日外出していて、その2日後にようやく受け取れた段ボールにはここぞとばかりに食料がたくさん詰め込まれていた。封を開けた途端、お醤油とちょっとだけいやな感じの臭いがキッチンに漂う。
荷物をすぐに受け取れないことを謝ると、「煮物だからね、悪くなってなければ?いいけど!」とLINEで心配していたおじいちゃん。文中に挟まれる疑問符ごと愛おしい。平気よ、丈夫な身体と健康だけが取り柄なんだから。ちょっとくらい日が経っていたって愛でくるんで食べちゃうんだから。

2Lペットボトル用の縦長の段ボール、その中身はというと、上から順に、魚のみそ漬け、たけのこの煮物、わらびの煮物、ステーキ肉、スキヤキ肉、お魚と大根とにんじんの煮物、そして佐賀県産のお米5kgが底に敷かれていた。臭いの元は大根のピクルスだった。おばあちゃんが炊いた、生姜の甘酢漬けをこないだ実家で食べてすっかり気に入ってしまって、私の家にも送ってほしいだなんて甘えたら、こんなにあれこれ詰め合わせにしてくれたという次第。もちろん生姜もたっぷりジップロックに入っていた。ちょっと泣きそうになった。

さすがに1人ではとても食べきれず、あっという間に1週間が経ってしまった。でも鼻を近づけてもおいしそうな臭いしかしないので、毎晩いろんな煮物たちを少しずつ食べている。元からちょこっと個性的な臭いを放っていたピクルスは、ピクルスだしな!と自分に言い聞かせていたのだが、やはりちょこっといやな感じが消えないどころか勢力を増してしまったので、目をつむりながらゴミ箱へ入れてしまった。罪悪感で心がぎゅっとなった。おばあちゃんの顔が浮かんだ。

日本は、コンビニ飯をはじめ、いつでもどこでも手軽にごはんを手に入れることができる。それが当たり前の世の中。「食べる」ことの手軽さゆえに、食べ物を捨てることにもだんだん慣れてしまっているように思う。おそろしいことだね。おばあちゃんの顔が浮かんでピクルスを捨てるのをためらった私のように、きっと、その料理を作った誰かを思い浮かべることができれば、食べ物を捨てるだなんてもったいないこと、できるはずがないでしょう?

今日も茶色い食卓に手を合わせて、私は箸を運ぶ。頭の片隅で、お気楽なドン・ガバチョが未来を信じて歌ってる。

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