世界の見え方が変わる #嫌われる勇気
本を読んでいると、時々人生観が変わってしまうような一冊に出会えることがあります。正直、読んでいてグサグサと心を刺されまくっていました。
でも、この本はそんな私に対して非常に優しく語りかけてくれます。
今回は213万部も売り上げているベストセラー「嫌われる勇気」を通して、ここで得た教訓を人生にどう活かしていけば良いのかを綴っていきたいと思います。
嫌われる勇気
著者:岸見一郎, 古賀史健
発行:ダイヤモンド社
嫌われる勇気は“勇気の心理学”と言われるアドラー心理学を元に、岸見一郎さんと古賀史健さんが書かれた書籍です。
一般的な心理学の本とは違って哲人と青年の対話形式で進んでいく物語調になっているので非常に読みやすく、また面白い内容となっています。
「世界はどこまでもシンプルであり、人は今日からでも幸せになれる」と説く60代の哲人のもとに、とある20代の青年が「そんな話は納得できん!論破してやる!」と言いながら乗り込んでいくという始まり方で幕を開けます。
私が本書から受け取ったメッセージはこうです。
対人関係に気を取られるな
それは他人の時間を生きることに繋がる
承認欲求を捨てろ
そしていまこの瞬間から、自分の人生を生きろ
なんとなく、「嫌われる勇気」というタイトルと結びつくような強烈なメッセージですが、本書の内容を紐解いていくとさらに深い世界の真実が隠されていることがわかります。
今回は、そんなアドラーの教えをまとめた「嫌われる勇気」について、特に重要だと思ったポイントを3つにまとめてご紹介します。
全ての行動は原因論ではなく目的論に基づく
人の行動には「原因論」と「目的論」という2種類が存在します。
原因論と言うのはフロイトという心理学者が提唱する論法で、人が行動を起こすには何が原因があるという考え方です。
例えば、母親が娘を叱るのは娘が悪いことをしたからだということになります。
つまり母親が怒っているのは娘が悪いことをしたという原因があったからだということです。
それに対してアドラーが提唱するのが目的論。目的論とは、人が行動を起こすには原因ではなく目的があるからだとする考え方です。
母親が娘を叱るのは子供に罪の意識を植え付けたい、娘を支配したいという目的があるからだということです。
職場でも、ミスをした部下を指導のためだと言って怒り散らす上司がいますが、原因論で考えると「部下がミスをしたからだ」と片付けてしまうかもしれません。
しかし本質は目的論で、「上司が上下関係を示したい。部下が自分に逆らわないようにしたい。」などの目的があるからだと考えることができます。
仮に指導の最中で社長から電話があったとしたらどうでしょう?
その場合、上司は怒りを納めてヘコヘコとした態度で電話に出るでしょう。
そして電話が終わるとまた怒り出します。
怒りはコントロールできるものであり、指導の方法もまた様々です。ミスを指導したいのであれば、ミスの要因を特定して諭すなどの対話でも十分に可能です。
わざわざ怒りを持ち出す理由は「権威を示したい。ストレスを発散したい。」などの目的があるからだと考えられます。
ライフスタイルの選択
原因論と目的論をもう少し掘り下げて考えてみます。
小説家になりたい青年がいるとします。
この青年は「仕事が忙しくてなかなか小説を書く時間がない」といってなかなか小説を書き始めません。
原因論で考えると、「仕事が忙しいのが問題である」という話で片付いてしまいます。しかし、目的論のアドラーはこの甘えを見逃しません。
この青年は、挑戦して否定されるのが怖い、駄作を生み出して落選する現実をみたくないという目的があるからこそ言い訳を並べて書き始めないのだと言います。
時間がないからできないというのは、言い換えると「時間があればできるのだ」という意味になります。
つまり、自分は本来やればできるのだという可能性を残しておきたいということです。
「AだからBできない」という構図が出来上がり、それは「AでなければBできる」ということになります。言い訳を並べて行動しようとしない原因論者は「自分はやればできるのだ」という可能性を残しておきたいから行動できないのです。
いざ挑戦して酷評されたり、賞に応募して落選するのが怖い。できないと言うことが証明されてしまうのが怖いのです。
目的論では、自分が何を成し遂げたいのかという一点に集中します。可能性の保留状態を捨て、勇気を出していま挑戦する。
本来、自分が自分の目的のために行動するかどうかという点において、他者からの評価など関係ないというのです。
他にもこんな例が挙げられます。
学歴が低いから良い就職ができない。
子供の頃に親からの愛を受けなかったから、自分は幸せな結婚はできない。
よくあるこういった悩みも、過去の不幸を言い訳にして目の前の幸せから目を背けているだけです。もし、自分の過去を悔やんでそれに縛られるあまり行動できないという人がいるのなら、今すぐ過去を切り捨てる勇気を持ちましょう。
過去の出来事は関係ない。
大切なのは、今を生きることなんだとアドラーは説いています。
課題の分離|「自分の課題」と「他人の課題」
ここはアドラー心理学の真髄とも言えるパートです。
課題の分離とは、自分の課題と他人の課題は別問題であり、他人の課題は自分ではコントロールできない領域だという考え方です。
アドラー心理学には、有名なこんな言葉があります。
馬を水辺につれていけても、水を飲ませることはできない。
馬を水辺まで連れていくことは自分でもできるが、その馬が水を飲むかどうかは馬次第だという考え方です。
自分の課題=馬を水辺に連れていく
他人の課題=馬が水を飲む
これは、実際の仕事現場で考えてみるとわかりやすいと思います。
私は、以前務めていた会社で会社の事業方針に疑問を持ち、異論を唱えていたことがあります。
このままのやり方を進めていけば、必ず不満が爆発し、人が大量に辞めてしまうと主張していました。
しかし、当時の上司はそのことを全く理解せず、結局方針は変わらず、私も疲れ果てて諦めてしまいました。
その結果、私が言った通り大量に人が辞めていってしまいました。
この時、異論を唱えて改善しようと動くのは自分の課題。
それを聞いて行動が変わるかどうかは他人の課題なのです。
他人の課題はどう頑張っても手を加えることはできません。
自分が目的を達成させるためにどう動くのか。
それしかないのです。
私はこの時諦めてしまいましたが、今となっては自分の課題の範囲でもっとできることがあったのではないかと思い返しています。
例えば、もっと議論を重ねることで、第三の選択肢を生み出すこと。
課題の分離の境界線を保った状態で、自分が影響できる範囲のことをやり切るという意思が当時の自分には足りなかったのだなと実感しました。
承認欲求を捨てろ
私たちは承認欲求の塊です。SNSに代表されるように、人は常に他者からの承認を欲しています。
いいねが欲しい。フォロワーを増やしたい。誰かに褒められたい。特別な存在でありたい…
しかし、承認してくれるかどうかは他人の課題なのです。
これはすごく大切なポイントです。
人は誰かに褒められたいと常々思っています。そして、褒められるために自分の行動を決めてしまう生き物です。
しかし、それでは本当に自分がやりたいこと、やるべきことから逸れてしまいます。
つまり、他人の人生を歩むことになってしまうのです。
大切なのは、「自分が誰に何を伝えたいのか」という点からズレてはいけないということです。
「こんな投稿をしても“いいね”がもらえないかもしれない」
「こんなことを言うと嫌われてしまうかもしれない」
そんな考えは幻想だと割り切って切り捨てろとアドラーは言います。
他人がいいねボタンを押すかどうかは他人次第。他人が自分のことを嫌うかどうかは他人次第です。
そして、こんな本書では名言が出てきます。
お前の顔を気にしてるのは、お前だけだよ
人はそんなに他人に興味津々ではありません。ちょっとした発言なんて気にしてないのです。(もちろん、道理に反するようなことはいけませんが…)
それよりも、自分が正しいと思ったことを自信を持ってする勇気が大切です。
これが、アドラー心理学が「勇気の心理学」と言われる所以です。
全ての人は同じではないが、対等である
アドラー心理学では、全ての人は対等であり、上下関係を作ってはならないとしています。
もちろん、会社組織では役職上縦の関係は存在してしまいますが、本質的な接し方としてはみんな対等であり、横の繋がりとして考えるべきなのです。
ひとつ例を挙げます。
あなたが上司からの指示にしたがって、その通りにやったことが実は間違っていたとします。その間違いは誰の責任でしょうか?
指示を出した上司の責任だと言う方が多いと思いますが、アドラー心理学ではこれは指示にそのまま従った自分にもあると考えよと言うのです。
おいおい…それは流石にないだろう…そう思う気持ちはわかります。
しかし、こう考えてみてください。
上司から指示があった時、その指示内容が間違っていないか、もっと良い方法があるのではないかと考えはしませんでしたか?
おそらく何も考えずにそのまま指示通りに作業を始めたという人が多いと思いまう。
ここでは「操り人形になってはいけない」ということを肝に命じるべきなのです。
指示があった時、断る余地はありました。もっと良い方法がないかと模索することもできました。
それをしなかったのは、上司との対人関係を気にして、責任を回避するためです。
上司と議論するのは時間もかかるし骨も折れる。機嫌を損ねたら自分の立場が悪くなる。そんな不安から思考停止し、縦の関係に従ってしまうのです。
もし仮にその上司すら、もっと上の立場の人間から言われたことをそのまま部下にやらせているのだとしたらこれはもう最悪です。
現場の誰もが責任を持たずに進むプロジェクトは必ず失敗に終わります。そして残るのは失敗の責任を感じさせられる現場全員の不満です。
全ての人間は対等であり、自分の行動には自分で責任を持つというのが重要です。
周りが協力的であるかどうかに関わらず、自分の意思で対峙するべきなのです。
まとめ|対人関係の悩みが全てである
アドラー心理学をまとめると、全ての悩みは対人関係にあると言うことになります。
自分の行動で他人がどう思うのかが気になってしまう。だからこそ、他人の課題が気になり、承認を求め、縦の関係に従ってしまう。
目的論から目を逸らさずに、自分がどうしたいのかを最優先に考える。
10人集まれば2人は全面的に協力的になり、1人は全面的に否定的になり、残りの7人はどっちつかずになるという研究結果もあります。
否定的な1人をみて世界を否定するのではなく、協力的な2人をみて自信を持って前に進もう。
その結果、1人に嫌われたとしても関係ない。それがアドラーの教えです。
自分の視点が変われば世界は変わる=世界はシンプルである
自分の課題として今から動き始める=人は今日からでも幸せになれる
決めるのは昨日でも明日でもない、いまここから始めましょう。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?