【小説】冬闘紛糾/兼桝綾(仕事文脈vol.17)
(1)
総合出版社恵鶏社労働組合の庶務係、丸本(二年目、女性社員)は呆れていた。亀田が一時間も会議に遅れて、それなのに弁当を食べようとしているからである。丸本はいつも組合執行部会の前日に会議の出席人数を確認し、当日会議の一時間前には弁当を購入する。毎回弁当は一個あまる…何故か、というのはすぐに分かる、亀田が定時に来ないのだ。また今日も遅れてきて、すいませんね、どうも…といいながらテーブルの上に一つ取り残されていた弁当をとって隅の席に座り、すぐさま熨斗をやぶりはじめた。
「亀