いったい何周するつもりだい?
子どもの頃、それはそれは何度も繰り返し『天空の城 ラピュタ』を見ていた。
おそらく金曜ロードショーを録画したやつで、おもうに、1日のうちに2~3周していたような気がする。
他にやることなかったんかいと今ならおもわなくもないが、子どもの習性として「気が済むまで繰り返す」は遺伝子レベルで刻まれた何かな気がするので大人は黙って見守るしかないのだろう。
(とりあえず再生しておくだけでおとなしく見ていたのだから、手がかからなくて助かったというのが本音かもしれないけれど)
そんなことをふと思い出したのは、ここ2週間くらい繰り返し読んでいるこの漫画『アルティスト』のせいだ。
最新の8巻まで持っているのを、おそらく3〜4周している。
1話だけ読み返しているのもあるので、あくまで平均値で。
最初は料理人の話から始まる。
が、その辺はあくまでこの物語のプロローグに過ぎない。
『本編』がスタートするのは、1巻のラスト(実質2巻)からなのである。
長い…などと焦ってはいけない。
全然長くなど感じないので全く問題ない。
「一芸入居」で認められると住めるアパルトメントと、料理人の主人公ジルベールが働くことになる新店舗(レストラン)が主な舞台となる。
パリという華やかなりし文化の都をステージとして、料理、絵画、音楽、文学、映像……様々で多様な芸術家たちと、それをとりまく関係者の物語が、実にいきいきと、丁寧に心地よく、あるいはときに座り悪く描かれている。
それぞれの芸術家たちの、苦しみ、悩んで、それでも…と立ち上がる姿、その表情、一言にマジでグッとくる。
それにしてもこんなに幅広く、リアルに、全く違う分野の芸術家たちの悩みを深堀できてしまう作者は一体何者なのだろう…人生3周くらいしてるんじゃないだろうか。
人生1年目なジルベールはどうしてもひいきしてみてしまうけれど(絶望顔が秀逸すぎる。強く生きてほしい)、大抵のことは器用にこなせすぎて「本当にやりたいこと」が見つからないというマルコと、少々自閉症気味なリュカにも妙なシンパシーを感じて肩入れしてしまう。
ヤンの超頼れるお姉様と大家のカトリーヌも素敵で、特にカトリーヌはエピソード6の最後のセリフがグッときて……
………………
……
……はっ?! や、ヤバいナチュラルに5周目に突入するところだった。
これよ!
この、つい「そういえばあのシーンよかったんだよな」からふと手を伸ばすといつの間にかまたずっと見入ってしまうワナ!!
連載ものなのに、なんとなく短編っぽい雰囲気もあってどこから読んでも違和感なく、自然に続きを読みたくなるのが、もう、とてもキケン!!!
しかも何度読んでもまた違う発見があったり、同じ感動があって、安心して浸れるの、ここは実家か?!(違う)
…あのね、もうラピュタだけみてれば許される歳じゃないの。
状況は変わってしまったの。
他にも読みたい本もあるし。
だいたい、飽きるまで読み倒して本当に飽きてしまうのも惜しいので、
ちゃんと本棚にしまって少し距離をとろう。
(いつも目と手の届くところにあるのがよくないんだ)
良い距離で、末永くお付き合いしたい。
この作品自体も、息の長い物語なることを心より願っている。