OKRとは何か?多面的にOKRを理解できるオススメ本5冊
こんにちは、株式会社タバネルの奥田です。
拙著『本気でゴールを達成した人とチームのためのOKR』も含め、多くのOKR解説書が世に出ています。OKRに関する知見、ノウハウ、実例がつまっており、OKRを学ぶ上では事欠かないでしょう。
一方で、自戒の念をこめて書きますが、OKRはあくまでツールです。OKRを使う組織、チーム、人には、使う目的があり、解決したい課題、実行したい戦略などがあります。それぞれの目的を果たせてこそ、OKRは意味があります。
そこで、主テーマはOKR以外の目的について書かれた本の中で、OKRはどのように解説されているか、をご紹介していきます。
HIGH OUTPUT MANAGEMENT
インテル元CEOのアンディ・グローブが書いたマネジメントを実務に結びつけながら学べる名著。1984年に出版された本書がいまだに読み継がれていることがその証左です。なお、著者アンディ・グローブは、OKRの原型を開発した言われており、本書でも言及されています。
マネージャーがいかにアウトプットを高めるかについて、実務と紐づけながら解説されています。
本書のタイトルにもある「アウトプット」について、このように書かれています。
真に有効なインディケーターは、作業単位の〝アウトプット〟を測定するものであって、それに含まれる〝 活動〟だけを見るものではない。
セールスパーソンの場合には、取ってくる注文(アウトプット)で測定する のであり、何回訪問したか(活動)の回数で調べるのではない
そして、アウトプットを高める上で、マネージャーは「テコ作用(レバレッジ)」に着目すべきだと続く。
マネージャーのアウトプットは、マネージャー自身のアクティビティではありません。さらに、マネジャー個人のアウトプットでもありません。
マネジャーのアウトプット=
自分の組織のアウトプット+自分の影響力が及ぶ隣接諸組織のアウトプット
マネージャーの仕事は多岐にわたり、必要なアクティビティはたくさんあるように思われますが、必ずしもアウトプットを高めるものばかりではありません。単位時間当たりのアウトプットを高める、つまり「テコ作用」を効かせるには以下の3つの方法があります。
①マネジャーが自らの活動を遂行する速度を速めて、仕事をスピードアップ する。
②いろいろな経営管理活動に関連のあるテコ作用を増加する。
③マネジャーの活動のミックスを、テコ作用の低いミックスから、より高いミックスに換える。
そして、アウトプットを高めるために、ミーティング、プランニング、組織づくり、人材育成や報酬にいたるまで、本書では解説が続きます。
なかでも私の中で腹落ちした意思決定プロセスに関する図を転載します。
さて、OKRについては、『目標による管理ー日常業務にプランニング・プロセスを適用すると』で触れられています。(本書では同社で進化した目標管理としてOKRではなくMBOシステムと表現されています。)
MBOをシステムの成功のために答えるべき下記の質問が、まさにOKRの定義となっている。
1.わたしはどこへ行きたいか?(その答えが 目標〟になる)
2.そこへ到達するためには自分のペースをどう決めるか?
(その答えがマイルストーン、すなわち〝 主要成果〟になる)
目標管理で大切なポイントとして、1-3か月スパンでのフィードバック、焦点を絞ること、組織内でのアラインメントに言及されています。
同時にOKRでは達成率を直接評価に反映してはいけないと言われますが、本書ではこのように説明されています。
もし監督者が機械的にMBOシステムに依存して部下の業績を評価したり、 あるいは、部下が杓子定規にMBOを使用し、指定された目標あるいはキー・リザルトでないからといって、めぐってきた機会を利用しないとすれ ば、両者ともまったくつまらない、プロらしからぬやり方をしているといえよう。
アウトプットをあげることがマネジメントの目的ですから、当初設定した目標に囚われてチャンスを逃してはいけないですね。
1980年代にインテルでは、MBOがすでにOKRに姿を変えて運用されていたことに驚きを感じるとともに、その後の成長にも納得できます。
エンゲージメントカンパニー
本書はエンゲージメントについて、実際に教室でほかの生徒ともに学び考える形式で書かれた本です。問いかけ、たとえ話なども豊富なので、知識ではなく実践的な示唆を得ることができます。
まず本書ではエンゲージメントを以下のように定義しています。
従業員が会社の掲げるビジョンに共感し、従業員自らが意欲的に仕事に取組み、仲間や会社に深い思いれを持つことです。もっと言うならば、個人と組織が一体となって双方の成長に貢献しあう関係づくりです。
この定義にあるようにビジョンが起点となるため、リーダーは従業員にチーム全体で共有するビジョンを伝える必要があります。
またエンゲージメントは、「(ビジョンへの)理解度」、「(会社、仲間への)共感度」、「(達成、成功に向けた)行動意欲」の3つの要素が必要です。
そして、エンゲージメントの高い従業員は会社を愛し、成果を上げることになります。その原動力には、お金よりも賞賛や感謝の方がエネルギーとなります。
そして、OKRについては「未来から夢を引き寄せろー新しい時代の目標と働き方」で言及されています。
高い目標、ストレッチ目標を設定することで、従業員の持っている能力を最大限引き出すことができ、また達成できなくても格段の進歩が遂げられることが少なくないと解説されています。
そして、ストレッチ目標であるOKRを評価につなげてはいけないことについてこのように書かれています。
評価につなげた瞬間に目標値は確実に下がっていくのです。
だって、目標を立てる理由は評価のためではないでしょう。目標はチャレンジです。そのことによって従業員の才能は開花させることができるんです。
これは、目標管理でもありプロセス管理でもあるため、部下へのコミュニケーション、フィードバックを年数回では全く足りないと言っています。
あと、個人的に気に入っているこのエピソードは、Objectivesの大切さを分かりやすく教えてくれます。
サンタクロースのミッションは荷物を運ぶことではない。子供に笑顔を与えることなのだ。
ミッションがなく荷物の配架目標だけ与えられたサンタクロースは荷物を投げて配ってしまいかねません。
エンゲージメントを高める上でも、OKRを機能させるためにも、ミッション、ビジョンへの共感は大切ですね。
ユーザー中心組織論
プロダクトやサービス開発などモノづくりに関わるメンバーの視点を、ユーザ中心な価値観にそろえていくための方法が書かれた本です。
ユーザーのニーズが多様化する現代において、組織は共通のユーザー視点を持つことで、ユーザーに新しい価値を届けることができます。
本書はとても分かりやすい図説が多く、まさにユーザー視点に立って書かれていることが分かります。(下図は本書より転載)
ユーザー中心と言っても、ユーザーの声を鵜呑みにするのではなく、潜在ニーズ、ユーザーインサイトを把握して、機能的価値ではなく意味的価値を見つけ出さなければいけません。
役割中心組織でそれぞれの役割の視点がバラバラになりがちです。モノづくりの最終目的はユーザーに価値を届けることですから、組織の視点をまとめる中心はユーザーになります。
ユーザー中心組織において、共創するためには5つの要素があります。
【ビジョン】
何をなしとげたいかの理念・目的地
【ビジネス】
収益を上げて成長を維持するためのしくみ
【チーム】
目的を同じくしたチームでモノをつくる
【サイクル】
組織とモノづくりをサイクルで成長させる
【カルチャー】
組織の土台をつくる
OKRについては、【チーム】のパートで言及されています。
では、チームにパートについてご紹介しましょう。
まず、決められた業務を役割ごとに分業する「役割別チーム」と、特定の目的のためにさまざまなエキスパートを集めた「目的別チーム」には違いがあります。
ニーズが限定的でつくるべきモノが明確であれば役割別チームが理にかなっている。しかし、正解の見えにくい時代に共創を生み出すためには目的をそろえることが重要です。
目的別チームではさまざまなエキスパートたちが目的のもとで自身の役割にとらわれず自律的に行動します。
目的を達成するためには目標が必要になりますが、トップダウンで外発的動機に基づくとうまくいきません。自分の職務の範囲内で成果をあげようとし、共創が生まれません。
外からの強制や利益誘導ではなく、「自分はこうなりたい」「こんなユーザーを救いたい」など、心から自然と沸き起こる内発的動機によって人はモチベーション高く自律的に活動できます。
目的を達成するモチベーション高く、ワクワクする目標こそが大切であり、OKRとなります。
さまざまな背景を持つメンバーが同じ視点を持って自律的に行動するためには、OKR(Objectives and Key Results)という手法が有効です。
OKRは組織とチームの視点をそろえる手法です。
OKRは多くの場合、まず、ビジョンを成し遂げるために「組織は何を目指すのか?」といった達成目標を掲げます(組織のOKR)。ビジョンとの大きな違いは、この数か月単位の期間に限定された現実的な目標を立てる点です。
そして、締めくくりとして、OKRをこのように定義しています。
OKRは、組織で一貫したユーザー視点を持ちつつ、チーム単位ではユーザーを観察しながら柔軟に行動を変えて、一貫性のある視点を持ったまま自律性高く意思決定するしくみです。
本書ではOKR以外にも様々なデザイン思考やリーンスタートアップなど様々なフレームワークが紹介されています。ただ、そのまま実行しようとしてもうまくいかないでしょう。
まずは自分の実体験にもとづく納得感が必要です。あなたから小さく行動することこそ、あなたの組織をユーザー中心組織に変える第一歩であることを繰り返し主張されていることが、ユーザー中心の考え方であると感じます。
プロダクトマネジメント
タイトルどおり、プロダクトマネジメントについて書かれた本です。著書が呼ぶ副題にあるビルドトラップを抜け出すことが、ビジネス価値と顧客価値の双方を最大化する鍵となります。
ビルドトラップとは、組織がアウトカムではなくアウトプットで成功を計測しようとして行き詰っている状況のこと
本書によると、プロダクトの定義は、顧客に価値を運ぶもの。そして、プロダクトを中心に据えたプロダクト主導型組織こそが、望ましいアウトカムを達成できるというのが本書の趣旨だ。
プロダクト主導型組織でアウトカムを出すために、本書では役割、戦略、プロセス、組織の順に解説されています。
戦略の解説の中で、OKRについて言及されています。
まず、計画との違いについて言及し、戦略を定義しています。
優れた戦略は単なる機能の列挙ではなく、より高いレベルのビジョンや目標に焦点を当てるべきです。優れた戦略は組織を何年にもわたって維持できるものであるべきです。データやマーケットといった正当な理由もなく、戦略を毎月、毎年変更しているようであれば、それは戦略をフレームワークではなく、計画として扱っていることになります。
また、戦略についてこのようにも述べています。
戦略とは、組織全体で語られるストーリーを相互に結びつけ、特定の時間枠における目的とアウトカムを説明するものです。私たちは、ストーリーを伝えて足並みをそろえる行為のことを戦略展開と呼んでいます。
この戦略展開で用いられる手法の一つが、OKRとして紹介されています。
グーグルで使われているOKRは戦略展開の一種です。「方針管理」はトヨタで使われている戦略展開の手法です。
また、OKRの失敗例として、アウトカムにもとづくものではなくアウトプットにもとづくものになっていた例が紹介されています。
長期のビジョンの実現につながる1~数年の重点分野をつたえることを戦略的意図と呼んでいます。
戦略的意図は絞り込まれていなければならず、そして目標に落とし込むことが求められます。このあたりは、まさにOKRでも取り入れらるべき考え方ですね。
その他にもプロダクト主導型組織の重要なポイントがいくつも言及されていますが、OKRと関連深い章「アウトカムに着目したコミュニケーション」をご紹介しましょう。
終わった作業にチェックをつけるのは良い気分ですが、それだけが成功の尺度ではないことを忘れてはいけません。
OKRがタスク管理やアウトプットではなく、アウトカムベースで考えなければいけない理由がまさにここにあります。
本書におけるOKRを要約すると、プロダクト主導型の組織でアウトカムを出すための戦略展開ツールとなります。
まわるリモートチームのマネジメント術
リモートでの働き方が一気に普及した中で欠かせないリモートチームでのマネジメントについて書かれた一冊。リモートでは難しいとされるコミュニケーションやマネジメントについて分かりやすく解説されています。
まずはじめにリモートチームで働くための心得として、環境や状況によって異なるので絶対的な正解がないとのことです。
チーム内で話し合い、試し、最も成果を出すやり方を見つけていくこと、またそれを常に改善していくことが大切です。
続いて、リモートチームでのコミュニケーションは大切であり、意図的に時間、場所などをプランし、約束事をつくることなどが求められます。また、意見の対立にも積極的に向き合い、相互理解して前向きに話すことが勧められています。また、リモートでは欠かせないWeb会議についてもポイントともに、無駄なく効率的に行うことが求められます。
リモートチームのマネジメントは、初期段階での相互理解、情報共有が大切で、主な対策として以下のポイントが挙げられています。
・共通の基準、原則を作る
・目標、役割などを明確にする
・フィードバックする
・1対1のコミュニケーションを増やす
そして、リモートチームではみんなが同じ方向を向くための目標管理が重要であり、その方法の一つとしてOKRが取り扱われています。
大事なことは組織から個人の目標まで一貫性を持たせ、みんなが同じ方向を向くことです。そして成果を出すために、明確な優先順位を持ち、計画を実行していけることが大切です。
このように立てた目標に対するタスクを日々管理し、そして大切なことがコミュニケーションで成果を確認し合うことです。
このようなチームで目標に向かうために、上述のフィードバックや1対1のコミュニケーションとともに大切なことが、「助け合う」チームをつくることであり、以下のポイントが大切だと述べられています。
①ギブの精神を大切にする
②何を頼みたいかを具体的にする
③助けを求めやすい風土をつくる
その他にもリモートチームでの落とし穴やTipsが盛りだくさんの本書において、OKRはみんなで同じ方向を向いて生産性をあげるための目標管理ツールとなります。
さいごに
様々な書籍でのOKRの取り上げられ方をお読みいただき、いかがでしたでしょうか。
冒頭にも書きましたが、OKRはあくまでツールです。ここで取り上げた5冊のように様々なテーマを解決、推進しなければ形だけOKRを導入しても意味がありません。
多面的にOKRを理解する中で、自社独自の目的や課題の理解が深まっていれば嬉しいです。
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