ただ「かわいい」をかみしめる
かわいい。
太い線で、しっかりとのびやかに描かれたイラスト。
小さな「ぼく」と、どうかするとぼくよりも子どもっぽい「おとうさん」のユーモアあふれる、時々ファンタジックな毎日がセリフのない短いコミックになっている。
言葉はなくても、その雰囲気だけでニコニコしてしまう。
とてもかわいい。
これを、お父さんになりたての作者が描いたこと、
読まれた当時の状況(1934年のドイツ)、
1944年にゲシュタポに捕らえられた作者が独房で自死したことを踏まえてもう一度見てみると、なんともやりきれない思いにかられてしまう。
(ユーモアがあり、やさしく、誠実な人から壊されていくから、戦争は本当にろくでもないのだ)
この本のユーモアもかわいさも決して古びていない。
今、改めて、ただ「かわいいね」「おもしろいね」と楽しめる幸せをかみしめている。
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